10話~特A級魔術師の魔術指南

「それじゃ。魔術訓練場に行くわよ。」



「…なぜだ。」



「せっかくだから、ラスとリオンの魔力出力を見てあげるわ。

あなたもデスクワークばかりしてかつての実力が落ちてないでしょうね?

長官だからって怠けてたらダメよ。せっかくB+クラスなんだから。」




そうなのだ


俺の魔術師の位階はB+。今の王族の中では断トツの実力で、国中でも上から数えた方が早い


それでもこの目の前のレキシーを含めたAクラスには絶対に敵わないと言えるくらいの明確な実力差がある


レキシー達特A級の魔術師はAクラスの中から選抜した特記戦力だ


Aクラスにランクされるほどの魔術師ってのは基本的に存在しないんだがな…


今目の前ではリオンとレキシーが絶賛魔力比べ中だ


魔力比べとは単純な魔力の出力を比較する行為であり、元々は魔力出力計測だけのものだった


それが魔術士間でどちらが高威力の魔術を扱えるのかを競い合う為の行為として用いられるようになったのが始まりとされている


一概に魔力出力と言っても、瞬間出力、持続時間、平均出力量があり、瞬間出力は一度に放出できる魔力量。持続時間は魔力を全開で出し続けられるスタミナ。平均出力は出力量の上下のムラ。をそれぞれ計ったものを指す


それらを総称して魔力出力と呼び、魔術の行使に必要な時間に関わったり、高位魔術ともなればそもそもの発動の可否に関わってくる


つまり、魔力比べとは、魔術の根本とも言える魔力の扱いがどれだけ秀でているかを確かめる非常に簡易的な方法とされている


より上位の魔術師が下位の者を指導する際には最初に行われることが多い




「リオンはさすがね。ロイヤルガードとして訓練してるだけあって前回よりも出力が上がってるわ。

獣人故のハンデを背負ってるから出力そのものは決して高いとは言えないけど、あなたの本分は威力大の魔術を行使する事じゃないものね。

ロイヤルガードなら十分な域じゃないかしら。出力のランクはC+。このままいけばB-には届きそうよ。」



「まだC+かぁ…ランクを一つ上げるのも一苦労だね~。」



「当り前よ。一つ上げる度に壁は高くなり続ける。C帯まで来ているのならなおさらね。」




魔術師のランクはF~Aまで存在し、それぞれの中に-、ノーマル、+の三段階


大枠ではF~DとC~Aで分けられ、前者は未成熟。後者は実戦可。である


位階を一つ上げるために必要な能力は倍加される仕組みになっており、例えば-からノーマルに上げる為に必要な能力が10とした場合、ノーマルから+に上げるには20必要とする


+から次の-に上げるには40、次は80といった具合に、雪だるま式に必要な能力は増えていく


実戦に耐え得るか否かが重要になる為、DとCの境目を測定基準としていて、昇段までが非常に長いのもその為だ


リオンは魔術親和性の高くない獣人という種族的な特徴がありながらのC+


本人の不断の努力もさることながら、類稀な才能を持っていなくては到達できなかった域にいる


それでもまだ向上心を失うことなく努力する姿には頭が下がる思いだ




「じゃあ、ラス。あなたの番よ。長官様の実力、見せてみなさい。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る