20話~戦後処理

レキシーのお陰で魔獣の群れを撃退出来て数日後。我々は特A級魔術使用の後処理として魔力拡散作業と整地作業に追われていた




「拡散作業の進捗は順調みたいだな。」



「そのようで。それにしても、特Aクラス魔術というのは本当にとんでもない力です。

ここまで地形を変えてしまう力が一個人の手の中にあるとなると、恐ろしいものがあります。」




特Aクラス魔術を遠慮なく放ったのを実際に見たのは俺も初めてだったが、想像の更に上の威力だった


レキシーの使ったのは炎魔術と風魔術を複合させた、爆炎魔術。それの特Aクラス魔術“祈龍喉哮灰懲”。複数の属性の魔術を扱え、且つ同程度の熟練度で二つの魔術を同時に発動させる事の出来る技量を必要とする超高等技術


過去に記録されている複合魔術はBクラス以上の魔術しかなく、最低でもBクラス以上の技量を持っていて、先の条件を満たさなくてはいけない。それを特Aクラスでやってのけるレキシーは正に歴史に名を遺すレベルの魔術師だ


しかしサイラスの言う通り、この力がレキシー個人のものであることは非常に恐ろしい


地形を変えるほどの威力のあの魔術が都市に向けられるとどうなるのか。想像するのも恐ろしい。過去の魔術師達が互いに牽制しあい、均衡を保った理由が身に沁みて分かった




「確かに、あの威力は顎外れるなぁ…。本当に大災害だったもんな。」



「あれを警告なしに撃つのは勘弁してほしいよ~。耳壊れるかと思ったもん。」



「音だけじゃなくて衝撃が半端じゃなかった。立ってられなかった。」



「それな!すごかったよ!私初めて音が遅れて聞こえる現象に立ち会ったと思う!

爆発見えてから音聞こえるまで間があったからね!音を置き去りにするってやばいよ!伝説の格闘家じゃん!」



「そんな格闘家がいてたまるか!」




実際、少しとはいえ音が届くまであったからなぁ




「グリフィン卿でもさすがにそれは無理でしょう。しかし、あの時のグリフィン卿の咄嗟の動きは流石はロイヤルガード一位の人物だと私感服致しましたな。

私を含め全員が衝撃に耐える事しか出来なかったあの瞬間に、王子をお守りする所まで動けたのはグリフィン卿だけでした。



「やめてよ~セバス。位置取りが良かっただけだって。」



「それを日ごろから意識されているからこそなのでしょう。いやはや、頭が下がりますなぁ。」



「まぁ、その点に関しては感謝してるよ。リオンがいれば警護に関しては何も心配してない。」



「ちょっとやめてくれん!?照れる!」




そろそろやめとくか。広がりそうもないし




「しかし、発生しないはずの特A級の出撃をさせてしまいましたな。」



「それな~。各国への説明どうしよう……。いや、どうしようって言ってもそのまんま説明するしかないんだけどさ。」




現代の国家間の均衡はAクラス魔術師の力によって成立し、維持されている


他国の領内で活動したわけじゃないが、あれだけの威力の魔術を行使した以上、問い合わせは来るだろう


大使館の人間は状況も分かっているだろうから、証人として役に立ってもらうか




「やっぱり特A級が動くってまずいの?」



「まずいな。」



「まずいですな。」



「まずいんだ。」



「まぁ~…Aクラス魔術師以上の影響力を考えると仕方ない面はあるがなぁ。

下手したら均衡を崩す危険性があるから過敏になるのも仕方ない。」




まずいとは言ったが、正当性もあったし、仕方ないケースではあった


精々ちょっと嫌味を言われる程度のもので済む話だと思う。思いたい。



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