28話~成功とは何か考える

「ところでラス、Bクラス魔術師が問題起こしたって聞いた?」



「なんだそれ聞いてないぞ…。」



「最終的に自宅謹慎処分を喰らった。って聞いてるんだけど、なんかBクラスの魔術師が酒場で一般人と揉めたんだって。

ま、酔った勢いでっていうのが実情だと思うんだけど、言い争いになって魔術使っちゃったとかで問題になったらしいわ。」



「一般人相手に魔術使ったらそりゃ問題になるだろ…。俺にまで報告が来てないってことはけが人とかは出なかったんだと思うが。」



「そうみたいね。使った魔術もDクラスだったらしいけど酒場の入り口が破損したって話よ。魔術自体はDランクだったとは言え、放った魔術師はBクラス。しかもB+だったから威力もそこそこあったでしょうね。」



「B+って……何人もいるランク帯じゃないぞ…それだけで犯人絞れるじゃないか。」




B+は流石にAクラスよりは多いとしても、20人もいない。その全員が次の特A候補だ


その中で問題起こしそうなヤツで絞っていくと半分くらいにはなるぞ




「普通なら言い争ったとしても街中で魔術をぶっ放すなんてしないはずだから軍務長官も不思議に思ってたらしいわ。

それで調査を進めていくと、その魔術師が平民の出だからか、貴族に対して強い対抗心というか、特権階級に対しての執着があったみたい。

で、最近魔術師の勤務態度の是正に関する案内が出たでしょ。それが魔術師の立場を軽んじてるっていうか、端的に言っちゃえば、魔術師は特別扱いされて当然だ。って主張してるらしいわ。

そんな感じの不満が溜まってきてたところにお酒の勢いが入って、一般人からも難癖付けられて。って感じみたいね。」




平民出身のB+で、そんな感じのヤツっていうと、エバンスだな。確かに、あいつは特権階級にこだわりがあって、横柄な行動の見受けられるやつだったな




「まぁ、けが人も出てないし、軍務局所属だから内々で処理してくれたんだろう。ケガさせてたら魔術師の管理をしてるウチにも何かしらの連絡は来てただろうな。」



「でも、あなたも注意しときなさいよ。」



「なんでだよ。」



「だって、貴族に対しての反発があって、お酒の力があったとはいえ、実際に行動に移してしまったくらいには頭のネジ飛んでるヤツよ?

切っ掛けになる案内を出したのはあなたなんだし、逆切れで襲撃まではしてこなくても文句を言いくらい来そうじゃない?」



「やめてくれ……。嫌な予感しかしない。」



「ま、実際にあなたと戦って勝てるなんて考えてはないでしょけどね。あなたはB+の中じゃ頭一つ抜けてるし、対人戦。って括りにするならあなたはもしかしたらAクラスをも凌ぐかもしれないし。」



「それは買いかぶり過ぎだ。Aクラス以上の戦闘力なんてもってねぇよ。」



「そうでもないと思うわよ。Aクラスの基準は大規模魔術だし、実際に正面切って戦うならリオンに勝てる人間なんてそういないでしょ?

リオンはCクラスでもあれだけ強い。あなたもBクラスだけど適性はそっちにあると思うから、ワンチャンあるわよ。」




魔術師としてそれは喜んでいいやら悲しんでいいやらなんだけどな


やっぱり魔術師としての成功は特A級になる事がそうだとされてるし、そのためには当然戦略級魔術が使えるようになる事が不可欠だ


つまりは、魔術師はより広範囲に高威力の魔術を使える者こそが優れていると考えられている


だから対人戦でいかに優れていようと、魔術師として優秀だとは認知されにくい




「またネガティブな考えをしてるんでしょうけど、あなたは戦術級魔術は使えるでしょ?

戦略級魔術は誰にとっても難易度は高いんだから、今の年齢で戦術級魔術が使えて、戦略級への道筋が見えてるだけでも立派だと思うわよ。」



「俺より年下ですでに戦略級を使えるかどうかの次元なんて通り過ぎてるヤツに言われてもなぁ…。」



「なによ。せっかく慰めてあげてんのに。」



「お前は色々規格外すぎるから慰めにならんっていうの。ま、でもありがとうな。」



「そうやって素直になっとけばいいのよ。なんでもかんでも難しく考えすぎなの、あなたは。

せっかく恵まれた能力を持ってるんだから、自分の出来る事をもっと認めてあげなさいよね。」




まぁ、自分が才能がある側の人間だってことは百も承知なんだよ


それでも、やっぱり目の前のお前が眩しすぎて俺自身の才能が霞んで見えてしまうんだよなぁ…


お前みたいな才能があれば。なんて詮無き事なんだけどな


それでもまぁ、お前の言ってることも一理あるのは理解できてるさ




「自分が出来る人間だってことくらい分かってんだよ。それくらい頭では理解はしてるさ。」



「生意気。」



「やかましい。」

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