第2話

「選ばれし勇者の鈴木遥だ」

決まったああああああああぁぁぁ!

これをめっちゃ言いたかった。

少女は、嫌そうな顔で俺を見つめる。

「あんたが?ふざけないで本当のこと言って」

俺はふざけてなどはいないぞ。

ただ、このファンタジー世界に憧れてそれを言いたかっただけだが、言わないでおこう。

「ふざけてなどいない。俺が勇者鈴木遥だ」

「そいう勇者いたっけ。あんたが勇者ってことで、行きましょう。ゲーペル様が探しているわ」

彼女は俺の手を握り、どこかの場所に俺は連れていかれた。

つか誰ゲーペル様って。

もう一度光景を見ると、やはり綺麗だ。


ゲーペル様という人の元に着いた。

でっか、家。

「はぁはぁはぁ。そんな...慌てなくてもすぐに着くんじゃないか?」

走るのが苦手な俺は、こんな早いスピードで走ったことがない。

「あんた本当に勇者なの?」

「はぁはぁ、ゆ、勇者...だ」

彼女は、また嫌そうな顔で俺を見つめる。

「入るわよ」

家に入ると、そこには床を掃除している綺麗なお姉さんと椅子に座っているおばあさん。

おばあさんに駆けつけると、

「ゲーペル様、勇者をお連れしました」

「ガビー、勇者では無いぞこやつは」

このババアああ!俺が勇者では無いだと?じゃなんなんだあのブラックホールのようなものは!?

つかこの女の名前ガビーなんだな。

最初っから言えや。

「はい?」

「スミマセンデシタアアアア!!」

俺は土下座をし、頭を床に叩く。

綺麗なお姉さんは、俺を見て心配そうな顔で見つめる。

「こやつのステータスを見ると、素早しさ以外0だよ」

ステータス見られるのこのババア。

どうやら、俺は素早しさだけがいいらしい。

「本当ですか?あんた、私に嘘をついたわね?」

ガビーの顔を見ると怒っているようだ。

「あの―」

「ちょうどいい。2人で勇者を探してきなさい」

「承知しました。行ってまいりますゲーペル様」

家の外に出るとガビーは俺の胸ぐらを掴んで叱る。

「信じた私が馬鹿だったわ」

「落ち着こうよ。がっ.....!」

俺は殴られてしまった。

なんだよ。ここでチート能力が明らかになるところじゃないのかよ。

無能じゃないか、俺。


目を覚ますと、そこにはガビーが椅子に座って寝ていた。

いつの間にか、ベッドに寝ていた。

「ヨダレ垂れてんぞ。ガビー」

起きないので、あの言葉で目を覚ませる。

「襲っちゃうぞガビー」

「いやああ!キモイキモイキモイ」

ぐっっ、心臓が痛い。

『無職転生』のルーディウスではないからパンツを見ることはできない。

俺はそういう人間じゃないから。

「はよ支度しろ、勇者探しに行くぞ」

「そうだったわね。じゃなくて、何か言うことは無いわけ?私の部屋なんですけど」

面倒くさいなこいつ。

「よし、行くか」

「何か言いなさいよ」

「わかったよ。ありがとう」

彼女はありがとうという言葉で嬉しくなっている。


「ここは、ホフン村と言って普通の人間が暮らす村よ」

木製の家が立ち並んでいて、村の真ん中に大きな木があった。

「ここに来るのが初めてだろうし、ちょっと来なさい」

俺はガビーについて行く。


「綺麗でしょ?」

家の明かりと村の街灯、木は蛍に囲まれていてとても綺麗だった。

「昔はね―」


昔、ここに転生者がいたらしい。

この国は、巨大悪魔によって支配され、平和だった国が悪夢のような国なったが、3人の英雄が巨大悪魔に立ち向かって戦った。

3人の中の1人が『カウンターアタック』という超強いスキルで悪魔を倒したのだが、結局スキルが強すぎて、体が耐えることができなくて死んだ。

あの木の下に転生者の死体があるらしい。


「へえ、そんなことがあったんだな。説明だらけでもう眠くなっちまう。探すぞ!」

「おうって後ろにゴブリンがいるわよ!」

「え?」

後ろを振り向くと、赤い瞳に下半身だけタオルみたいなものを身につけているゴブリンがいた。

「助けてぇぇえええ!!」

「避けて!」

ガビーは、弓矢でゴブリンを1発で倒した。

ナイスエーム。


今度こそ何も無い。

ということで、気安く話せる。

「そういえば、苗字は?」

歩きながら、俺は言う。

「ミヨジ?何それ。聞いたことないわ」

ということは、あの村には苗字というのが存在していないと。


ペースが早すぎて何がなんだかわからん。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る