第8話:討伐・ボドワン第二王子視点

「ボドワン殿下、総攻撃はどうされますか」


 私の所為で大将軍格なのに副将にされてしまったカーカム男爵が聞いてくる。

 これは私に失敗させようとしているのか、それとも試しているのか。

 どちらにしても気分のいいモノではないない。

 決して無能ではないのだろうが、強かな所はあるのだろう。

 そうでなければ大将軍格になるような人間が、ブリジット嬢が追放されるのを見落とすはずがないのだ。


「カーカム男爵は大将軍格としてファインズ城に駐屯していたのだ、城の縄張りと抜け道を調べているのであろうから、連中を逃がす事はあるまい。

 だったら将兵を無駄に死傷させる必要はない。

 城門と抜け道の先を厳しく守ればいい。

 現場の指揮はカーカム男爵に一任する、連中を絶対に逃がすな」


「……はい、一命に変えましても必ず捕らえてみせます」


 ようやく本気になったようだな。

 総大将の私に一任されて失敗したら責任を押し付けられるのだ。

 私は王子だから、失敗しても責任を取らされる事はまずない。

 配下の誰かが生贄にされるだけだ。

 だが私があまりに酷い指揮を執ったらさすがに配下に責任を取らせられなくなる。

 特にしりぬぐいをした副将には責任を取らせられなくなる。


 カーカム男爵は最初から私を利用しようと狙っていたのかもしれないな。

 全力で当たればアドリーヌとアドルフの悪事の証拠を見つけ出し、ブリジット嬢を助ける事もできただろうに、見て見ぬふりをしたのだろう。

 正直内心はカーカム男爵をぶち殺したい思いで一杯だ。

 俺の婚約者を自分の出世の為の生贄にしやがった。

 絶対に許さない、必ず思い知らせてやる。


「カサンドル、デルフィーヌ、我が配下をどれだけ使っても構わない。

 カーカム男爵の尻尾を掴め。

 ただし、アドリーヌとアドルフを捕らえるかぶち殺すまでは事を荒立てるな。

 理由は分かっているな」


「「はい、お任せください」」


 この二人に任せておけば大丈夫だろう。

 二人は王家からブリジット嬢の護衛を命じられながら護り切れなかった。

 殺されてはいないようだが行方不明になってしまった。

 本来なら厳罰処分にされるところを俺が口添えして処分保留にしてある。

 一族の為にも汚名を返上しようと命を捨てて働いてくれるのは確実だ。


 いや、一族一門の為ではないな。

 自分自身の騎士としての誇りを守るために命懸けで働いてくれるだろう。

 ブリジット嬢が生きていてくれたら必ず探し出してくれるはずだ。

 問題があるとしたら、俺の考えている以上にカーカム男爵が悪人だった場合だ。

 カーカム男爵がブリジット嬢を捕らえていたり殺したりしなければいいのだが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る