男子校に入学したはずなのに、女子の集まりは○○だった件
「満足?」
フウリさんも落ち着き、みんなで集まっている部屋があるからと黒服の人に案内された部屋の前に、ユミコがスタンバっていた。
「何のことだ?」
「今日……というかここ数日、どうだった?」
「楽しかった……だけじゃなくて、みんなのいろんなところを知れたかなって思う。」
「ところで、今日は何の日?」
しばらく監禁状態だったから、何の日かなんてわかるわけがない。一番近い用事だと、何らかの祝日があった気がするが、何らかの、という程度の陰の薄い祝日だったはずだ。
「うーん、さっぱりわからん。」
ちょっと頭をひねってみたが、まったくわからず、ユミコに答えを促す。
するとユミコは黙って襖を開けた。
「「「お誕生日、おめでとうー!!!」」」
クラッカーがさく裂し、くす玉が割れる。中からは、「カ旦ヅ那キ様、おたんじょうびおめでとう!」と書いた垂れ幕が出てきた。
「私とお師匠様の合作なのよ。」
垂れ幕の陰になってしまったユウキがひょいと顔を出す。
「クラッカーの中のキラキラはワタクシの包丁と、ルナのレーザーの力を借りましたわぁ。」
「仕方ないからやってあげたのよ、感謝なさい!」
みんな……。
「お誕生日ということでケーキも用意したのよ!ね、マキ先生!」
「えっ?私ってアヤカさんのクラス持っていましたっけ!?すみません、覚えていなくて……。」
そうじゃないと思いますけど、それ以前に聞きたい。
「どうやって俺の誕生日を知ったんだ?」
「えっと、この前朱雀を倒した時の応用で……。」
「ヒカオリ砲で市役所に突っ込んで、戸籍盗んできた。」
設定も調べ方も雑すぎんだろ。
「もしかして、みんな何かしらやってくれてるのか?」
「当然。」
「ウチはセレスと組んでこの作戦がバレないように霊的、魔法的にサポートをしていたんだぜ。」
「あなた、何もしていなかったですよね?おかげで魔法力の消費が激しかったんですよ!?」
「仕方ないだろ、いま霊的に弱ってるんだって。」
「それで、ウチとフウリさんなんだが……。」
どうかしたのだろうか。
「二人はじゃんけんで勝って、栄えある旦那様の世話係に就任した。」
ただ単に作者が二人になんの仕事を押し付けるか思いつかなかった、ってところだろうとは思うが。そういうのは考えてやるべきだ。
「その通り。」
さて、その二人は何をしているかというと、アオイは持ち前の身体能力をいかんなく発揮し、俺の前にすばやくドリンクを持ってきた。メイド服、アオイが着るとかっこかわいいな。
一方フウリさんは……さっきからケーキをひとつも運べていない。毎回どこかで落とすからだ。だが、何となくかわいらしい哀愁漂うその姿に、誰も怒ってなどいない。
「ていうか、なんで雑用なのにじゃんけんで勝った人なんだ?」
「そりゃあシュガーにメイド服見てもらえるからだよ!」
ああ……うん……なんかこう言われると恥ずかしいな。
「それで、ウチのメイド服はどうだカヅキ?」
アオイが目の前でくるっと回る。スカートがそれに合わせてふわっと舞い上がり、動いているときの「できるメイド」とは違う、「かわいいメイド」の出来上がりだ。
「あ、あの……別に私はお姉ちゃんのライバルとかになるつもりは……。」
フウリさんが、恐らくアヤカさんが詰めたであろう短いスカートを抑えている。男心的にぐっとくるものがあるな。
って、痛っ!
「お姉様ぁ、ワタクシのことも見てほしいですわぁ。」
レイナが耳を甘がみ……じゃなくて露骨に噛んできた。そういえばこいつこういうキャラだっけ!
「レイナ、落ち着けって。」
カオリがレイナの顎を砕いて助けてくれる。いや、本当に砕くのはやりすぎかなとも思うけどさ。
「それで、誕生日プレゼントをみんなでってことになってね。みんなそれぞれ考えて持ってきたのよ!」
「まずは私から。」
ユミコが何かを渡そうとしてきたが、ユミコ以外のみんながユミコを取り押さえてどっかに投げ捨ててしまった。
「あいつの後にだけはわたせねえ!」
ユウリの目がガチなところを見ると、よほどお高い物なのか。お返しとか困るからやめてほしいんだけど。
「てことで、ウチからのプレゼントは幽体離脱薬だ。自分で使うもよし、贈り物によし、憎い奴に一気に飲ませるもよし、何に使ってもよしだぜ。」
最後の用途は聞かなかったことにするとしても、良いなこれ。
「ちなみに、一滴で一時間幽体離脱ができて、ちょうどで戻らないと永遠にさまようことになるから注意な。」
怖すぎるんだよ。ちょうど、の当たり判定すら示されてないし、絶対使いたくないわ。
「ワタクシからは大業物、正宗ですわぁ!」
レイナが取り出したのはバカでかい日本刀。鞘はなく、俺の身長ぐらいあり、峰が下側になるように置いてある。
「鞘さえつくれないこの切れ味、見てくださいですわぁ!」
刃を返した途端、ストンと板の間をきりさき、地面に根元まで突き刺さってしまった。
「保管するときは必ず刃を上にしてくださいですのぉ!」
一周回って不便だろ。このサイズでこの切れ味。
「コンクリートも豆腐も同じように切れますわぁ!」
もはや凶器ではなく兵器だ。
「それを言ったら、私はこれ!シュガーにピッタリかと!」
ヒカル先輩からはチアのシューズだ。これこれ、こういう普通のプレゼントを待っていたんだよ!
「ジャンプ増強のために足からロケットが噴き出すの!シオリ先輩との合作だよ!」
試しに履く前にスイッチを入れたら、どこかへと飛んで行った。
「燃料は30分で切れるらしいから、心配しないで!」
そう言われても、あのスピードだと宇宙行かないかな?
「あとで西園寺グループで回収する。」
ユミコさんあざっす。
「カヅキ、私からはこれよ。」
RTXの詰め合わせ。まるで高級なジャムのように箱に瓶で入っている。防犯グッズかな?何種類か味があるみたいだけど、RTXの時点で何食っても痛くしかならないだろ。
「これが唐辛子味、ワサビ味、カラシ味ね!」
どれも辛いのばっかりだし。
「みんな、もう少し普通の物を渡せよな。」
そう言ってアオイがくれたのがバスケットボール。どうせこれも靴みたいに何かあるんでしょ。
「このボールにはどんな機能が?」
「普通の大会公認ボールだよ。」
あれ……なんだろう……普通という存在がありがたくて涙が……。
「そして私も普通の物よ!」
アヤカさんからのプレゼントはヘッドドレス。メイドが頭につけているアレだ。
「いや、バイトでしかメイド服着ないので。」
「でもこの前、クローゼットの中に大量に入ってたわよ?」
この人なんで俺の部屋のクローゼット知ってるんだ?こないだカオリがレイナにもらったって大量に入れてたけどさ。
どこかにシオリさんの気配がした気がしたが、気のせいだ。
「このプレゼント、普通か……?」
「ある意味普通じゃないわね……。」
そして、キリが悪いが尺の都合でこれから先は次回にやることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます