第20話 わずかな違和感を感じるのが金儲けに一番必要な才能である
「うっひゃー、まじかあれ、なんだあれ、反則だろあれ」
「ユーロ・ギフト様、何をそんなにはしゃいでいらっしゃるのですか」
「ああ、戻ったか、ドル・ボックス。どうだ、奴は回収できたか」
「はい、仰せのままに」
私の手にある小さい黒箱を見ると満足そうにユーロ・ギフトは再び視線をビルの下に戻した。
「まさか私の遺伝子操作で作った化け物が一瞬でやられちまうとはな。相打ち覚悟の自爆特攻だったつうのに」
自爆特攻といってもするのはあなたじゃなくてあなたが遺伝子をいじった相手でしょうに。
ユーロ・ギフトのグリードアクション、遺伝子操作は彼女の想像した架空の生き物を対象者の遺伝子をいじることにより無理やり現実のものにしてしまうふざけた能力でおまけに遺伝子を無理やりいじるわけですから対象者の体へかかる負担は甚大、寿命は長くてその日一日という悪魔の取引というかされる本人はそうなることを望んでいるわけではないのですから悪魔よりもおぞましいグリードアクションです。
それだけの代償を持って生まれる改造グリード、当然その力は強大なのですがまさかそれを退けるとは。確かに彼らはユーロ・ギフトの見立て通り只者ではなかったようですね。
しかし、
「ですがまあ、彼はこうやって無事回収できたのですから、ユーロ・ギフト様がお気に病むことはないのではないのですか」
あくまで彼らが退けたのはユーロ・ギフトが即興で作った改造グリード。しかも素体はさっきまで普通の高校生だった少年。遺伝子操作は遺伝子を操作する素体のポテンシャルとあの緑の繭に包まれている時間に比例してより強い改造グリードを生み出す。
決してユーロ・ギフトの本気が彼らに通用しなかったというわけではない。
「誰も気にしてねえぇよ。ただ……」
「ただ……」
快楽主義の彼女に珍しく考えこむようにしばらく沈黙した。そして、
「何でもねえ、いくぞドル・ボックス」
続きを話すことなく、その場を後にした。
普段と違う彼女の態度が気にならなかったわけではないが、私も黙って彼女に続いた。
変に彼女を刺激して遺伝子操作をされても困る。それに…………
彼らがどれだけすごいマネーアクションを持っていてもユーロ・ギフトに敵うことなどないと私は確信しているからだ。
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