6話~デートの肴は苦労話

「さ!王子!お仕事も終わりましたし、デート行きましょう~」




軍務局での雑務も終了し、リオンとのデート。本日の最重要任務に移行する


まぁ、レストランの予約もエスコートも身辺警護もリオン頼みなんだけれども




「今日のレストランはベタですけども五つ星を予約しておきました~。」




五つ星を予約するのは贅沢したいだけではなく、ちゃんとした理由がある


貴族制が一応踏襲されているこの王国ではいまだに面子というものは重要視される


そして、俺の身分が王族というのは色々な利点にもなり得るが、反面リスクにも成り得る


今でこそ治安が安定してきて犯罪率が下がってきているとはいえ、古来から王族の身代金目的の誘拐ってのはよくあったし、情勢の安定していない時代では怒りの矛先でもあった


だからこそ王族の身の安全というものは王政の国では最重要案件の一つでもあり、王族が外で食事をする機会が少ないのはそのリスクを考慮してのものだ


仮に外食をするとなればそれ相応に安全面に配慮された所でなくてはならず、様々な面で信用のおけるレストランでなければならない


そういった条件をクリアできる店というのは必然的に高級店となる




「ではでは、参りましょうか王子。」



「腕を組むな腕を。」



「その心は?」



「嬉しい……周りの目があるだろう。」



「大丈夫ですよ~。王子もそんなに表に出るような人でもないですし、ロイヤルガードの私は言わずもがな顔を知ってる人は極端に少ないですから。

なんかご貴族の御子息とご令嬢がデートしてるくらいにしか見えないでしょ。」



「お前は貴族の令嬢じゃないだろう。」



「ロイヤルガードの制服ってすごい貴族然としてるから許される。はず。そうこう言ってる間につきましたよ王子。」




レストランに着くなり下にも置かない歓待を受ける


支配人直々の御出迎えに予約していたコースにない高級品を使った料理のサービス


二人で食事するには意味が分からないくらい広い会食用の部屋


王族が来るのが珍しいとはいえやり過ぎではなかろうか


普段もそんなに広い部屋で食事しないからな?




「ところで王子。どうです最近は?」



「どうですとは?ほぼ常に一緒にいるようなもんだからどうも何もないと思うが…」



「いやいや。あるじゃないですか他人には打ち明ける事の出来ない要職に就いている者の気苦労とか、悩みとか。

そういったのがあれば話のネタにご提供頂けないかと思いまして~。」



「仮にも王子の苦労話を話のネタにしようとするなよ。

それにそれで言ったらリオンの方が多そうなもんだが?」




一応リオンの所属は軍務局。その中で特殊な立ち位置である王族身辺警護専門部署ロイヤルガード


軍務局内でも指折りの腕利きだけが選抜されて構成される軍務局内での花形エリート部署だ


各王族に対して専任のロイヤルガードが1、2人選ばれ、その下に10人の部下が配属される


つまりリオンは部隊長的な立場にいる。しかも王族直属の部隊だ。通常ならプレッシャーは半端ないだろうし、リオンは他の隊員と違って四六時中と言っていい程俺と行動を共にする義務が発生する


ロイヤルガードを10年勤めたら一代貴族に叙勲されるという特権はあるが、そもそも我が国における貴族の権限はすでに限定されたものとなりつつある


それに比すればプライベートもなにもあったもんじゃない現状は非常に酷だと俺なら思うけど




「……王子。」

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