第18話 魔法の粉

 今日は、月猫の失敗談です。

 

 野球少年だった次男坊。近所の美容院で、坊主頭にしてもらっていました。

 一応バリカンは買ったのですが、私だと『虎刈り』にしちゃうと思って美容院に行ってもらっていたのですよ。


 なのに、美容院に行くのが面倒くさくなったのか

「お母さん、僕の頭を刈って下さい」

 と、馬鹿丁寧にお願いしてきた。

「いやだ!」

 という私に、なおも食い下がるので仕方なくバリカンを手にした。

 次男坊の希望は、五分刈りである。


 後頭部を、ジョリ。


 ん? こんなに青くなって良いんだっけ?

 変だなぁと思いつつ、もう一回ジョリ。


 ……これ、やばい気がする。


 慌てて長男坊を呼ぶ。


「ねぇ、こんなに青くなったけど、これでいいの?」

「ばか! なにやってんだヨ。これ、五厘だぞ!!」

「……ねぇ、五分刈り、もう無理だよ。全部、五厘にしよう」

「絶対にヤダ! 今からでも五分刈りにしてくれ!!」

「いやいやいや、その方が変だって。五厘にしようよ」

「絶対に駄目!!」

「……もう、母ちゃんはヤダ。長男に任せる」


 こうして出来上がった、後頭部一部ハゲの次男坊。


 申し訳ないと思いつつも、後頭部ハゲの頭は可笑しくて可笑しくて、腹がよじれるほど笑ってしまった。

 何度見ても、ドリフが子ども役をするときに被っている「かつら」に見える。

 長男坊は、笑いを堪え気の毒そうに弟を見る。


 こりゃあ、髪が伸びるまで中学校を休むかもしれないと覚悟を決める月猫だったが、翌朝、学校へ行く準備をする次男坊。登校時には、帽子でハゲを隠している。

「校内で帽子被れないけど、どうすんの?」

「手で隠す」

「授業中は?」

「授業中も手で隠す!」

 そう言って、登校する逞しい次男坊。


 数日後、主人が『魔法の粉』を買ってきた。

 次男坊のハゲ部分に粉を振りかけると、あら不思議ハゲが消える!!


 同級生に

「お前、髪伸びるの早いなぁ」

 と言われたらしい。


 魔法の粉さん、ありがとう♡ 

 


 

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