13話~ちょっと本気よ

「今日は私の日よ!」




執務室の扉が勢いよく開いたと思ったら…


どうやら今日はレキシーが訓練を施してくれるらしいが




「まだだめだ。今日の仕事が終わってない。」



「いつ終わりそう?」



「まぁ…昼は過ぎるな。ご飯でも食べてこい。」



「それは訓練の後にする予定でいるから遠慮しておくわ。あ、因みにあなたも行くんだからね。」




外食好きだねぇ…。俺は嫌いだけどね


そのまま執務室の椅子に腰かけてグダグダするレキシーを放っておき仕事を再開する




「ねぇ、終わった?」



「まだだ。」




魔術師の素養っていうのは誰にでもある


その中からA級魔術師を選定するのは俺の仕事だ




「そろそろ終わったんじゃない?」



「まだだ。」




素養は誰にでも備わっているが、そこからCランクになるまで成長出来るものは少ない


一応、士官学校という形で国が魔術師の育成に力を入れているが、才能に左右される面が大きく、どうしようもないところはある


魔術の素質は血が非常に重要な要素であり、ただ魔術の才能が高い者同士の子どもであれば良いかと言われればそういう訳でもない


それもあり、その数自体を増やすことは容易ではないのだ




「ねぇ!もう終わってるでしょ!」



「やかましいな。」



「ちょっと時間かかり過ぎじゃないの?」



「うるさいなぁ。終わっとるわ。」



「じゃあ行くわよ!その後買い食いね。」



「俺は仮にも王子だぞ。そう頻繁に買い食いなんかできるか。」



「じゃあ王城内でいいわよ。とりあえず終わったらご飯食べるわよ。そういう訳だから、さっさと訓練場行くわよ。」




レキシーを伴って訓練場に向かう


先日のリオンと同様、今日はレキシーが訓練をしてくれるらしい


ちなみに、今日もリオンはロイヤルガードとしての俺のお守りをしている




「さ、かかってきなさい。って言っても、私もあなたも本気を出すわけにはいかないのよね。」



「当り前だ。もし訓練場を破壊したらお前の給料から天引きするからな。」



「はぁ!?そこは経費で落としなさいよ!」



「自己責任だあほたれ。」



「絶対あんたに壊させてやるわ。」




好戦的なやつだ…


魔術師の訓練のド定番、魔力比べからスタートする


レキシーの魔力は悔しいが、ホントに美しい


魔力の色もだが、出力の瞬発力、出力維持、瞬間出力の大きさなどの技術的なことも相まって美しさに拍車がかかっている


瞬発力は魔術の発動に必要な時間の短縮になる。出力の維持は魔術を発動し続ける為に必要不可欠。瞬間出力はより威力の大きい魔術を発動させる事ができるし、発動する数も増やすことが出来る


魔力の放出一つとってもレキシーの規格外さが分かる




「今日はこの前みたいな小手調べでは済まさないわよ。一応訓練だからね。」



「お手柔らかに。」




レキシーの魔力で軋む訓練場からそれを押しのけるように自分の魔力を放出


それでも彼女の魔力の力強さに圧し潰されそうになる


先日の魔力比べは本当に手加減していたんだという事をひしひし感じる


世界最強の人物の本気の一端が自分との差を明確に示してくる




「……どういう事かしら。この前よりも力強さが上がってるわね。

まぁいいわ。やるわよ、ラス!」




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