21話~マジシャンズ・ハイ
例の魔獣の大量発生事件、通称スタンピードで久しぶりに公の場で特A級魔術師の力が行使され、一時的に王国は興奮を帯びていた
魔術師、それも実戦に耐え得るCクラス以上の魔術師は残念ながらそれほど多くはない。身近な存在では治安維持部隊の魔術師がそうであり、彼らが野生の獣や稀に出現する魔獣を処分する際、もしくは街中で発生した事件で魔術を使う場面を見たことがある市民もいるだろう
しかし、そんなものと比較にすらならないAクラス魔術師の力に憧れ、畏怖、興奮を覚える者たちの熱気は未だ冷めやらない
魔術師は国家の安全上絶対に欠かすことの出来ない存在であるし、物語などに登場するヒーローとしても王国民になじみ深い存在だ
その肩書は容易く手に入れられるものではなく、例え手にしたとて、国に首輪をつけられる。もちろん、それに伴って様々な特権を有する立場であることも事実で、それがこの職業の魅力の一つであることは否定できない
「レキシーのあの一撃がここまで尾を引くとは思わなかったな。」
「滅多に見れるものではありませんので、致し方ない面もあるかと。しかし、その熱気に中てられてか、魔術師の行動に対しての苦情が増加しているのは頂けませんな。」
「興奮するのは分からなくないんだけどな…面倒をかけるのは素直にやめてほしいもんだ。」
「単純に大騒ぎしているだけでもないようではございます。この盛り上がりに乗じて、今まで溜まっていた鬱憤が放出されているケースもあるようです。」
「例えば?」
「警備巡回中の魔術師の態度が威圧的であった。言動が攻撃的であったなどですな。
総じて、魔術師という立場を笠に着ての言動が気に食わない。そういった趣旨の話で御座います。」
「そこは何ともなぁ…特権階級、とまではいかないが、魔術師って職業自体が特別なものだし、ある程度の影響力を持った立場だから多少の増長はやむを得ない点ではあるんだよな…」
「然様ですな。過去に遡れば貴族社会全盛期であった時は貴族がその対象になっておりましたし、現代では高位の魔術師、身分制議会の代表達もそうでございます。」
「往々にして立場が上がった者や、権力を持った者の態度ってのは大きくなるものだからなぁ…俺も人の事を言える立場じゃないけど。」
王族で、魔術師で、特A級管理局長官。特権階級の詰め合わせの様な肩書を持つ俺が言っても跳ね返ってくるだけである
「私も伯爵家の出ですので、貴族でない大多数の国民からすれば横柄に見える事もあるのかもしれませんな。常に礼節は保っているつもりで御座いますが、この状況ではより気を引き締める必要があるのやもしれません。」
「ツッコむの我慢してたけど、王子とかセバスチャンでダメなら大抵のヤツらダメだからね。」
「いや、リオンはちょっとぶっきらぼうって言うか、言葉尻キツい時とかあるから鵜呑みに出来ない。」
「何でさ~。きつくないし。ちょっと投げやりなだけだし。」
「それがダメなんでしょうが。」
その気安さ?みたいなところがリオンの親しみやすさでもあるから、今更それがなくなったらもう誰よ。って感じになるけどな
「ともかく、特A級魔術で国民の感情が浮足立ってるから軍務局に注意を促しておいてくれ。
魔術師向けに特A級管理局からも通達は出す。」
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