男子校に入学したはずなのに、クリプレ交換が交換じゃない件
車の中で挟まっていたセバスチャンは、結局みんなが取り囲んでボコボコにタコ殴りにし、西園寺家の座敷牢にぶち込まれた。
そもそもなんで家座敷牢があるんだとか聞いてはいけない。
「だって、家になかったら座敷牢って言わない。」
「違うんだユミコ、そういう意味ではない……。」
……?と首をかしげているけど、わかってやってる……よな?
「懐かしいわ。昔、悪さをするとよくお師匠様やお父様にあそこに入れられたものよ。」
ユウキもかなり過酷な過去をお持ちのようで。っていうかそれ、案件じゃないの?大丈夫?
「特に神棚を超能力で吹き飛ばした時は……。」
ユミコもガクガクふるえている。こいつが震えるって、何があったんだか。
「それよりシュガー、その袋は何?」
俺が手に持っている袋をヒカル先輩が指摘する。作品の収録外で買ってきたみんなへのクリプレだ。主人公がこれをやるのは反則だが、命が惜しいので反則させてもらった。
この前の誕生日はみんなにプレゼントをもらったからな。お返しをしてやろうと思った……訳ではなく、たぶん、これ、なんか送らないと命が消し飛ぶなぁと直感したからだ。
それに、こういうのって、プレゼント「交換」だろ?こいつらがくれるのはいつもいい物ばっかりだしなぁ。たまには奮発してみることにしたのだ。
「「「じゃあ、プレゼントくださいな!!」」」
あれっ?
お、おかしい。普通ならこの流れは、
「あれ?俺のプレゼントがなくなってる?」
ユミコ「買い取った」
俺「お金いっぱい!わーい!」
っていう流れじゃなかったのか?
俺は冷や汗を垂らしながらカオリ宛のプレゼントを渡す。
「はい、まずはカオリね。」
カオリに渡したのはボクシング用のグローブだ。それも、特注品で綿が普通の奴の10倍は入っている。殴られてもいたくないように、ってな。こいつが殴るのは基本俺だし。
「これをつけて殴ってほしいと?」
カオリが言うと。
「なんだお前、Mならあのじーさんと牢屋にでも入ってくれば?」
とユウリにからかわれる。違うけど違くない。殴るならせめてそれをつけてほしいということだ。……が、伝わらなかったらしい。南無三。
さっきのセバスチャンみたいなボコボコの顔になった後に、ユウキへのプレゼントを取り出す。
「はいこれ。上げる。」
ユウキに上げたのは、RTXなのだが、先日スーパーで見つけた「特濃」と書いてある奴だ。なぜスーパーにおいているとか、特濃ってなんだよとかは突っ込んではいけない。
「これ、もしかして超人気で売り切れ必死の『特濃』!?よくこんなの見つけたわねカヅキ。ありがとう!大好きよ!」
最後の五字で周りの緊張というかなんというかが急に鋭くなった気がするが、気のせいだ。うん。気のせいに違いない。
「はい次はい次。アオイね。アオイにはこれね。」
実は、アオイにはリクエストをもらっていた。……いたんだけどさぁ。本当にこれでよかったのだろうか。二つの意味で。
「ねえ、これじゃなきゃダメ?」
「だめだ。」
仕方ない。俺は、自分の顔がプリントされた人形を取り出した。既製品の男の子の人形にプリントしただけなのだが、もうなんか嫌。
「はぁ……俺もヤンデレデビューしようかなぁ。」
ため息をつきながら、テキトーに手に当たったものを引っ張り出す。あ、ユミコのだ。
「はいこれ。」
「ん。」
なんともそっけないやり取りで終わったけど、一番悩んだんだぞ。かける金額じゃ勝てないし、変に手作りとか気取ろうとするのはほかのみんなになんか言われそうだと本能に警告された。
さて、一度だけ登場した俺の得意な手作りお菓子を皆さんは覚えているだろうか。
「女子へプレゼントとしてはゼロ点。」
「悪かったな。」
「でも、私的にありなので及第点。」
そう、ねるねるねるねの作成済みの物。手作り菓子ではないし、既製品でもない。……よかったのだろうか。
「お姉様ぁ!ワタクシのはなんですのぉ!」
元祖ヤンデレイナがせかしてくるので、レイナの分を取り出した。こいつのも悩んだ。たぶんこいつは俺があげればそれが何でも喜んでくれるからだ。でも、それだからって適当に選ぶのも申し訳ないし……。
「これなんかどうかなぁ、と思って。」
俺が渡したのは……。こいつがちょくちょく来ているゴスロリに合いそうなヘッドドレス。うん。無難なのに逃げました。
「えへっへっへへへhっへhっへへっへへえへっへへへへ」
なにこれ、爆発でもするの?
レイナは白目をむき、顔を真っ赤にしたまま泣きながら笑っている。気持ち悪すぎて話したくないので放置。ついでに縛っておく。
さてさて、次は……ユウリの分だ。
「お前にはこれだ。」
手に入れるのに最も手がかかったのがこれだ。わざわざ恐山まで行って、イタコのひとと一バトルやらかして、ようやく手に入れたもの。
「肉体自由化札?」
「そう。要するに、それを張っている間は、幽霊としてじゃなくて、普通の人間と同じように生活できるってこと。」
「あ、ありがとう……。」
ユウリが、珍しく顔を真っ赤にしてうつむく。
「いや、まあ、どういたしまして?」
「ありがとう……。」
……泣いて、いるのだろうか。確かめるほど無粋ではないが、肉体がないユウリがどれほどさみしい思いをしていたのか、俺には想像すらできない。
「いや、喜んでくれたならこちらとしてもうれしいよ。」
偽りのない本心を口にする。
フウリさんがユウリにその札を張ってあげると、ユウリが実体化……
べりっ!
フウリさんがすぐに札をはがした。
「ちょっ!?」
「変態!チカン!オタンコナス!エロガッパ!土でも主食にしていなさい!」
最後の方は意味が分からないが、酷い言われようだ。
「え、俺何かした?」
「実体化したとき、どんな姿になるかとか、想像していなかったのですか!?」
あ……。
今の幽霊状態のユウリが来ている服は、厳密には幽霊の体の一部を変えてそう見せているだけだ。つまり……ね。うん。ごめんなさい。
おかげさまで感動的な雰囲気を全部ぶち壊されてしまったので、次行きましょう、次。
ヒカル先輩へのプレゼントを取り出す。
「なぁに、シュガー!?」
キラキラした目で期待値爆上がりすぎて、うん。どうしよう。そんなに大したものじゃない。
「どうぞ……。」
「こ、コレは……!」
うん。先輩の反応も微妙だ。何を渡したのか紹介する前に、尺の都合で今回はここまで。また明日、だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます