第2話 梅ちゃんが、母親をやめました。
私の母、梅ちゃん。
30代半ば頃、化粧品の販売員になりました。
外回りの営業は性に合っていたようで、面白いように化粧品が売れていました。バスや電車を使って営業をしていた梅ちゃんは、もっと自由のきくバイクの免許を取ることにしました。
勉強は苦手です。
読み書きが得意ではありません。
でも、仕事のために、いやお金のために頑張りました!
バイクの免許を獲得した梅ちゃんは、さらに売り上げを伸ばしました。
梅ちゃんの売り方は、強引だったらしいです。
どんな感じかと言うと、とにかく、世間話から始まって喋り倒します。
お客様は、梅ちゃんのマシンガントークに翻弄されます。
内心『早く帰ってくれないかなぁ』と思っていたに違いありません。
喋り続け、最後に「これ置いて行くから、使ってみて」と化粧品を渡します。
相手に断る隙を与えない強気な営業。
我が母ながら恐るべしです。
過去、一時停止無視で警察に捕まったとき、
「ここ、誰も一時停止なんかしてねぇ。なんで、おらだけ捕まえるんだ!!」
と怒鳴りちらし警察署に連行されました。
しかしそこで、
「あんた、化粧品買わないか?」
と化粧品の販売トークを始めて、みんなを困らせてきたと私に自慢していました……。
(いや、それ自慢できねぇし)
(そんな人が親だなんて、恥ずかしくて知られたくないし)
そんな娘の心も知らず、梅ちゃんのヤバさは加速します。
鬼営業で化粧品をドンドン売り続けた梅ちゃんは、パチンコという娯楽にも出会いました。そして、とうとう梅ちゃんは、三人の子供と旦那の夕飯を作らなくなりました。深夜に帰宅するので、朝食も作りません。
梅ちゃん、母業を放棄しました。
私は中学生。幼い妹は小学生でした。
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