男子校に入学したはずなのに、フラグ整理の会がある件:ヒカルと勉強会

「ヤッホー、シュガー!遊びに来たよ!」


 遊びに来ちゃったよ。


「勉強するんじゃないんですか?さすがに三年生三周はしたくないですよね?」


「こういう時に人間の心に一番必要なのは、ゆとりと遊びなんだよ!」


 この人の言うことを聞いていたらダメになる気がする。


「勉強も必要ですけどね。」


「むー、連れないなぁ。」


 つられたが最後、この人が卒業するまで俺は一年生を周回プレイすることになりそうだ。


「とにかく、勉強しますよ。俺も成績ヤバいので。」


「じゃあ、私が教えてあげるね!」


 そこはかとなく不安が漂う。この人が……勉強を教えるだと……?


「ところで、それ何の教科書ですか?」


「数3っていって、三年生の数学の教科書だよ!もう、そんなことも知らないのー?」


「それ、数3じゃなくて小3ですよ。」


 せめて中3であってほしかった。もしかしてこの人、勉強だけで見ればユイよりはるかに頭悪いんじゃないだろうか。あいつもやばいけど。


「ほんとだー!どっちも何言ってるのかわからなくて、同じに見えちゃうんだよねー。」


 あ、この人、来年も同じ学校にいるかも。俺が退学になってなければ……。


「あれ、もしかして俺が教えるの?勉強?」


「教えてくれるの?ありがとー!」


 こらそこー、無邪気な顔して抱き着かないー。俺の心が邪気だらけになっちゃいますからねー。


「ダメだ……。だれか……。助けてくれ……。」


「待たせたなぁ!」


 こ、この声は!し、シオリさん!?


「はああぁ!その、ショタ君の嫌気と蔑みの目、かわいいいい!」


 ヤベえのが来た。


「し、シオリ先輩!?こんにちわっ!」


 そうか、ヒカル先輩とシオリさんは一年かぶってるんだっけ。


「ふっふっふっ、君なら留年すると思っていたよ、ヒカルちゅわん。面白そうだったから言わなかったけど。」


「ひ、酷いですっ!」


 確かに本当にひどいな。そのヨダレ垂らした顔とか、いろいろ。


「そして私がついに完成させた未来予測装置、『ラプラスの悪魔』によると、ヒカルちゅわんは再来年にはショタ君とは違う学校に通うことになる!」


 え、それどういうこと?もしや俺も留年?言い方が遠回し&意味深すぎて怖いんだけど。


「そこで、二人の勉強を見てあげるためにはせ参じた!」


「あれ、でも、もとはと言えばシオリさんは宇宙にランダムで追ほ……トリップしてるんじゃなかったんですか?」


「そうだよー、だから、自力で帰ってきた。飛ばされたのが、運よく、プロキシマ・ケンタウリbだったからね!」


 どこだよそこ。っていうか、どこであるにせよ地球外から自力で帰ってくるんじゃない。さっきのアオイとは比較にならないほど人間やめてるな。


「大気圏どうしたの?とか、酸素あった?とか聞かないの?」


 シオリさんがどや顔で聞いてくるが、


「聞いてもなんもおこらなそうなんでアホくさくなりました。」


 と偽りない本心を伝えさせていただく。ていうか、さっきユウリたちが退散する原因になった音って、この人の墜落した音だったのか。


「それより、シオリ先輩!私、留年しちゃったんです!勉強教えてください!」


「いいよー、じゃあまずは服を脱ぐところから始めようかー。」


「わかりましたっ!」


「いや、少しは疑問に思いましょうよ。」


 本当に服に手をかけたピュアなヒカル先輩を羽交い絞めにして押しとどめる。


「でも、私が一年生のころはいつもこうやって勉強を……。」


「おいクソババア何教え込んでんだ。」


「てへっ。」


 おっと危ない。つい口が勝手に。てか、ヨダレ垂らしながらやられてもかわいくないっての。


「それじゃ、早速勉強を教えるぞ!さあ、何がわからないのかな!?」


「全部わかりません!」


「じゃあ、小学一年生の復習からやろう!」


「はーい!」


 もう勝手にやってろよ。ていうかヒカル先輩どうやって高校入試したんだろう。いくらこの高校がザルでも、さすがに無理がある気がする。


「俺はこっちで勝手にやっていますので(意訳:部屋の反対にいるから、放っておいてくれ)」


「わかったよぉ、ショタ君!(つまり、そっちに行けば二人きりだね)」


「シオリさんはヒカル先輩をお願いします。(頼むからこっちにだけは来るなよ。)」


「オッケー!(ここで気絶させればいいんだね)」


「頼みますよ。(本当に後生だから来ないでくれ。)」


「ぐへへへへ(任せてよ!)。」


 心がダダ洩れだ。


「心の声と表向きの声が逆になってますよ。」


「こりゃ失礼。」


 もう帰ってもいいかな……。ユミコ作のプログラムも半分ぐらいこなしたし、いいよね?


「つまりね、この問題の答えは25なの。それで、こっちが83ね。」


 シオリさんがヒカル先輩に勉強を教えている声が聞こえてくる。これ、教えてるの勉強じゃなくて答えじゃね?


「シュガー助けてぇ!何言ってるのかさっぱりわかんない!」


 答え言ってるだけですよ。


「ショタ君!ヒカルがどこがわからないかさっぱりわかんない!」


 天才あるあるですねそうですね。


「「ねえ、ちょっと勉強(の教え方)教えてくれない!?」」


 はあ……。かたや尊敬する部活の先輩。かたや人類を超越した超科学力、運動力をもつ天才。それを相手になぜ勉強を教えなくちゃいけないんだ。





「なるほど、シュガーの説明、すごくわかりやすかったよ!」


「ショタ君、教えるの上手いねえ。私が逆砂漠化を進める植物を一つ作っている間にもうヒカルに勉強教えちゃうなんて!」


 うん。ヒカル先輩の感謝はありがたいけど、シオリさん、人類の歴史を変える方がヒカル先輩に勉強を教えるより簡単ってどういうこと?


「ヒカル先輩はチアに例えてあげれば大体の問題は解けますからね。」


「それ、クリプトスより難しくない?」


 また読者様がわからなそうなマイナーなものを……。


 ちなみに、クリプトスとはCIAの本部にある未解読の暗号である。興味がある人はグーグル先生に聞いてくれ。


「っていうか、今回ヒカル先輩のための回なのに、先輩ほとんどしゃべってないじゃないですか。」


「いいんだよシュガー、気にしないで!」


 ここで、はい、と頷いたら何か負けな気がする。


「いや、先輩もこの変た……シオリさんに気にせず、言いたいこと言っていいんですからね?シオリさんに不満とかあるなら今のうちですし。」


「え、えー、わ、わかったよ!」


 そういうと、ヒカル先輩は大きく息を吸い込んで、


「シュガーとイチャイチャしたーい!」


 とのたまった。超大声で。


「いや、あの、ヒカル先輩?」


「なんでしょ?」


「何をおっしゃっているんで?」


「……願望?」


 だめだこの人。


「シオリさーん、ヒカル先輩がセットでお帰りだそうでーす。」


「はーい!」


「シュガーの裏切り者ぉ!」


 ドナドナドーナードーナー……ヒカルを乗せてー。

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