男子校に入学したはずなのに、ドS鬼畜ジジイに襲われる件
「お、おまえは……せ、セバスチャン!」
なんとも懐かしのキャラだ。前回、ユミコに同居を進められたときに、心の中が何か警告を発してきていたのは、こいつが原因だったんだ。
「お久しぶりです、カヅキ様。最近、鍛えなおす機会がございまして、おかげさまであなた様を無事に連れ出せそうです。」
そういうと、サンタの恰好をしたセバスチャンは袋の中に入っていた様々なものをみんなに向かって放り投げ、代わりに俺を抱き上げる。
「み、みんな!助けてくれ!」
「無駄ですぞ。」
俺が助けを求めるも、食い気味にセバスチャンが否定。見ると、みんなさっきセバスチャンが投げたものに夢中だ。
「これ!かの有名なグリーン・スリーが使っていたヌンチャク!」
「新味のRTXだわ!」
「イタリア製のマニアゴナイフですわぁ!」
「あたらしいシューズ!」
だめだこいつら……。って、あいつらにあきれている場合じゃない!
おそらく。こいつはこの空き袋を使って……。
「それでは、二人の愛の巣に向かいましょうぞ!」
「嫌だよ!俺はそういう趣味はないの!それにMでもないの!そういうのはそういう趣味の人とやっていてください!」
「何をおっしゃっているのでしょうか。わたくしめに、ドMの人間と楽しめと、そうおっしゃるんですか?」
「そうじゃねーけど、それでいいよ!」
「いじめられて喜ぶ人間をいじめて、何が楽しいのでしょうか?」
こいつ、マジでやべぇ……。
「み、みんな!助けてくれ!」
唯一正気だったのが、この場で数少ない男であるボーイッシュ先輩。
「ぼ、ボーイッシュ先輩!」
さすがにこれはどうにかしないといけないと思ったのか、ボーイッシュ先輩がみんなを正気に戻していく。力づくで。
「か、カヅキ!」
しかし、俺は抵抗むなしく袋に詰められてしまう。
みんなが無駄に広い部屋をこちらにこようとしたところで……。
俺は頭以外完全に袋に入れられてしまった。
「では、ゆきますぞ。」
セバスチャンがそういって走り出す。
しかし、やはり「偉人」関連の人たちは行動が早い。セバスチャンが走り出すころにはシオリさん、アオイ、カオリの三人が部屋から飛び出て、パンチの衝撃波で攻撃してくる。
終わったなセバスチャン。この三人に囲まれたら、俺でも初撃を避けるのが限界。二人目、三人目の攻撃に当たってKOだ。
「ふむ。偉人とはこの程度ですか。」
なにっ!?
セバスチャンは振り返りすらせずに避けた。俺が振り返ると、三人とも驚いて固まっている。
「わたくしを誰だと思いか。自分の急所を狙う気配ぐらい感じ取れねば、とっくに死んでおりますぞ。」
そう言いながら、レイナが投げた刃物をかわし、床板に貼ってあったお札をユウリへと投げる。
「使用人の分際で!」
ユミコとユウキが合体超能力で家の一部を粉々にし、牢屋をつくってセバスチャンを閉じ込めようとするが、完成する前にすり抜けられる。
何この人。ラスボスか何か?俺の貞操、この人に奪われて最終回!?
「ほいほいっ。」
アヤカさんが手裏剣のように投げた皿を、躱している。今のうちに逃げ……
「そうはさせませんぞ。」
ぴちゅんっ!
痛っ!
ルナが撃ったレーザーがちょうど袋を貫通して手に当たり、逃げるチャンスを逃してしまう。
今の攻防の間に立て直したらしいシオリさんとアオイが左右から迫る。正面には、なぜか斜め後ろから、セレスさんとフウリさんが壁を作っている。
「多段ロケット式マキちゃんヒカオリ砲!発射!」
ボーイッシュ先輩の声が聞こえたので、そちらを見ると、マキ先生がヒカオリ砲を丸ごと打ち出した。
あの人も超人だったか……と思ったら、先生の中からユウリが抜けていくのが見えた。
もうヤダこの超スーパー能力大戦……。
本来のヒカオリ砲の威力で加速したヒカオリ砲が、さらにそこからもう一度撃つことで威力を上げて突っ込んでくる。
空気との摩擦でカオリは燃えているが、いたって平然そうな顔をしている。もう、なんでもありだな。
「これはまずいですね。」
そういったセバスチャンは、俺とシオリさんとアオイのことを束ねてテニスラケットのようにして持つと、フルスイングでカオリを撃ち返した。俺で。他二人は無事だ。遠くに投げられたが。
全身からめきょめきょっという音が聞こえ、さらには髪にカオリの炎まで燃え移る。だが、セレスさんから炎の魔法を教えてもらったおかげで、ほとんど体が燃えずに済む。
もしかしてこれ、あとではげる奴じゃ……
って、そんなことを心配している場合じゃない。
壁を作るほかにも、どこかに超能力を使っていたのか、超能力組も倒れる。
「クソーっ!」
パニックになったボーイッシュ先輩は、一般人だからあっさり寝かされた。
ついに、俺を追える人がいなくなった。それどころか、作者の案すらも尽きてしまった。これ、本当に最終回とかじゃないだろうな。
ついに、西園寺の家を出る。外にはあらかじめ車が待たされていて、俺は袋に押し込められる。全身がバキバキに折れてしまい、痛くて抵抗すらできない。
「出してください。」
セバスチャンが言うと。
「わかりました。……でも、中で何かあったのでしょうか?随分と大きな音が聞こえましたが。」
ユリアさんの声だ。だが、この口調からして、中で何が起こったのか気が付いていないな。
「いえ、みなさま、プレゼントに喜んで騒ぎすぎてしまったようで。」
「なるほど、そうでしたか。」
それで納得するほど普段から俺らうるさいかな。ともあれ、この人に助けてもらうしかない。
声を出そうとして、セバスチャンの指が俺の喉を抑えていることに気が付く。こ、声が出ないだとっ?
お、おわった。
最終話、完。
なんてことには、とうぜんといえば当然だがならなかった。
「では出しますよー。」
ユリアさんがそういうと、車が急にバックを始めた。
「ゆ、ユリア殿。なにをなさっているので?」
「え?運転ですよ?」
「それはギアがバックに入っていますぞ。」
「あー!忘れてた!」
そういうとユリアさんが運転を始める。建物に向かって。
「ち、違います!そっちではありません!」
「でも、ナビが北に向かえと!」
「それは、道路を通ってですね!」
あわててブレーキを踏もうとして、間違えたのだろう。
すでに高速並みの速さを出している車が、サイドブレーキを思いっきり引かれてひっくり返った。
痛みをこらえて袋の透けているところから外をのぞくと、窓の外にみんながブチギレ顔で車を取り囲んでいるのが見えた。
危なかった……。
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