第10話 梅ちゃんの呪い

 小学三年生頃だっただろうか。

 私は風邪を引いた。


 激しい咳が、なかなか収まらなかった。


 ごほん、ごほん。

 ごほん、ごほん。


 私の咳がうるさくて、イライラした梅ちゃんが叫ぶ。


「あんまり咳すると、目ん玉飛び出すぞ!」


「……」


 そうなのか? 

 咳ばっかりすると、目ん玉が飛び出すのか?


 恐怖のあまり、鏡で顔をチェックする。


『大丈夫。まだ、大丈夫』


 梅ちゃんに恐ろしいことを言われたけれど、咳は止まらない。


 それから私は暫くの間、咳をするときには口と目を抑えていた。


 恐るべし、梅ちゃんの呪い。

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