第4話:王家の思惑と追放婚約辞退

「王家にファインズ家を潰す気はありません。

 ですが今のファインズ家に辺境伯の役目が務まるとも思っていません。

 辺境の地は辺境伯が治めるのではなく、一時的に大将軍が治めるようにする。

 ブリジット嬢が婚約者のボドワン第二王子を結婚された時に、改めのボドワン第二王子が当主になられたファインズ辺境伯家を再興する。

 それが王家の考えです」


 よかった、本当によかった。

 これで父上の家名が残ります。

 ボドワン第二王子の事は好きでも何ともありませんが、この世界の王侯貴族は政略結婚が普通ですから、仕方がありません。


 それに、元の私の世界でも、恋愛力の低い人はお見合いで結婚します。

 出会い系サイトやお見合いパーティーを利用したりしています。

 そう考えれば政略結婚も親同士が決めてくれたお見合いだと思えばいいのです。

 お見合いだって紹介だって、間に入ってくれた人の事を考えれば断り難くなりますから、似たようなものだと思いましょう。


「ありがとうございます。

 それを聞いて安心しました」


 私がそう言ってお礼を言うと、カサンドル殿はその場を立ち去られました。

 一人残された私はそのまま独自で正騎士になるための鍛錬を再開しました。

 カサンドル殿が王家の意向を聞かせてくれたので、今後に不安はなくなりましたが、だからと言って父のような騎士になりたいという気持ちが変わるわけではありませんから、努力は続けます。


★★★★★★


「ブリジット、この恥知らずの裏切者が!

 ファインズ辺境伯家をラティマー王家に売り渡しましたね。

 本来ならこの場で八つ裂きにしてやるところですが、一門衆や譜代の家臣達が命乞いをするので殺すのだけは許してあげます。

 ですがお前のような裏切者を家に置いていおくわけにはいきません。

 領地から追放処分としますから、このまま出て行きなさい。

 グズグズするようなら一門衆や譜代衆の命乞いも役に立たないと思いなさい」


 領城の自室に戻ろうとすると、母の側近に無理矢理この場に連れてこられ、あれよあれよという間に一方的に断罪されてしまいました。

 いえ、このような尻軽は母とは呼べません、アドリーヌと呼び捨てでいいです。

 アドリーヌの横にはニマニマと笑う間男のアドルフと、母が秘密裏にアドルフとの間に生んだ異父妹のオレリアがいます。


 先程カサンドル殿にやり込められた恨みに、アドリーヌにある事ない事吹き込んだのでしょうが、簡単に操られるアドリーヌが愚かすぎますね。

 もうカサンドル殿から王家の意向を聞いていますから、無理にこの城に拘る事もないでしょう。

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