男子校に入学したはずなのに、サンタさん信者のせいで旅に出る件

 真夜中……というかもはや早朝の4時まで人狼ゲームをして、みんなぐっすり眠ってしまった、次の日の朝。


 当然ながらそんな遅くまで起きていたら、朝早起きなんてできやしない。なのに、アホみたいなニュースで起こされることになった。


「ショタ君!みんな!起きて!やばいやばい!ニュースつけて!」


 俺が、女子共に襲われないように着こんでいたハリネズミのコスプレを平然と引きはがし、シオリさんに起こされる。その横では、何が何だかわからない顔をしているルナがいた。


「まだ朝8時ですよ。研究で徹夜慣れしているシオリさんと違って、まだ俺は眠いんですが……。」


 寝ぼけ眼でそういうと、シオリさんが


「それどころじゃない!サンタさんが、来ていないんだよ!」


 とのたまった。


「この年になってサンタさんって何ですか。珍しく焦っているから何かと思いましたよ。」


 ついでに昨日の人狼ゲームで見事にはめられた時の尊敬を返してほしい。


 ユミコの家には当然のように壁面が丸ごとテレビになっている部屋があるので、そちらに行って、映画みたいなサイズのニュースを眺める。


「速報です。今日未明、去年までは各地の児童養護施設等に現れていたサンタさんが今年は全く表れていないということが発覚し、全国各地で不安が広がっています。」


 すると、今度は俺と同じく眠そうな目をしていたヒカル先輩が、


「うっそ!毎年毎年、私のところには来ていたのに!去年も、おととしも来たのに!」


 と頭を抱えている。授業を切って部活に励んでいる悪い子のところには来ないんじゃないですかね。


 すると、アオイが耳打ちしてきた。


「安心しろカヅキ。去年までピカピカのところに来ていたのはロックのおじさんだ。毎年ヒカル先輩にクリプレ上げていたらしいんだ。」


 なるほど。だが、そもそも全国各地の児童養護施設に現れるサンタさんって何なんだ?


 シオリさんに問いかけても頭を抱えて動かないし、どうしたものかと困っていると、そもそも論を聞かれた。


「あの、今更ですけど、クリスマスって何ですか?」


「確か、米英での宗教の行事だったと記憶していますよ。他宗教に恐ろしく不寛容なんだとか。」


 セレスさんもフウリさんも何かわからず食っちゃ寝して俺からプレゼント巻き上げていたのか。


「昔はそうだったけど、今はいろいろ変わっているんだよ。世界単位で見たらキリスト教の方多いんだから怒られるぞ。」


 ただでさえ最近減り気味のアクセスがこれ以上減ると作者の士気にも関わる。


「それで、どうしてシオリさんが?」


 ネグリジェ姿のセレスさんが聞いてくる。こちらこそ今更ですけど、もう少し刺激が少ないものに着替えてきてはもらえませんかね?


「その答えなら、ワタクシが持ってますわぁ!

 みんなおはよう、やっぱり朝は自動運転に限るなぁ。」


 結局徹夜をして遊び続けていたらしいのにもかかわらず元気なレイナと、体力という概念のなさそうなユウリが出てきた。


「何でシオリさんが頭を抱えているんだ?」


「実は、もともとはサンタさんも『偉人』の一人でしたのぉ!でも、科学技術の発達や文化の伝播によって、いくら偉人とはいえど一人じゃ手が回らなくなってしまいましたのぉ!

 ちなみに、彼は配達の偉人らしいぜ。」


 ユウリの豆知識はスルーするにしても、何となくそんな気はしていたが予想は当たりやがったな。


「それで、偉人協会日本支部にて全国にプレゼントを届けられそうな人が、シオリお姉様ぐらいしかいませんでしたのぉ!」


 なるほど、シオリさんが毎年児童養護施設にそういったものを配っていたんだけど、今年は遊び過ぎで忘れていたと。


 一瞬見直したけど、上げて落とすタイプとか最悪じゃん。


「み、みなしゃま……手伝ってはいただけませんでしょうか……。」


 シオリさんがこっちをチラチラ見ながら言ってきた。


「まあ、一緒に遊んでしまったのでいいですけど……。」


 ユウキが何か乗り気ではなさそうな顔で反応している。


「私に『それ』は無理。」


 シオリさんの考えを読んだのか?ユミコですら青い顔をしている。


「そ、そそそ、そんなにムズかしくないよ!」


 今度は何をやらせるんだ……。この人の考えるマシンはたいてい「偉人」基準で物が作られているため、まともに使えるものだったためしがない。


「ぱっぱら~!今回はこれ!ジェットスーツ!」


 シオリさんが某青色猫型ロボットの効果音を真似して取り出したのは、ジェットスーツだった。


 いや、確かに俺も男の子だからこういうのにあこがれはある……が、これは違う気がする。


 よくニュースなんかで見かける、ちょっと飛べます、みたいなのじゃなくて、ジャンボジェットのようなサイズのエンジンが人のサイズの服についているのだ。


「ちょーっと操作とかにコツがいるけど、ちょっとだから!」


 アセアセと言い訳をするシオリさんを放置して、今頃になって起きてきたカオリが、おそらく二度寝のための寝袋として使おうと思ったのか、もぐりこんだとたん……。


 ゴオッ!


 衝撃波だけ残して消えていた。ユミコの家の瓦が何枚も吹き飛んでいる。いや、ほんとになにあれ。


「じゃ、じゃあ、人数分用意してあるから、これで……。」


 そう言って、どこから取り出したのか、西園寺家の広い庭が空港みたいな景色になっていく。これ、着地はどうするんだろう。


「着地はしなくていいよ!爆撃するみたいにプレゼントを屋上に落としていくの!」


 発想が小学生だろ。あと、爆撃なんてやったことないからわかりません。


「さて、これで全部かな……。」


 よくまあこれだけ取り出したなあ。そういわせるだけの量のジェットエンジンが並んでいる。


「じゃあ、出発、しんこーう!」


 そういうとヒカル先輩はスーツを着込んで、スイッチを押し、飛んでいった。カオリのにはなかったみたいだけど、もともとあれが不良品だったのか?


「さてと、何も持たずに行っちゃったアホの子は置いといて、みんなで着こんでいこうか!」


 アホの子て……まあ、ヒカル先輩のことだから反論できないけど……。


 どんどん配る地域を伝えられていく。俺北海道じゃん。しかも北方領土まで管轄とか、ロシアの戦闘機に撃ち落されたりしないよね?


 我ながら末期的なことを考えていると、


「あれ?一着足りない。」


 シオリさんがうれしいことを言ってくれた。これで俺降りられる!


「じゃあ、レイナちゃん!」


「はいですわぁ!」


「ショタ君がロシア軍に襲われた時ように、機銃持つ役やってくれないかな?あそこらへんデリケートだからさ!」


 俺の扱いももっとデリケートなものにしてほしい。


「わかりましたわぁ!」


 そう言って、ルナに髪飾りレーザーを借りている。マジでやるのかよ。


 仕方がないのでレイナは髪飾りをつけた状態で俺の体に縛り付けられる。


「なあレイナ……?」


「何ですのぉ?」


 俺とレイナの頭と足が互い違いなのはどうして……?


 全力で聞きたいけど、聞いたら聞いたで意識しそうで怖い。


「あー、それはねカヅキ。普通、飛行機っていうのは後ろから攻撃が来るものなのよ。」


 そうユウキが解説してくれるけど……


 レイナの、


「じゅるっ!じゅるっ!じゅるっ!」


 という、まるでよだれをすするような音が聞こえてくるのが心配でならない。大丈夫かなぁ……。

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