15話~ご近所問題

あ~…しんどい


先日のレキシーとの訓練の疲労が残ってる。よりもリオンとの訓練での青あざが痛い


執務室の端で座ってるリオンにジト目を向けるとテヘ顔を返された


テヘってるんじゃないよ




「次のご報告ですが、近隣国の一つであるロータス王国を覚えてらっしゃいますか?」



「まぁ、知ってはいる。程度だが、なにかあったのか?」



「クーデターが起こりました。」



「え…意外と重大な事件やんけ。起こって?」



「成功しました。」



「えぇ~……。重大で済まない案件…。で、ウチに被害が及ぶ可能性は?まさか攻撃を加えてくるなんて馬鹿な真似をするとは思いたくもないが…」



「それはさすがにないかと。とはいえ、近隣国の一つでは御座いますので、ハワード卿をはじめとする特A級の方々にはお伝え頂ければと思います。

現在までで集まっている情報ですが、ロータス王国に少なくともA級相当の魔術師が現れた様です。その者が中心となってクーデターを起こした様ですね。」



「ロータス王国って言えば小国だろう?小国にA級相当が出たのか?無くはないが、珍しいな。しかもそいつが反乱を?どういう風の吹き回しだ?」



「王子もお考えの通り、高位魔術師。それもA級ともなれば相当な好待遇が約束されるはずです。

我が国の様な大国程ではないにしても、それは変わることはないでしょう。

むしろ、小国が自前でA級を育て上げることは難しいとされている中での生え抜きのA級です。無理を押して大国レベル以上の待遇を与える可能性すらあります。」



「それでありながらのクーデターか。怨恨か、それとも他に何か理由があっての事か。

いずれにせよ、近隣諸国が緊張状態になるのは目に見えている。

とりあえず、治安維持部隊の警邏を増やすように軍務局に掛け合っておいてくれ。」



「畏まりました。それとですが、情報によると、そのA級魔術師は軍を組織する事を考えているようです。」



「なんでそんな詳しいんだよ…」



「昔取った杵柄ですな。」



「なんじゃそりゃ。」




ともかく、近所問題が発生している。と


基本的にA級の魔術師は大規模魔術の行使が得意。市街地で戦う様な局地戦は苦手


にも関わらず、仮にも一国を相手にクーデターを起こして成功している


それほど器用な人物なのかどうか。いずれにせよ、高位魔術師であれ、市街地戦に対応出来るような技術を持たせておかないと危険という教訓だな


今代の特A級の魔術師たちは全員対応可能だからいいとしても、将来においてもそうだとは限らない


今のうちに制度をしっかりと定めておく必要がありそうだ




「つきましては、私から腹案がございます。」



「腹案?」



「はい。件のA級魔術師がいくら優秀と言っても、一人で国家を滅ぼすだけならばいざ知らず、クーデターを起こした後での混乱がそれほど生じていないという点が不可解です。

クーデター自体は魔術師の個人的力量だけでなく、組織的に行われたものと考えます。」



「それには同意する。それで?」



「魔術師の局地戦闘力を高める必要を感じております。大規模魔術を主体に、外からの敵を戦闘前に殲滅することだけに主眼が置かれている現状を変革し、より個人の汎用性を高めることに注力すべきです。

幸い、我が国はA級魔術師の輩出に関しては喫緊の課題では御座いません。

今回の様に内側からの敵に対応出来る策を用意すべきです。」



「概ね俺の考えと合致するな。」




A級魔術師の運用はセバスの言った通り外敵に向いている。内側に向けて使う事はそもそも想定外だ


魔術師自体が厳格に管理されているからこの様なケースは想定してなかった


A級でなくとも、C以上の魔術師とそれ以下の間の実力は雲泥の差。非魔術部隊であればなおのこと話にならない




「今回のケースは、A級魔術師が敵側にしかおらず、しかも内乱という特殊な状況です。

しかし前例が出来てしまった以上、同様の状況。もしくは、敵側のA級魔術師しか局地戦での魔術に長けていない。という状態を作らない様に対策をせねばなりません。

現状のA級相当の認可条件は大規模魔術の行使でした。加えて、魔術の出力コントロールに関しても条件にする。というのがすぐにできる事ではないかと。」




いままでは戦略級魔術、大規模魔術と言われる魔術を発動させることが出来る。というのが必須条件だった


それに戦術級魔術も入れるべきという事か


詳しい線引き等々は詰めていく必要があるとしても、方向性はそうすべきだろうな



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