男子校に入学したはずなのに、誕プレがやたらクレイジーな件

「さて……と。もう題名でクレイジーとか言ってるからろくなプレゼント来ないんだろうな……。」


 とりあえず、プレゼントを用意していたからかお互いが何を渡すか知っているみんなが、本気で敬遠していたユミコだけは最初は避けるとして……。


「覚悟がそこそこ必要なメンバーといえば、やっぱりお前だよな。」


 そう言ってカオリに向き合うと、音がめきょめきょって聞こえながら地面が回転してきた。あーこれ、首が回転しているんだね。


「ほら、ウチからはこれだ。」


 なになに……「心のおちつくお香セット」自分用にでも買ったのかな?


「なるほど、襲われそうになったときに、お前の鼻にお香を刺す、と?」


 手首を掴んで持ち上げられ、そのまま地面にたたきつけられた。


「お前が使うんだよ。こないだお前、お香のチラシみてたからほしいかなって思ったんだよ……。」


 相変わらずわかりにくいが、幼馴染にだけわかる赤面だ。なるほど、俺のことをしっかり考えてくれたらしい。アオイの次にまともなプレゼントだ。ちなみに俺が見ていたのは隣のページの線香で、ユウリに供えようかと思っていたんだが、言うと怒られると直感が警告してきたのでやめた。


「今回は珍しくまともだったから、じゃあもう一人ぐらいまともそうな人行っておきますか。ということで、一ノ瀬先生、お願いします。」


 先生がさっきから後ろ手で何か重そうなものを持っているのを気が付いていたので、先生にお願いすることにした。


「そんな不安そうに見ないでくださいよ。いただけるのであれば、どんなものでもうれしいですよ?」


 すると先生は不安そうにこちらを見た。仲間にしましょう。


「これ……休んでいた分のテキスト、プリント、講義内容とそのノート、練習問題、宿題、発展問題集その他です。」


 カチッ!


「コラ、カヅキ!せっかく先生が用意してくれたものなんだぞ!」


 セレスさんから教わった魔法で指先に火を灯すと、アオイに羽交い絞めにされた。なにするんだよ全く。


「おかしいなと思ったよ!カオリがまともだったしわ寄せがこんなところに来てるよ!」


 世界はどこかで均衡を保っているらしい。


「それにみろ!なんか重そうだなと思ったら、床板突き抜けてんじゃん!紙の質量じゃないだろこれ!」


 ていうか、他の人々は数か月でどこまで勉強しているんだ。


「これは……小学生とかの復習です。」


「ちっくしょー!」


 もういい。次だ次。次はまともなの来るんだろ?順番的に。


「ルナ!……は本能が危険を察知したから、セレスさんお願いします!」


 こっちも異世界のヤバい物持ってくるんじゃないだろうな。


「私は、あなたならこの世界の物がいいのではと考え、こんなものを用意いたしました。」


 お、良い感じ。安心できる。セレスさんはやたら大きな入れ物を持ってきた。


「なんでも、この世界でお土産を買うならココと言われまして、寄らせていただきました。」


 なんだろう、このほのぼのした感じ。


「こちらです!東京デンジャラススタジアム、略してTDSの『戦う!ハッデーくん等身大フィギュア!』です!」


 ごめん、どこから突っ込めばいい?


 東京デンジャラススタジアムとは、以前俺らが行った遊園地に隣接されている、当然のごとく曰く付きのスタジアムだ。


 そのスタジアムは主に格闘技をやっており、そこが始まって以来数十年にわたりトップのファイターだ。


「ハッデーくんは、格闘技界だけではなく、政界、経済界からも恐れられているんですよ!」


 八百長じゃねえだろうな。


 そしてその等身大フィギュア……触り心地は……擬音語にするなら、もちゃもちゃする、と言ったところか。要するにキモい。噂ではハダカデバネズミと人間の獣人なんだとか。なんだよ獣人って。


「しかもこの子、二体以上セットで購入すると、繁殖するんですよ!」


 地獄絵図としか言いようがないだろ。


「もういいって。覚悟は決まったから、ルナ、来い!」


「ウチをなんだと思っているんだ。ほら、金星の石。」


「「「つまんなっ。」」」


 ルナが投げてきたのをキャッチすると、普通の石……かな?JAXAとかに渡したら喜ばれそうだけど、ヒトからのプレゼントを渡すのはさすがになぁ。


「し、仕方ないだろ!」


 そういうとルナは何かを背に隠した。そういえばルナはツンデレの典型みたいなやつだったな。シオリさんに目配せさせてもらう。


「ほれほれショタ君、これぞ本当のプレゼントですぞ!」


 プレゼントは……ルナとおそろいの銀色ウエットスーツモドキ。自分の思考に合わせて色合いなどが変わるやつだ。


「おー、めっちゃいいじゃん!」


「ちょっとグレードアップして、快適な気温に保つ機能も入れたわ。そっちで着替えて来なさい。」


 カオリとシオリさんにお願いして更衣室の守備を固めてもらい、着ると……


「あ、あついっつーの!あああああ!」


 全身やけどだ。やばい。脱ぎ捨ててシャワーから水を浴びる。


「おいルナ!これどうなってるんだ!」


 ルナを更衣室に呼びつける。しかし……。


「えっ?快適な温度じゃない。」


 手を突っ込んだルナがきょとんとしている。そうかこいつ基準なんだな。


「金星の表面温度は460度。」


 ユミコも入ってきて教えてくれた。焼けるわ。


「ふ、フウリさん、助けてください……。」


 そんなフウリさんからのプレゼントは……。


「この時代で一番感動したものを送りますね。」


 そう言ってお米をくれた。なんというか、いつもよりも重たい気がするのは気持ちの分だろう。


「ありがとうございます。」


「いえいえ。それを言うなら、こんなにたくさんのお米を食べられる時代を作ってくれた人たちに、感謝してくださいね。」


 相変わらず、この人いい人すぎるんだよなぁ。


「やっと私。」


 さて……ユミコのことだ。何を渡してくる……?島とかビルとかか?


「甘い。」


 なに、思考を読まれただと……ッ!?


「私からは、シオリさんとのこれ。」


 月の……土地!?以前ニュースか何かで、条約の関係で国では保有できないから、個人向けに売り出していると聞いたことがあった気がする。


「広さは東京ドームくらい。」


 なんだ、普通じゃん。いや、普通じゃないけどさ。シオリさんと、って聞いたから、どんなデンジャラスクレイジーなものが来るかと思ったら……ん?


「それと別荘とエレベーター。」


 おい。地球における技術的な前提ぶっちぎってるぞ。


「ていうかそれ、宇宙条約とか問題ないのか?」


「大丈夫。たぶん。」


 そうか……ここまでの事態を想定していないのだろう。


「それ、受け取らなきゃダメ?」


「受け取らない場合、ショタ君の代わりにヤバい犯罪者とかのねぐらになりそうだよね。」


「そもそも月面の法律が微妙。」


 てことは、俺という個人が持ってないと最悪戦争とかになる可能性も……?


「正解。」


 いつのまにか世界に追われる立場になりました。

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