第60話 梅ちゃん妖怪化。
梅ちゃんから、「いつ、こっちに来るんだ?」なんて催促の電話があったので、重い腰をあげて行って来ました。
二泊三日ですが……
梅ちゃん「おらのどこさ、泊まればいいべ」と言ってくれますが、無理です!
カビと煙草の臭いで、空気が澱んだお家。
プラスお風呂が使えない。
使用したトイレットペーパーは、ビニール袋に入れなければいけない。
手料理なし。
そしてなにより、梅ちゃんとのお泊りで眠れた試しがない。
梅ちゃん家に泊まることを断固拒否し、ホテルの予約をすると伝えましたら「おらも、ホテルに泊まる」ときた!
絶対に嫌だけれど、生きて梅ちゃんに会えるのも最後だろうと腹を括って予約しましたさ。初日だけ。(嫌な予感しかないので、二日目は断固拒否)
さて、梅ちゃん。電話では、こう言っていた。
「薬のせいか、食欲がねぇんだよ。歩いても、すぐに疲れるし……」
「えー、じゃあ、おじさんにお線香あげに行かないの? そこで待ち合わせて、その後ホテルに行こうと思ってるんだけれど」
「体調悪いと、そこまでバス乗り変えして行けねぇな。でも、行けるかもしれねぇ」
なんて言っておりましたが、しっかりおじさんの家に来てお線香をあげておりました。梅ちゃん、お葬式を体調悪いからと出席せずにいたので、これで少しホッとしました。
おばさんは、不義理な梅ちゃんを責めることもなくニコニコ。なんて優しいんでしょう。梅ちゃんに優しくできる人は、この人しかおりません。
さて、なぜかテーブルの上にお惣菜があります。それらはどうやら、梅ちゃんが買ってきた物。
えー、夕方4時です。
お昼には遅く、夕飯には早い時間。
梅ちゃん、三個入りのいなり寿司食べ始めました。そして、完食。カキフライも完食。
……食欲ないって言ってたけどな。どうみても、モリモリ食べてるよね。しかも、こんな変な時間に。夕飯、どうするんだろう?
そんなことを思っていると、おばさんがこんな話を振ってくれました。
「梅ちゃんがあなたに、お金あげるって持って来ていたよ。ほら、梅ちゃん。娘さんが来たんだから、お金あげなさい」
梅ちゃん、にやりと笑い20万円ほどをひらひらさせて「これやるから、おらをおめぇのどこさ連れて行け!」と言う。
…………お金で私を釣ろうとしている梅ちゃん。
20万円で、あなたと暮せるはずもなかろう。
なんなら、毎月20万円支払うと言われても、無理です!
「あのさ、お金の問題じゃない。パチンコばっかりしていた人の面倒はみられない。ねっ、朝ご飯も夕飯も用意せず遊んでばっかりいて、今さら面倒見て下さいってそれは無理よ」
と言うと、怒った顔で「んだば、お金はやらん!」と言う。
それを見ていたおばさんに、「梅ちゃん、娘なんだから交通費くらいは出してやったら」と言われ、三万円を差し出した。
えっ? 珍しいと思っていると、おばちゃんは更に言葉を続ける。
「それだけか?」
そこで梅ちゃん、もう二万円上乗せしてくれました。
「娘だからな。交通費くらい出してやるべ」
なんという事でしょう。
梅ちゃんに、仏心が宿った!
と、思ったのはここまででした。
続く。
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