男子校に入学したはずなのに、フラグ整理の会がある件:ユウリの憑依体験
「普通、部屋に入ってくるならドアか窓だと思っていたんだが、例外はレイナだけじゃなかったんだな。」
床下から現れて驚かしてくれたユウリに、文句の一つも言ってやる。するとユウリは頬を膨らませて、
「そりゃあ、こっちが本家だからな。」
とのたまう。確かに。
「だいたい、お前がフラグ整理の会なんて言うよくわからないものに出席したこと自体が俺的にはすごく驚きなんだが。」
「仕方ないだろ、ウチは西園寺の命令には従うしかないんだよ。それに……。」
「ん?」
うっすらと透けて見えるユウリの幽霊ボディに、赤みがさす。もしかしてこれ、赤面してるの?
「ウチは、死んでから付き合ってほしいとは言ったけど、今すぐでも気にしないんだからな。」
「あっ……。」
なんかこっちまで恥ずかしくなってくるじゃねーか。
「と、とにかく!カヅキは黙ってウチに憑依されろ!いいな?」
「お、おう……?」
そういうと、ユウリがゆっくりと俺のことを包んできた。
「ユウリ……お前の中に入ってるのを、感じてるぞ。」
「やめろ、なんか言い方が卑猥だ!」
「でも、包まれているのは……。」
「お、おい、動くな!あ、ちょっ!いきなり奥の方まで来すぎだ!」
なんだろう、字面だけ見ると大変なことになっていそうだが、そこらへんは作者に丸投げでいいか。
「なあ、これ……やばい……今までに感じたことない、不思議な感じがっ!」
全身がひんやりし、くすぐったくてつい動いてしまう。
「だ、だから、急に動くなって!」
あくまでも幽霊に包まれているだけである。
「あ、クソ、西園寺の奴、お前の体にこっそり聖水塗りやがったな!?お前の体の内側から、嫌な気を感じる!」
あー、さっきのペロペロキャンディだろうか。ユミコならあれに変なものを仕込んでいてもおかしくない。
「だ、ダメだ、このままじゃ逝っちゃう!昇天しちゃうぅ!」
女っぽい声出すな!無駄に長生きしてる分、お前そういうところ本気で色っぽいんだからな!
「うるさい!もう奥までつながってるんだから、お前の思考がガンガン流れ込んでくるんだよ!一番奥でっ!そんなに思考をだしたららめぇ!」
ぐはぁっ!
俺は吐血せんばかりの勢いで崩れる。理由?察せ。
「うう、汚されてしまった……私は汚されてしまった……。」
俺が崩れ落ちることで一気に体勢が変わり、憑依が解けてしまったユウリが、珍しくさめざめと泣いている。
「なあ、その……悪かったって。」
「それじゃ……責任……とってくれるか……?」
「へ、へっ?」
な、な、なんの責任でしょうかねー。ワカラナイナー。
「だから、責任を取って、ウチの……やっぱ何でもない!」
どうしよう、めちゃくちゃ気になる。悪い意味で。え、これ、責任ってやっぱそういうことなの!?
「む、無実だ!俺は何もしていない!というか、ここに拉致られてお前に取りつかれそうになっただけだろ!」
「あそこまでしておいてまだ言い逃れしようとするか!情けない!」
「情けなくていいよ!一方的にやられたことで責任なんて取ってられない!」
「そんな!責任取れないのにあんなことしたのか!」
どうしよう、なんか今日、みんなやたら女子っぽくないか?ユウリとか、顔赤くほてってて、すげー美人だし。普段のオラオラ系の雰囲気出してよ。怖ければ女子として意識とかしないしできないからさ。
「お、俺まだ15だし!」
「もう16になるだろうが!何のためのこの会だと思ってやがる!」
俺お前に誕生日教えたっけ?って、そうじゃなくて!
「そもそも、日本じゃ男は18になるまで結婚できないだろうが!」
「うるせえ!こないだ女子も18まで引き上げられたし、ウチは永遠の17歳だわ!」
「それなら一生独身で過ごせや!」
「残念でしたー、もう一生は終わってますー!っていうか、そんなにウチと結婚したいのか?」
すげえ自虐ネタ……って、は?
「いや、責任って結婚ってことじゃないの?」
「はぁ?何バカなこと言ってんの?んなわけねーじゃん。」
「でも、普通こういう時の責任って……。」
「幽霊の霊的な力を弱めさせたら、回復するまでの間、陰陽師とか神父とかに払われないように守ってくれ、って話だけど?」
は?
「じゃあ、さっき言いよどんだのは?」
「回復するまでの期間、お前と24時間一緒とか、心臓が持たねえなって。」
こういうのをズバッと言われるのに弱いんだよなぁ……。
「じゃあ、単に恥ずかしかっただけ?」
「そうだよ。好きな奴とずっといたら恥ずかしい。当然だろ。」
あー、やめろって、顔を赤らめるな。腕を組むな。視線を逸らすなって。可愛いんだからさ。
「と、とにかくだ。ウチは今霊的に弱い状態なんだから、なんかあったら守ってくれよ?」
「わかったよ、しゃーねーな。」
「その必要はない。」
うおっ、ユミコ!?
「天井。」
隠れてたのか。
「西園寺グループが誓って全力であなたを守る。」
「……何のつもりだ。霊なんかに貸しを作ってもいいことないだろ。」
「いや、隠れて同行するつもりはない。だけど、万が一のために旦那様は私が個人的に保護をする。そして愛をはぐくむ。」
お、珍しい長ゼリフ!じゃなくて、最後なんつった。
「旦那様は難聴系?」
「違う、そうじゃなくて自分の耳を疑う……というか信じたくない系かな。」
「そうだぞ、その話だと、カヅキはうちの回復までお前のもとにいるってことになっちゃうじゃないか。」
「そのつもりで言ったんだけど?」
「いや、俺、学校行かないと留年するし。」
「以降の学費は西園寺グループが……。」
「そういう問題じゃなくてだな。」
「カヅキは、留年したくないんだと思うぞ。ていうか、二学期にして留年が確定するってメンタル的にキツすぎるし。」
なんかやたら実感のこもったユウリが俺の気持ちを代弁してくれる。
「そうそう。だから、俺は別に護衛とかいらないよ。ヤバそうならシオリさんが助けてくれると思ったし。」
俺がそういうと、ユミコは押し黙った。
「そういうなら、旦那様の護衛は諦める。」
「よしよし、いい子だ。」
なんかガキっぽいんだよな。
「聞こえてる。心。」
すみません、ほんと許して。
ダムンッッッ!
どこか遠くから音が聞こえた。
「もしかしたら早速ウチを何者かが襲いに来たのかも。」
「さっき誓ったから仕方ない。行こう。」
ユウリとユミコは二人でそそくさと逃げていった。今の音と、何者かの気配は、なんか違う気がするが、まあいいか。話が進まないし。
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