12話~獣人流迫撃戦闘指南

「格闘戦におけるポイントその1。正中線の取り合いに勝利すべし。」



「うぐっ…」




正対していたリオンの体が半回転


側面から叩き込まれた拳に耐えきれず態勢を崩す




「格闘戦におけるポイントその2。側面から攻撃を受けたら距離をとるべし。」




アドバイスを受けて咄嗟に距離を取ろうとする俺の腕をリオンの尻尾が絡みつく


完全に動きを止められた俺の背中に蹴りがクリーンヒットする




「痛っ……」


「訓練中のポイントその1。素直過ぎは是正すべし。

格闘戦におけるポイントその3。動きを止められたら終わりと認識すべし。」




追撃でさらに態勢を崩されて地面に倒されてしまう


必死に視線をリオンに戻した俺の視界には靴の裏がいっぱいに広がっていた




「格闘戦におけるポイントその4。倒されたら最後と思うべし。ですよ、王子。」



「ホント容赦なくしやがって……。体が痛くてしゃあない。」



「訓練で手を抜く訳ないじゃないですか。とは言え気分いいですね~魔術では絶対に勝てない王子を這いつくばらせるのは。」



「いい性格してんな……。獣人に生身勝負で勝てるわけないだろうが。」




獣人の運動能力の高さは他の追随を許さない


実際の白兵戦では魔術や武器を用いての戦闘になるからその運動能力がそのまま実戦での強さという訳ではないが


リオンは獅子族だから獣人族の中でも屈指の強さを誇る




「でもまぁ…王子、弱いねぇ~。」



「うるさい。弱くはない。お前がおかしいだけだ。」



「いや、確かに一般人と比較したら強いですよ。でももし私程じゃないにしても、そこそこ強い獣人と相対したらちょっと危ないですよ。

魔術技巧に関しては王子に勝てる人はほぼいないでしょうけど、それを使いこなす為の思考瞬発力が不足してると思うんですよ~。

近接戦闘は瞬間の勝負です。魔術が追い付かなかったら終わりですよ。」



「……真面目にダメだしされてショックだ。」




悔しいがリオンの言も一理ある


魔術の行使にはどれだけの技術を持っていたとしてもタイムラグが生じる


遭遇戦で頭の中の処理が追い付かなければ命取りだ


そもそも、魔力を用いて身体能力を増強させることが可能な上、魔術の中には身体を補助するような魔術も存在する


特に風属性の魔術にはその傾向が強い。獣人を含めて魔術適正の低い人にも発現しやすい


リオンも例に漏れず風属性の適性を持っているが、今の訓練では一切使っていないのが悔しさを助長させる




「真面目な話、王子の事は私達ロイヤルガードが守ります。王子自ら戦わなくてはいけない状況を作ってしまう事は失態です。

でも、例えそうなったとしても王子に死なれたら困りますんで、もっと強くなってもらいますね。」




レキシーの案に乗っかりやがって…


その後散々にいたぶられたのは言うまでもない

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