14話~ダメ出し

レキシーの無造作に放出されていた魔力が熱を帯び始めた


それぞれの属性魔術は発動させる際に魔力をそれぞれの性質に変える必要がある


レキシーの代名詞、炎属性魔法の発動一歩手前だ


炎属性の魔術は全属性の中でも屈指の破壊力を持っていて、熱という要素は炎属性魔術の奥義ともされている




「さあラス。抗ってみなさい!」



「無茶言うなよ!」



「抗えなかったら大やけどよ。」



「やけどで済めばいいけどな!」




俺も魔力の属性を変化させて抗う


俺が持つ属性の風。風の魔術の特性には希薄させるというものがある。


炎属性の熱を逃がすにはもってこいの属性だ




「風ね。まぁ、熱に対抗するならそうよね。あとは、どれだけ耐えられるかよね。」




風の魔術を破壊力を持たないレベルに抑えながら出来るだけ早く空気を動かして熱を追い返す


俺の風魔術の向こう側の景色がレキシーの熱によって歪んでいる


その距離感からやはり俺が押されているのがよくわかる




「……やっぱり辛いなっ!」



「属性変換の維持はさすがだけど、出力が弱ってるわよ。もっと根性出して魔力練りなさい。」



「根性論かよ!」



「最後は根性!気持ちの入れ具合は魔術にとって重要よ!」




根性が大事なのも事実だし、力技だけの訓練かと思えば意外と手加減もしてくれてるし、きちんと順序立てて行われてる理にかなった訓練だ


つまり、これくらいで音を上げそうになってる自分自身の怠け具合が身に沁みる


サボってた訳ではなくて基本的に忙しい仕事をしているという言い訳はさせてもらいたい


これでも一応国の要職を担ってるので暇な訳はないんだよな


そんな事を考えながら必死に魔術を維持していると急にレキシーの魔術の圧がなくなった




「ま、こんなもんかしらね。あなたも汗だくだし、現状の確認もできたんじゃないかしら。

率直に言ってしまうと、だいぶ鈍ってるわね、あなた。

さっきも言ったけど、技術的なことはさすがだわ。B+の名に恥じないものを持ってる。

でも、基礎的な面がやっぱり下がってるわ。一番顕著なのが出力ね。馬力って言ったらいいかしら。

当然、あなたが私に勝てるなんて微塵にも思ってなかったけど、押し返す力が予想を下回ってた。リハビリしないときついかもね。」




「流石にこうも現実を突きつけられたら返す言葉もない…。」




「知っての通り、炎属性魔術は風属性と相性が良くもあり悪くもあるわ。

炎の勢いを強めて燃え広がる猛火に変えるのも、身を焦がす様な熱波を押し流して希薄させるのもお手の物。

今回は炎魔術の威力を削ぐ形で風魔術を使っていたあなたの方が有利だったんだけど、私の魔力量に負けて押し切られたわけね。」




「相性で勝ってたのに押し負けるってのがそもそもおかしいんだって。

単純に馬力の違いで相関関係覆されたらどうしろってのよ。」




「だから言ってるじゃない。あなたが私に勝てるなんて微塵も思ってなかったって。

絶対的劣勢でもどれだけ抗えるか。そんな状況下でこそ底力ってやつが測れるの。」




「んで、その結果?」




「なまりまくってるわね。要特訓!」




ぐうの音も出ないとはこのことか…

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