男子校に入学したはずなのに、女子と人狼ゲームでごちゃごちゃな件

 前回から始まった人狼ゲーム。開幕同時にマキ先生がやらかし、最初こそ村人チームの勝利が確信されたが、初日の朝にはフウリさんが、二日目の朝にはカオリとアオイが噛まれ、セレスさんも吊られた。


 いまだにオオカミ陣営と確認できるのは四人中たった一人だけ。村人チームはピンチに追い詰められていた。


 そんな二日目の朝、レイナに職業を詰問したところ霊媒師と答える。しかし、ユウリが待ったをかけた。





「前回のあらすじに時間をかけすぎではありませんのぉ?」


 話を遮られた上に自分の発言の前にあらすじにさらにまたされたレイナは不機嫌気味だ。


「いや、そもそもウチが話す番だったけどな。」


「それで?ユウリは何を言おうとしていたんだ?」


「いや、霊媒師はウチだってことよ。」


 ようやく話が本流に戻った。ちなみに、ユミコ曰く武士の情けであらすじは話し合いの時間に含めないでいてくれるらしい。


「じゃあ、それぞれ誰を占ったか教えてもらってもいいか?」


 俺がきくと、レイナが真っ先に


「マキ先生ですわぁ!」


 と返してくる。


「はあ?お前霊媒師じゃねえだろ。マキを占ったのはウチ。そんで、人間だった。」


「何を言っているんですのぉ!?マキ先生は人狼でしたわぁ!」


 また始まった。水掛け論だ。前回あったユウキとシオリさんの水掛け論はとばっちりでセレスさんが被害を被っていなくなったが……。そろそろ慎重に選ばないとまずい。


 そろそろ取っ組み合いを始めそうな二人を放置して、次に占い師の方でも争っているユウキとシオリさんもとりあえず放置だ。


 現時点であてになりそうなのがヒカル先輩、ルナ、アヤカさん、ボーイッシュ先輩ぐらいだ。でも、この中にも一人人狼側が紛れているはずなんだよなぁ。


「では、リスクの高い占い師の二人は一度放置して、今晩、霊媒師を名乗る二人の中から怪しいほうを処刑、でいいね?」


 こういう時に先輩であり冷静でもあるボーイッシュ先輩は頼りになる。


「どうだろう、みんなはどっちが怪しいと思う?」


 ボーイッシュ先輩は俺に意見を求めてきた。えっ?俺っ?


「うーん。なんだかんだレイナは役者ですからね。ユウリは逆に、あれで子供っぽいところもありますから、怪しいのはレイナじゃないですかね?」


 俺が言うと、ヒカル先輩もアヤカさんもうんうん頷く。


「あれ?当店のお得意様、どうかなさいましグフっ!?」


 どうやらルナはウチのメイド喫茶のお得意様らしいという個人情報をばらまいてアヤカさんがルナに殴られる。今のはアヤカさんが悪いですよ。


「そうね……。実はこの流れを作っているボーイッシュ先輩かカヅキが黒幕、なんてことはないでしょうね……。」


 普段は暑くなりやすいくせに、こういうときだけさえているルナが言う。なぜ俺だ。と言っても、俺も今のところ話にあまり参加していない気がするし……。


「言っておくが俺は何の変哲もない市民だぞ。俺を殺しても不利になるだけだ。」


 するとルナがこっちを完全に見下した目で見てきた。


「今のはブラフよ。こういって反応したあんたが黒幕ね。それに、ボーイッシュ先輩には黒より青の方が似合うわ。あたしってば策士!」


 知らねーよこの自称策士が!こんなん策でも何でもない単なるあてずっぽうじゃねーか。


 しかし、俺に助け船が入った。


「そういえば、ボーイッシュって、いつも嘘つくときとか隠し事するとき左の眉だけぴくつくよねー!なんで?」


 口論組もピタッと話を止めて、ボーイッシュ先輩の眉毛を見る。


 ピクピクピクピク。


 描写ざつだなおいっ!


 もちろん処刑はボーイッシュ先輩となった。


「久しぶりの私の出番がぁ……!」


「こないだ企画で特集張ってましたよね。」


 俺がそういうと、ボーイッシュ先輩はガクッと首を曲げてこれ以上の会話が禁止された。


「時間。夜。」


 夜で伏せている間、一度だけオオカミのターンでとてつもない殺気が放たれたのを感じたが、それ以外は何もなくゲームは終盤戦へ。


 三日目の朝には、さっきボーイッシュ先輩を追いやったヒカル先輩とルナに殴られてこっちKO状態だったアヤカさんがリタイアだ。


 ヤバい。人数のカウント的に、さっきのボーイッシュ先輩が外れていると負け確定だが、現時点でユミコが負け宣言をしていないこと、ヒカル先輩がやられたことからボーイッシュ先輩は黒だ。


「許さない……。」


 ルナがどす黒いオーラをまき散らしている。


「ボーイッシュ先輩を黒幕へと配置したこの世界を許しはしない!」


 ギンッ!


 という効果音が来そうなぐらい鋭いまなざしを俺たち全員に向けると、


「カヅキ、ユウキ、ユウリ。わかったわ。人狼はレイナとシオリさんよ。」


「根拠は?」


「私の勘よ。」


 やたらどや顔で行ってくるから理由気にして損したわ。


「でも、少なくともレイナは怪しいよな。ユウリみたいな必死な感じがあまりしなかったし。」


「ワタクシはいつでも冷静なだけですわぁ!」


「ダウト。」


 ユウリが指摘する。まあ、その通りだ。


「ということで、じゃあみんなでレイナちゃんを吊ろう!」


 ここでシオリさんもノリノリでレイナを吊ることになった。……ってことはシオリさんは人狼じゃないのか?


「うびゃあああ!お姉様の……御許に近づかん……ですわぁ!」


 そう言ってレイナもリタイアだ。


 そして夜パート。


 随分と人数が減ったが、まだ一人は人狼がいるはずだ。たぶん、レイナを吊ることに反応を示さなかったユウキだな。


 しかし次の朝、ユウキとユウリが噛まれていた。


「ふっふっふっ。見損ないましたよ、シオリ先輩。」


 今度こそ確信をもった表情でルナが言う。


「最後が近づいて油断しましたね?ここでユウキをかんで得をするのは、ユウキと争っているあなただけではないですか!」


 ビシッ!って決めポーズまでしちゃって。


 でも、さっきの怒り方はガチだったし、たぶんシオリさんで確定だろう。


「待って待ってルナちゃん!私は人狼じゃないし、人狼なわけないでしょ!」


「ここにきて見苦しいですよ。観念してください。」


「そうだそうだー。」


 とりあえず合いの手を入れておく。


「ちょっと!私を誰だと思っているの!?超絶天才だよ!?こんなところでそんなミスをするわけないじゃん!むしろ、ルナちゃんが私を疑って得するのは誰だと思う!?それを仕組めるのは誰よ!?」


 もしかして黒幕はルナ……?と思いそちらを見ると、ルナが怒りと屈辱で真っ赤に染まった顔をこちらに向けていた。


「ってことは、ここにいるのが黒幕だったわけねぇ!」


「ま、まて!ボーイッシュ先輩の時の下りを……!」


「処刑する人を決めて。」


 ユミコぉお!ここにきて一番の裏切者め!


 こうして俺が処刑されて、人狼チーム(黒幕はやはりシオリさん)の勝ちだった。あえて疑われるような噛み方するとか……あんた、本物の策士だよ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る