男子校に入学したはずなのに、クリパはここからが本番だ!な件

 俺が結果として大赤字になったプレゼント配りを終えて帰ろうとしたとき、ガシッと肩なり腕なり足なりを掴まれた。先生とユウリ以外の全員に。


「何でございますでしょうか?」


「カヅキ、言葉が変になってるわよ。」


 そりゃ変にもなるだろ。プレゼント配り終えた後に女子10人以上に体中を取り押さえられたら。


 こいつらの本性を知らない男なら、美少女に引き留められたラッキー、ぐらいにしか思わないんだろうが、俺は違う。


「なにが目的だ。」


 俺がそう聞くと、我関せずの様子で見ていたボーイッシュ先輩が、


「純粋に君と遊びたいだけじゃないかな。」


 という。いや……そういうことじゃないと思うんだけどな……。


「どちらにせよ、みんな一回離れてください。じゃないならなわ抜けした後に全裸で帰ります。」


 俺が言うと、みんなは俺のことを離してくれた……というよりマジ引きした顔でカサカサと離れていく。こいつら、俺が本当にそんな馬鹿な真似をすると思ったのだろうか。


 俺からはただ単にけんかを売ってるのかと思えた。


「っていうかカヅキ。クリパはまだ始まったばかりだぞ?」


 俺の中では大赤字で終わっているんだよ。お前ら俺の分は用意していないだろうが。


「本当にないと思った?」


「なーーんだそれならそうとみんな早く先に言ってくれればいいのに!」


 ユミコの言葉に俺が反応するとみんながサッと目をそらす。おい。


「そもそもみんなに自分だけあんなにいっぱいもらっておいてクリスマスは交換にしようっていうのが都合がよすぎるんだよなぁ。」


 あの……ユウリさん……?その内容だと俺は誕プレをもらった分だけクリスマスに返さないといけないわけで、毎年積もると大赤字どころじゃすまないんだけど。


「ということで、クリパゲームしますわぁ!」


 こっちを向いているはずなのにやたら目が合わないレイナが話題を強引に変える。


 強引すぎるだろお前ら。


「さあ、まずはなんでもバスケットだ!」


 アオイはノリノリだけど、こんなの偉人関係の人たちが無双したりヒカオリ砲が飛んだりして俺とマキ先生だけが大けがをする落ちしか見えない。却下だ却下。


「仕方ないですね。それなら、先日アキバで見つけたこれなんてどうでしょうか!?」


 俺の意見を珍しくまともに聞き入れたセレスさんが、別にアキバでなくてもどこでも売っている人狼ゲームを出してきた。嫌だなぁ……。


「何ですかそれ?」


 世間知らずのフウリさんが乗っかり、やることになった。はぁ……。


 オオカミは三人。占い師一人。騎士一人。裏切者一人。霊媒師一人。一晩で噛まれるのが二人。


 ざっくりとしたルールを知らない人はググるか察してほしい。


 占い師は任意の一人を人狼か占うことができる。騎士は任意の一人を守ることができる。裏切者はオオカミに味方する人間である。霊媒師は処刑した人が人狼か占える。


 ゲームマスターという司会進行は、心が読めるユミコがやることになった。こいつがGMとか、すべてを見通している神様がニヤついているみたいでいやだな……。


 それぞれに役職のカードが配られる。


 俺は……。市民だ。一番つまらない役である。


「それでは、まず役職の確認をします。全員顔を伏せて机を指でたたいてください。」


 気配で悟られないようにするためらしい。でも、偉人組には意味なくね?まあいいけど。


「人狼の人と裏切者の人は顔を上げてください。」


 そう。裏切者はいいよなぁ。食われる心配がないから。


 しかし、ここで事故が起きる。


 ゴッ!


「イッタァい!」


 一ノ瀬先生の声だ。


 俺含め、みんな驚いて机をたたく手を止める。


 ふわっと風が起きた。


 ……居心地が悪い。が、誰かが机をたたきだしたのを合図に、何もなかったことにして机が叩かれ始めた。


「はい、全員伏せてください。そしたら次……。」


 占い師、霊媒師、騎士の役職確認が終わったところで全員手を止め、顔を上げる。


「さて、人狼がいるようです。とりあえず先生を処刑します。」


 これはひどい。ということで、本物のアイアンメイデンを持ってこさせようとしたユミコを他全員で必死に止め、先生がゲームからドロップアウトした。


「はい夜。伏せ。」


 俺たちは犬か。


「オオカミ、噛む人選んで。」


 その後、話が進んで……。


「朝になりました。犠牲者は一人だけ。フウリさんです。」


「そんな!」


「しゃべるのは禁止。」


 ユミコは日ごろから無口なのもあって、話が進むのが早い。自業自得の先生はともかく、フウリさんがかわいそう……。だが、こういうルールなので仕方ない。


「では、ここからが本番。話し合い三分。」


 ここですぐに先陣を切ったのはカオリだ。


「ウチは騎士。カヅキを守った。だから、襲われたのはフウリさんとカヅキのはずだ。」


「誰ですか私を襲ったの!」


「話すのは禁止。」


 どこまでも冷静なユミコにフウリさんが完封される。許してやれよすぐに脱落しちゃったんだし。ろくにルールも知らないうちに。


「私は占い師だよ!カオリちゃん占ったけど、人だった!」


 シオリさんがそういうと、今度はユウキが


「えっ!?占い師は私ですよ!私が占ったのはカヅキで、カヅキは人でした!」


 とシオリさんに突っかかる。あの驚き、本物……だよ……な?


 そう、これぞ人狼ゲーム名物占い師は誰だ問題。


 ごちゃごちゃ話していると、ユミコが残り30秒を合図したので、ボーイッシュ先輩がいった。


「それなら、占い師を今削るリスクを冒すのはよして、シオリさんとユウキちゃんだけを除いた相手で投票するのはどうだろう?」


 みんなが賛成し、とばっちりで四票集めたセレスさんが削られた。俺はさりげなくシオリさんに入れたんだけど、どういう判断基準だろう。俺は適当に入れただけだが。


「開幕から一言もセリフないのに、フウリとセットで平和主義者が削られるなんて不遇です……これは陰謀です!」


「話すの禁止。」


 これは陰謀ですってあんた……人狼ゲームってそういうゲームでしょうよ。


 さて、ユミコの司会で今度は二人食われているらしい。


 カオリとアオイ……武闘派二人が削られたか。でも、まだそんなに痛くない。この二人策略とか弱いところまでそっくりだし。


「さて、ちなみに、ユウキちゃんとシオリさん、それぞれ占ったという結果はどうだったの?」


 アヤカさんが早速二人に話を聞く。ユウキはレイナを占い人狼、シオリさんはルナを占い、人狼だったという。


「ちょっ!?あたしが人狼なわけないでしょ!?」


 こういう状況になるとほぼ確実にパニクるルナの言葉は本当か嘘かわからないのでとりあえず放置。


「わたくしは人狼じゃなくてお姉様のしもべですわぁ!」


 レイナがそう言って俺に引っ付いてくる。これもいつもか。


「じゃあレイナ。俺のしもべなら俺に自分の役職を正直に教えてくれないか?」


「霊媒師ですわぁ!」


 そ、即答……。


「ちょっとまったァ!」


 今度はユウリが声を上げた。こんどはなんだよややこしいな……。


 次回に続く!

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