第6話 出会い
『血いぃぃぃぃっ!』
破壊衝動に突き動かされた魔剣が暴れようとする!
ああ、しょうがないなぁ……。
魔剣を抑える為に、僕は剣の腹を担ぐようにして、バックブリーカーの体勢をとる。
そうして、そのまま力を込めて刀身に圧力を加えていった!
物が物だけにもったいないけど……危ないからへし折ろう。ご先祖様、すいません。
『ふはは、貴様のような小僧風情が、我をどうこうできると思っているのか!』
嘲笑う魔剣を無視してさらに力を込める。と、ピシリと刀身にヒビが入った。
『え、嘘……』
意外そうな声が魔剣からこぼれる。
よーし、もう少しだ。
さらに力を込めると、ピキピキと音を立て、どんどん刀身にヒビが広がっていく。
『ねぇ、ちょっとぉ! 我ってば、結構な貴重品よ!? 壊しちゃったら、初代勇者に申し訳なくならない!?』
何か情けない事を言い出したけど、へし折った刀身は包丁か何かに打ち直して平和利用するから大丈夫!
ご先祖様も、わかってくれるよね。
ビキッ!とひときわ大きな音が響き、明らかにヤバそうなヒビが現れた次の瞬間。
『申し訳ありませんでしたー! 自分、調子にのってましたー!』
土下座でもしそうな勢いで、魔剣は降参の意を伝えてきた。
うーん、魔剣並の切れ味を持つ包丁……少し欲しかったんだけどなぁ……。
『いやはや、可愛らしい外見とは相反するワイルドな主殿には、感服いたしました』
む……。
男としては可愛いと言われてもあまり嬉しくはないんだけど、村でもよく言われ馴れたから反論する気にもならなかった。
『今後は誠心誠意、お仕えいたします!』
清々しいまでの掌返しにちょっと呆れつつ、僕は魔剣を鞘に納めて腰に下げる。
何でも、彼には自動回復能力があるらしくて、しばらく鞘に入れておくと勝手に修復されるとか。
研ぎもいらないらしいから、すごく便利だな、これ。
さて、次はどうにか仲間を見つけなければならない。
父さんに教えてもらっていたから、野草から簡単な
何せ、目指すは魔界なのだ。
弱い者、油断した者があっさり命を失う危険な場所なのだから、仲間は強ければ強いほどいい。
『街で直接、強者を募ってみてはどうでしょう』
魔剣が僕に提案してくる。
うーん、そこは冒険者ギルドに相談してみようと思ったんだけど……。
『いえいえ、ギルドを通せば金もかかりますし。何より、主殿が直接試した方が実力も計れましょう』
なるほど、言われてみればそうかも。
さすが、初代勇者と一緒に戦っただけのことはある。
旅の経験値は僕よりも高そうで、武器として以外にも頼りになりそうだ。
「すごいね、えーと……」
『
魔剣をなんて呼ぼうか戸惑っていると、向こうからそう言ってきた。
でも、ちょっと物騒な名前で呼び辛いな。
「あのさ、骨食み丸だから……『ハミィ』って呼んでいいかな?」
そう言うと、魔剣は小さく身震いした。あれ、気に入らなかったかな……?
『ま、まさか我にそんな可愛い愛称をいただけるとは……感激です!』
武人気質っぽい感じだから嫌がられるかもと思ったけど、なんだか気に入ってもらえたみたいで何よりだ。
『あれですかね、特徴付けるために語尾に『ニャ』ってつけてみたり、決めセリフとかに『にゃっぷにゃぷ♪』とか言った方が良いんですかね?』
……言葉の意味はよくわからないけど、やめておいた方がいいと思うよ。
左様ですかと、少し残念そうにハミィは呟く。……言いたかったの?
まぁ、それは置いといて……強い仲間を募るためにはどんな文句が必要なんだろう。
『先ずはストレートに
ふむ……たしかにシンプルな方が解りやすいし、いいかもね。
よし、そこに少し位なら報酬を出せる事も加えてアピールしよう。
そうして僕達は、あれこれ文言を考える。
自分達が強いという事、強い人を求めている事、僕達に勝てば報償金を出す事。
それらを少し語気を強めて挑発するようにして、最後に『腕に自信のある奴はドンとこい!』と看板に書き付けて、と……。
これで準備はできた!
「よーし、これを掲げて街に立てば、きっと強い仲間を見つけられるぞ!」
『楽しみですなあ、主殿!』
僕達は意気揚々と街に向かう。新しい仲間との出会いを信じて!
──二日後。
ジマリの街で仲間を集っていた筈の僕達は、何故か賞金目当てに群がる猛者達を蹴散らすはめになっていた。
勝ち抜いてはいたけれど、いつのまにか僕に勝てば
なんでこんなことに……。
早く父さん達に追い付く為にも、無意味な試合なんでしてる場合じゃないのに、予想していたのと違う現実に泣きたくなってる。
そしてまた僕の前には、新しい挑戦者が立ちはだかっていた……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
なんとか
骨夫は、この街で奴等を見つけたという事で少し不安はあったものの、此処にはそこそこ魔族も住んでいるようなので、妾達が目立つような事はないだろう。
「向こうで、なんか特産品フェアとかやってましたねー。とりあえず何か食べるものを買ってきますんで、
下手に姫と呼ばれて悪目立ちするといけないからと、呼び方を変えさせたのだが、骨夫はあっさり順応していた。
しかし、この状況で特産品フェアに買い物に行くとか、なんでアイツはあんなにポジティブなのだろう? アンデッドのくせに……。
とはいえ正直な所、妾は骨夫よりも人間界には疎い以上、ここは大人しく奴を待つしかあるまい。
ベンチに座り、ぼんやりと道行く人々を眺めていると、不意に「何やってんだろう妾……」といった気持ちが湧いてくる。
ああ、もう! こうしている間にも、あの化け物が妾の城を破壊しているかもしれぬというのに!
あと疲れた! 眠い! お風呂入りたい!
「「はぁ……」」
どうにもならないもどかしさに、ついため息を漏らした時、別の何者かのため息と重なった。
ふっ……妾よりも不幸な奴はおるまいが。
何気にため息の聞こえ方を振り向くと、一人の少年と目が合う。その瞬間!
ドクン!
心臓が高鳴る。そして何故か……少年から目が離せなくなっている妾がいた。
いや、確かに妾好みの顔付きをした可愛い少年なのだが……。
しかし、彼を見ていると動悸が速まり、汗がにじみ、手が震えてくる。
こんなのは、かつて父上が他の魔王とタイマン張ってるのを見た時……もしくは
よく解らない、正体不明のドキドキを抱えつつ、妾と少年はジッと見つめ合うのであった……。
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