男子校に入学したはずなのに、親友とデート中に自称愛人と遭遇した件
久しぶりの前回のあらすじ。
アオイに拉致半分のデートにつれて来られた。いろいろとあってアレなホテルに連れ込まれた。そしたらそこにレイナがいた。しかも西園寺ホテルだった。以上。
「お姉様ぁ?どうしておとぼけになられるんですのぉ?」
「で、ですから、私は佐藤カヅキなんていう人間ではないと何度も言っています!」
アオイに連れ込まれたホテルでばったり会った後、
「あれー?どうしてこんなところにアオイ様とお姉様がぁ!?」
という言葉……からの
「お、お姉様って誰でしょう?」
の繰り返しを小一時間続けている。
「なあカヅキ、そろそろ認めてやればいいじゃん……。」
この事態を引き起こした犯人ともいえるアオイですらこの始末である。っていうか誰のせいでこうなったと思っているんだか。
最近アオイもヤンデレ化が進んできている中で元祖ヤンデレのレイナさんまでしょい込んだら、俺は財布も心も体まで真っ赤に染まる。
財布は赤字で心は羞恥で体は出血で、だが。
「お姉様、もしかしてデート中に愛人乱入イベントってやつですのぉ?」
そして今日のこいつは勘がいい。間違っちゃいないが違うそうじゃない。
「まずデート……ではあるらしいが、お前は愛人じゃないし、乱入っていうより俺がつれて来られただけだし、このままだとアオイが俺に対していろんな法律でアウトになるぞ。」
とりあえず話題は自分からそらしてくれたようなので、いろいろ言ってアオイを止めてもらおう。
しかし……。
「でも、法律的に男性は被害者として認められないことがほとんどですわぁ。」
クソ、こいつなぜか法律に詳しいんだよなぁ。特に、結婚とエロに関しては。誰かから抜け道でも教わっているんじゃないか?
「と、とにかく、俺を助けろ、アオイに襲われても生きていけるのはお前とシオリさんとカオリぐらいしかいないだろ!」
「結構いますわねぇ……。」
確かにそうだが……。
「なあレイナ。ウチが一番さんに選ばれたあかつきには、お前を正式な二番さんとして認めてやるってのはどうだ?」
逆にアオイがレイナを買収しにかかる。いやいや。レイナだって、一番優先される立ち位置にいたいはずだ。俺って何様だよって考え方だけどさ。
「それは好条件ですわぁ!特別にVIPルームをお貸しいたしますのぉ!」
そう言ってレイナがタブレットを操作していると、後ろから何者かがレイナの耳を掴んだ。
「よーう、良いご身分だな。たった二日のバイトでホテルのオーナー気取りかぁ?」
現れたのは、ユミコのお母さん。俺のバイトするメイドカフェの店長であり、西園寺グループの実質的な支配者のような人だ。
「ウチのシマで未成年者に色々しようよとか、チョーシ吹かしてくれてんじゃないの。ええっ!?」
そして世界単位で有名な霊媒師でもあり、目が見えないにもかかわらず、その超能力は未知数……。
アッツ!
ほとんど登場しないサブキャラのくせにとか考えていたら、根性焼きを入れられた。正気かよこの人。
アッツ!
もう失礼なことは考えません。
「そんでよう、あんたら三人、セットで出ていくか放り出されるか、やってみるか?」
いつもこんな感じだが、やたらとヤクザみたいな口調で迫ってくるので、俺とレイナは退避した。……が。
「ふん、平安時代の偉人の血とか、何分の一だって話よ。二世の力、なめないでもらおうか。」
さも当然のように、最近追加された汎用性高い「偉人」の設定を駆使し、アオイが挑発する。やめとけって。ユミコのお母さんだけじゃなくて、新しい設定に混乱した読者まで敵に回すぞ。
「さてはおまえ、『偉人値』の話を聞いたことがないな?」
ユミコのお母さんが自信ありげに言う。説明が長かったので簡単に言うと、「どのぐらいすごい人か」という値で、あまりにすごすぎる人と、普通の偉人は歴史に名前が残らないらしい。
アオイとシオリさんのお母さん、レイナのお母さんなどは、普通の偉人、歴史の勉強で習うのがすごい偉人。だが、ユミコのご先祖様はそれをはるかに凌駕する偉人で、裏から世界を牛耳っていたらしい。
「確かに、あなたの方が血は濃い。でも、あんたとは偉人値が別モノなんだよ!それに、念動力は物理と相性がいい!」
きちんと俺と読者が付いて来られる言葉でしゃべってほしい。
「さあ、覚悟しな!」
「うおおおお!」
少年漫画のように二人が激突する寸前、二人ともが止められた。
「お母さん、待って。」
「アオイも、ストップよ。」
ユミコとユウキだ。この二人が力を合わせればユミコのお母さんを不意打ちで泊めることぐらいはできるらしい。
「お、おいユミコ!こいつは、ウチのシマで……!」
「平和裏にやって。」
「はい……。」
そういうと、ユミコはお母さんをバックに連行していってしまった。
ユミコのお母さん、ユミコの言うことは割と聞くのな。ドーターコンプレックスとでもいおうか?ドタコン?
「アオイも、カヅキの意思は確認したの?」
「いや……それは……うっ……。」
アオイが助けを求めるようにこちらを見てくる。味方をしますか?
「俺はオーケー出してねぇ。でもまあ、ユウキも怒らないでやってくれ。アオイは俺の事楽しませようとしてくれてたんだよ。」
「仕方ないわねぇ、カヅキに免じて許してあげるわ。」
「す、すまん……。」
今回は平和裏に解決しそうだ、俺的にはそれで済んでくれれば言うことないのだが。
「ただし、条件が一つあるわ。」
俺とアオイとレイナは三人で顔を見合わせる。
「私ともデートしてもらうから。」
俺は走って逃げようとしたが、最近あちこち折られまくっているせいで力が出ず、そのまま前のめりに転んでしまった。
「じゃあ、ワタクシは明日の準備に専念しますわぁ!」
そういうとレイナもバックヤードに引っ込んでいく。
引っ込んでいってくれるのはありがたいのだが、これ、「明日の準備」ってことは明日またなんかされるってことだろ?やだなぁ……。
「じゃあカヅキ、行きましょ。」
ユウキが有無を言わさぬ力で俺を引っ張る。
「あ、ちょっ!?……あ、アオイ!悪い!また明日?」
俺が連れていかれるのを、悲劇のヒロインのように見ていたアオイだが、俺がそうやって声をかけると、言葉の最後でパッと顔を輝かせた。あーやっていればあいつもかわいいのに。
それと、明日はやっぱりなんかあるのな。
「カヅキ、いつまでアオイのことを考えているの!?」
ユウキに怒られる。
「ここからは、私とのデートなのよ。他の女子のことを考えるなんて、失礼千万だわ。」
まあ、確かにそうだが……。
「ところでカヅキ、お昼ごはんまだよね?」
言われてみれば、腹も減ってきた。
「確かにそうだが。」
「じゃあ、ご飯行きましょ。いいお店を知っているの。私の奢りよ!」
おぉ!それじゃありがたく!
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