第21話 序章が終わり、新たなページが開かれる

「散々な初登校日だったわね」


「ですねー」


結局あの後、私たちは警察官さんたちに呼ばれて現場検証やら取り調べやら、もろもろ書類や契約書のサインをして今日という日をほとんど消費してしまった。全部終わったころには空は茜色、私たちは既に放課後になった学校に自分たちの荷物を取りに戻っていた。


ちなみに札木はすでに自動車の修理が終えて、校門の外で待ってくれている。


城ヶ丘高校のエンブレムが入った手提げカバンを持った私は運動部が良く肩にかけてる黒色のバックを持った一文君に話しかけた。


「ところで、あなた、何者なの」


「何者って言われても……」


困ったように一文君は頬を掻いた。


一見すると確かに普通の高校生、だけどさっきみたマネーアクション。すべてを光に包んだあの金色の剣の斬撃。あんなもの普通の高校生が使えるとは思えない。


「…………ただの、普通の高校生だよ」


「……………………まあ、いいわ」


そう簡単に正体を明かすわけがないわよね。


「でも、あなた私に借金があるわよね、しかも\一億も」


「そ、それは……」


「まさか踏み倒す気じゃないでしょうね」


確かに踏み倒そうとすれば踏み倒すことはできる。あの時は時間がなかったから借用書を取り交わさずに彼のマイバンクに振り込んでしまったから。本来お金を相手に貸すときはスマホの電子借用書に相手の認証を行わなければ貸したことにはされない。だから、相手が貸した覚えがないとウソをついてしまえば普通は返済の請求を行うことはできないのだ。普通は、ね。


「そんなことしませんよ、必ず、必ず働いて返します」


「働いて、ねえ。\一億なんて一高校生はおろか社会人ですら返すのに何十年もかかる金額だと思うんだけど」


「ぐ、それは………………」


\一億は確かに私にとっても安い金額じゃない。でも、そこまで大慌てするほどの額でもないのも事実。私にとってこの\一億は戻ってきても来なくてもそこまで困るおお金じゃない。でもただどぶに捨てるのももったいない金額でもある。だからここは……


「なら、私が良い返済方法を教えてあげるわ」


「え、本当ですか。どんな方法なんですかそれは」


「それはね……」


使った\一億、きっちり元を取らせていただくわよ。


「あなた、高校三年間私の付き人兼ボディガードになりなさい」


「へ……」


予想もしていなかった返済方法に一文君の顔がおかしくなる。私は笑いそうになるのを必死で抑えて、言葉をつづけた。


「つまり、あなたの高校生生活を\一億の借金の担保としてこの私に捧げなさいということ。ちなみにあなた無い拒否権はないから。よろしくね、一文無也君」


「え、えぇ」


私は彼の返事を聞かずに教室を後にした。


彼のあの力、確かに興味深い。けれどもそれ以上に私には彼のあの強大な力が必要なのよ。


この世界に初めて現れたグリード、私のお母さんを殺したあの憎たらしいあいつを殺すためには………………



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Money talks-この世は金が全て- @maow

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