男子校に入学したはずなのに、サンタさん扱いで大赤字な件
さて、先輩に何を渡したのか素直に話そう。うん。これは自分でもどうかと思う。
腕と足のサポーター。ただし、十代のスポーツをやる人がつけるものではなく、老人用。最近、先輩の骨、ヒカオリ砲の乱用で傷ついていそうだしな。
ヒカル先輩はたまに意志の力ですごいことをやってくれるけど、あくまでもこの人の体は普通の人。「偉人」系の頑丈な体を持っているとか、そもそも物理攻撃の効かない幽霊とかじゃないのだ。
「あ、ありがとうシュガー。」
「べ、べつにヒカル先輩が年上だからとかじゃないですよ?」
「そ、そうだよね、うん……。」
周りの人もごみを見る目で見てくる。……いや……だって……うん……。
「す、すみません。」
「あ、あやまらないでよシュガー……」
そこで、上手い……訳でもないけど言い訳を思いついた。
「あれですよ、あれ!ヒカル先輩にはそれが必要になるまで長生きしてほしいなーっていう思いを込めたわけでありまして……。」
この苦しい言い訳を聞いたヒカル先輩はしばらくうつむく。
フラグになるから、心の中で「やったかっ?」とか言ってはいけない。
「じゃ、じゃあさ。これ使うようになるまで一緒にいてくれる?」
「ええ、ええ。もちろんですとも!なんでもいいからこの視線の針のむしろからどうにかしてください。」
すると、ヒカル先輩の顔がぱぁっと明るくなり、周りからの視線はごみを見るものから冷たいものになった。ゴミ捨て場の水たまりに落ちたような気分だ。
もう次の人に渡そうそうしよう。
袋に手を突っ込んで、取り出すのは……ルナだ。こいつの金星スーツには調整後にはお世話になっているからな。主に女装で。
そこで俺チョイス、金星になさそうであったらうれしい物!
「……なにこれ、ふりかけ?」
ルナが俺のあげたものの袋の端をつまみ上げ、首をかしげる。やはりこいつはこれを知らないな。
「これは、味噌汁だよ。金星でも食べたくなるといけないだろ?」
周りからの目は、いよいよ氷点下に近づいている。……が、俺は知っている。こいつは実は他の追随を許さないレベルの味噌汁好きだということを。
「これが味噌汁?」
「ああ、いつも頑張ってくれている新部長さんにはお礼が必要だなと。」
それも、スーパーでの一箱いくらとかいう安物ではなく、味噌の蔵が出しているちょっといいやつの詰め合わせだ。味噌汁好きのルナにならわかるはずだ。
「か、カヅキ……。」
「お湯を入れるだけで味噌汁ができるんだぜ。これで金星でも困らないだろ?」
ルナはきっと俺のことを感動の目で見上げているはずだ。そして鬼部長の座を降り、まとも人代表の俺をチア部の部長に据えて……。
ふとルナを見ると、こいつは困った顔をしていた。
ん?
俺が理解していない顔を向けると、ユミコがすっと携帯の画面を見せてきてくれた。「金星」の項目のウィキペディアだ。
続いてその後ろからユウキが「濃硫酸」と書いてあるところを押す。
なになに……濃硫酸による脱水?どうも、金星では濃硫酸による雨が降るらしく、それにより水が抜かれてしまうらしい。
……。
「えーっと、次は誰かな……。」
微妙な顔をしているルナを放置して、袋に手を突っ込む。
あ、セレスさんようだ。
セレスさんには……
「これは……!」
「地球儀だ。そっちの世界に持って行ったら珍しいだろうと思って。それに、こっちの世界について語ったりもできるだろ?」
バシン!
カオリの10000分の一ぐらいの力だが、ひっぱたかれた。
「頭湧いてますの?地球儀!?よりによって、こんな危険なものを、こともあろうにあなたは何ておっしゃいました!?」
「お、おう……。」
え?俺なんかした?いや、みんなの目が刺さってこないから、おかしいのはたぶん俺じゃないよね?
「私の魔法は、王族ですゆえ強いほうではありますが、向こうの世界では、人間の平均値がこちらの世界とは比べ物にならないほど強いんです。そんな異世界と繋がったら、何が起こるかお分かりですか!?」
もちろん、こっちの軍事力に自信のある国も黙ってはいないだろう。
「そして、相手の地図を握ることが、どれほど戦争において大事か、少し考えればお判りいただけますよね?」
「すみません……。」
返す言葉もない。
「もっ、もちろん、王族として受け取った以上、そういったものをやすやす返すわけにはいかないのです!……そう、王族として!だから、これはありがたくもらいますけど、そうやすやすと地図とかを持ち込んだりしたらダメですよ!」
……結論。セレスさんもツンデレの類だった。金髪だし、とんでもないところから来ているし、ルナとキャラ被るなぁ。ルナも魔法みたいな科学力だし。
「そうですね、次行きますね。」
こんなのにかまっていたら配り終えられない。……と言えどまだクリスマスイヴだが。
もう俺本当にサンタさんじゃん。最後にどれだけお金かかったか計算してみようかしら。
「はーい、どんどん行きますよぉ。」
俺が面倒になっただけではなく、タイピングの調子が悪い作者も面倒になってきて、アヤカさん、マキ先生、フウリさんの三人にポンポンポンと渡す……
「まった。先生、いつからいました?」
「最初からいましたよ。」
「え、でも、セリフ……。」
「ありませんでしたよ。」
そういえば、セバスチャン追撃戦でちょっとだけでてきていた……っけ?気になった読者は読み返してほしい。
「確かに、二話ほど前に一瞬だけ出ていますね。」
しかも、セリフなしに加えてヒカオリ砲を撃たされるという始末……。
「あれ?腕とか足とか大丈夫でした?」
意外と大事なところを聞いてみると、
「実は以前にも重い物を思いっきり投げる機会がありまして……。」
慣れてたのか。ってか、この人の過去がいい加減気になるんだが。
「そんな私に対するプレゼントがこれですか。」
俺が先生に渡したのは、ちょっといいペン。というか万年筆。そこそこ高かった。
「いや、ありがたいんですよ?ありがたいんですけどね?実は全く同じものを以前親友からもらったというか買わされたというか……。」
苦笑いである。すみませんでしたねぇ。
「それよりカヅキたん。これ、もしかして……。」
そう、前から決めていたことだが、メイド喫茶をやめようかと考えていたので、アヤカさんにメイド服を上げることにした。
「旦那様。その服、貸与。」
え?
「いっとくけど、カヅキたん、もう返さないからね!」
え、ちょま……
「弁償5万。勤続おめ。」
はぁ……。
さて、尺も残り少ないが、フウリさんには、全国お米協会への推薦状をシオリさんに書いてもらった。どこにでも通じる伝手があるよな、この人。
人に頼んで作ってもらったものということで軽蔑こそされたが、チョイスとしては間違っていないはずだ。そう信じたい。うん。
今回は尺がギリギリで終わり方が強引になってしまった。
……はぁ。
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