25話~永世中立国
「ラッセル王子。この度はお話を伺う機会を頂きありがとうございます。」
「礼には及びません。なかなか機会が合わずに申し訳ありませんでしたね。」
「然様なこと気になさらないで下さい。我々もラッセル王子がお忙しい身であることは重々承知しております。」
「そう仰って頂けると助かります。紹介が遅れましたが、右にいるのがサイラス・デローザン。主に事務の補佐をしてくれています。
左にいるのがリオン・グリフィン。ロイヤルガードという王族の身辺警護を担当しており、私の傍に控えてくれています。
貴国は連邦共和制とのことですので、馴染みがないやもしれませんが、私の立場上外すことの出来ない者ですのでご容赦頂きたい。」
「私も大使として赴任しておりますので、存じ上げております。お気遣い無用でございます。」
「ありがとうございます。」
「さて…。社交辞令も終わりましたし、本題に入りますか!」
「仮面を外すの早いな!」
「いつまでも非建設的な話してたら時間の無駄じゃん。それよりもっと意味のある話をしましょ。あ、この話し方が気に入らなかったらごめんなさいね。なんだったらさっきの口調に戻しますけど?」
「いや。俺も肩ひじ張るのは苦手でね。そっちの方が助かる。」
「んじゃ、素で話させてもらうね。改めまして、ヨゼフィーネ・タイス。アルキュビア連邦の錬金術師兼駐在大使だよ。」
「どうも。ディーパディ王国第四王子、同国特別Aクラス戦略級魔術師選定管理局長官ラッセル・ディーパディだ。」
「お二人も伺っていいかな?」
「サイラス・デローザンと申します。内務局王族傍仕え課所属、ラッセル王子の事務補佐を担当しております。」
「リオン・グリフィン。軍務局ロイヤルガード一位。見ての通り獣人だよ。」
「ロイヤルガード一位!?すごいね。一位とかって王様の傍に配置されるんだと思ってたよ。」
「一概にそういう訳じゃないんだよね。本人の希望があればそれも考慮してくれるからね。」
「なるほどね。じゃあリオンちゃんは希望してラッセル王子の護衛をしてるって事か。」
「そういう事~。」
「王子もやりますね~。こんな綺麗な娘たぶらかして。」
失礼な。誑かしてなどいない
「おっと睨まれた。話題変えにさっさと聞きたい事聞いちゃいましょうか。ぶっちゃけ、スタンピードに関しては普通に報告聞いてるからどうでもよくて、個人的に気になってる事を聞きたいんだよね。」
ほら来た。こういう知的好奇心が先行してるタイプってめんどくさいんだよな
なにがめんどくさいって、常識がありながらもそれを踏み越えてこれるって壊れ具合がめんどくさい
「じゃあまず、王子の属性適正について詳しく!」
「話すわけないだろうが!」
「え~なんでよ~!私は炎がC-。風がD。土がC+だよ!」
「先に明かしてもダメだ!大っぴらに話すことじゃない。っていうか三属性に適性持ってんのすごいな!」
属性適正は基本的には秘匿するものだ
レキシーの様に有名になり過ぎてしまったが故に隠せないという例は仕方ないが、手の内を晒すことにはマイナスしかない
「それは魔術師の理屈ですよ!錬金術師は自分が何が出来るかを知ってもらう為にある程度の情報開示は必要なんです!」
「だとしてもそれを魔術師の俺に押し付けるな!」
「じゃあ次!王子は精霊族と人間のハーフだと聞いてますけど、比率は?ちなみに私はエルフ2.5、人間2.5、その他5だったよ。」
まぁ、これは別にいいか
「おおまかにだけど、精霊4、人間4、その他2。ってところかな。」
「すっご!そんな高い比率保てるんだ!さすが管理貴族制を謳ってるだけあるね!
マジですごいよその比率。ウチの国は入るのは比較的簡単だし連邦制だからそこまで純度の高い血統ってなかなかないんだよね。錬金術に携わったら出ていくのは逆に難しいってのもあるけど。
リオンちゃんとかはどうなの?聞いてもいい?」
「私はほぼ純血だったね~。ここ来てから調べてみたらちょっと他の血も入ってるっぽかったけど。」
「あ、やっぱり外の出身なんだ。獅子族の人ってなかなか見ないから珍しいとは思ってたんだよね。」
「ん~…ま、そうなんだよね。獅子族って獣人の中でも特に排他的だし、あまり街中にはいないよね~。」
全体的に獣人って流れのイメージが強いしな
「じゃあ、最後。今必要な魔道具はございますか?お近づきのしるしと本日のお詫びと感謝に。と言ってはなんですが、用立てますよ。」
顔つきが変わったな…これが今日の本題だったか
「どうせくだらない興味本位の会談だと思ってたが…しっかり計画してきてるじゃないか。商圏の拡大が目的か?」
「それもあります。ですが、一番の目的は、貴国とは懇意にしておきたい。ってことですね。
我が国は技術力の高さを背景にした中立国です。今の時代、軍事力…というのが正しいかは分かりませんが、経済的に優位でも戦力的に乏しいことは自覚しております。
そんな中でも中立を保ってこれたのは、ひとえに世界が平和だったからです。
しかし、最近になって事情が変わりました。」
クーデターの事だろう。アルキュビアの近くという訳ではないが、それを切っ掛けに何が起こるか分からない。それを危惧している訳か
「我が国にはAクラス魔術師はいません。国土も小さく、自衛の手段が乏しい国です。
ですが、錬金術とそれを基にした経済力はございます。
今、世界を見渡しても比肩する国家はないであろう貴国と友誼を結ぶことは我が国にとって大きな後ろ盾を得ることになります。
先に申し上げておきますが、属国になるつもりは毛頭御座いません。同盟を結ぶ気もございません。
貴国へ我が国が出来得るのは錬金術の技術的な便宜を図る事と経済的な支援のみ。それを以って、万が一の際は少々のお力添えを賜りたく存じます。
その手付と致しまして、ラッセル王子個人へと、特A級管理局へ魔道具を用立て致します。いかがでしょうか。」
アルキュビア側は妥協線から何からしっかり詰めたうえでこの会談を申し込んできていると考えていいだろう
少なくとも、個人間でする話の規模は超えてしまっている。明確な返答はしないのが無難だろう
しかし、クーデターが起こってから今日までの短い期間に内容を詰めて、相手に提案できるだけの時間を確保できるくらいの早さで情報が伝わったってことだ
それを可能にするだけの魔道具を作る技術は持っているという事か。それがあれば国防に大きく寄与する事は確実だな
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