男子校に入学したはずなのに、フラグ整理の会がある件:ユミコと書道と茶道
レイナがさったあと、ユミコたちが来た。なぜ「たち」かって?ユミコの周りに浮かぶ無数の道具たちが同伴してきたからである。
「旦那様。今日はお招きいただき……」
「そういうの良いから!招いてもらったの俺だし!」
最初は面倒だったが、みんなの意外な一面が次々に見れて、少しは嬉しかったりもする。
「じゃあ、まず書道。」
相変わらず口数は少ないものの、何を言いたいかはわかる。こいつとは最初から、何となく呼吸が合うんだよな。
「それで、懐かしの変な栞でも書くか?」
最近はドタバタしすぎてユウキが本を読んでいるところをなかなか見ないが、あいつの持っている変な(ユミコが書いた)栞はインパクトが強すぎて覚えている。
「デート中にほかの女の事?」
「デートじゃねーよ。」
「旦那の浮気を許すのもまた妻の仕事……。」
もうツッコむのはやめよう。こっちが疲れてくるだけだし、気にしても仕方ない。こいつがおかしいのは元からだ。
「じゃあ、今日は何書くんだ?」
強引に話を戻させてもらおう。それが一番だ。
「今日のお題は『旦那様ラブストーリー』とかどう?」
非倫理的な単語を生み出してるんじゃないよ。
「もう少し、メンタル的にも世間体的にもマイルドな奴ないかな?」
「ない。」
「少なくとも、倫理感あふれると言わなくても、これじゃ単なる不倫みたいじゃん。」
「私は正妻。」
「いや、誰を正妻にした記憶もないけどさ。」
「ツンデレ?」
「いや、そういうのじゃなくて!」
さっきレイナにも同じことを言われたばかりだ。
「だから、デート中に……」
「デートじゃねーよ。あと、人の心をかってに読むのはアウトじゃねーのかよ。」
「これはデフォルトの能力。心臓を動かすのと一緒。」
止めようとしても止められないってことか。
「そうそう。」
「まあ……なら仕方ないか。」
少し申し訳ないことを言った。きっと、能力のせいで苦労することもあっただろうに。
「旦那様は少し、ヒトを疑うことを覚えた方がいい。」
え?今の嘘!?いや、ユミコの顔的に本当か?わからん。
「今日は、尺の都合で墨をすらず、百均の墨汁を使います。」
「強引にでも話を進めるのね……いや、良いけどさ。」
「筆はこちら。」
すげえ高そうな筆だな……百均の墨汁なんてつけちゃって大丈夫なのだろうか。
「大丈夫。」
「意外と安物なのか?」
「一本20億円。」
もはやギャグみたいな値段設定だな。これ、作ったやつも値付けした奴も、買ったやつも、全員バカだろ。
「墨汁も、一滴100円。」
一滴が0.05mlだから、500mlで100万円……なーんだ安いじゃん。
……金銭感覚がバグってきている気がする。
「準備ができたら、超能力で書道して完成。」
「それはもはや書の道もクソもあったもんじゃなくないか?」
「尺の都合上仕方ない。」
「最近話がメタすぎるだろ……作者の生活にまで干渉しちゃって……。」
「あれが頑張れば問題ない。」
俺に被害が及ばないならまあいいか。
「カヅキも書いて。」
「あー、わかった。」
「指紋が付かないように、触らず。」
「俺は一休さんか何かかな?」
しかも、同じことを言われた一休さんは、触らずにお椀の中身を取り換えるように要求していたけど、こいつは超能力があるから触らずにできちゃうんだよなぁ。
「意気地なし。」
「何がだよ。」
「次は茶道。」
ユミコの周りで茶道の道具がふわふわ舞い、お茶を飛ばしたりなんなりしてあっという間にお茶が出来上がる。
「さあ、召し上がれ。」
なんていうインスタント茶道……。
「ていうか、書道と言い茶道といい、なんでこんなに多芸なんだ?」
「西園寺家の勤め。母が教えてくれた。」
ユミコのお母さん……あー、メイド喫茶の店長か。
「あのひとそんなに厳しいタイプだったっけ?」
「父も。」
なるほど、こいつはこいつで大変な人生を送ってきたのか、おすそ分けどうもありがとう。
超能力でふよふよ浮いてきた茶菓子をかじり、お茶をすする。
「どうでもいいけど、こんなマイルドなお茶会でよかったのか?」
こいつのことだから、超能力で怪獣を倒そうとか言いだすかと思ったのに。
「私をなんだと思ってるの?」
ヤバい奴だろ。
「なんとも思ってないぞ。」
「嘘が下手。」
はい、すみません。
「そういや、話変わるけど、ユミコもお前のお母さんも、髪が紫色なのってなんかあるのか?」
「超能力性の遺伝。」
「てことは、超能力が使える奴は大体面白い色をしてるのか。」
「失礼。だけど、まあそう。たまに黒に染めてる人もいる。」
「もしかして、最近街中に緑とか赤の髪の人がいるのは……。」
「それはヤンキー。」
「アオイの髪の色が金色なのは……。」
「あれはファッション。」
「レイナの髪の色がおかしいのは……。」
「頭がおかしい。」
レイナに対して辛辣すぎるだろ。
「あの子実は、今回のルールを破った。」
「ルール?なんか、カオリも言っていたけど、なんかあるのか?」
「女子側から服を脱いではいけない。」
本当にキャバクラみたいなルール作ってるな。ていうか、その理論だと、男子側、つまり、俺が服を脱ぐ、あるいは脱がす行為はセーフみたいな扱いになりません?
「そう。」
「いやいや、俺別にそんな怪しい会に呼ばれた記憶はないんだけど。」
「ポロリはお約束だけど、脱いだらアウト。」
「ごめん、どっちもアウトにしか聞こえないのは俺の耳がおかしいわけじゃないと思う。」
「ねえ旦那様……。」
「はい、何でございましょう。」
「しゃぶる?」
何をだよ。
「それはもちろん……。」
「ダメだ、言うな!それを言ったら健全作品として世に公開できなくなる!」
「ペロペロキャンディ。」
さっきのレイナの話と若干ネタかぶってるぞコラ。
「じゃあ……もらおうかな?」
「はいどうぞ。」
人の頭ぐらいのサイズの飴を渡される。何年間ペロペロすればいいんだよ。
「それで、旦那様はなんでいうなって言ったの?」
「いや……それは……。」
「旦那様はムッツリ。」
「ていうか、旦那様じゃねーって何回言えば通じるんだよ。」
「ごまかすのが下手。」
そうだこいつ心読めるんだ。
「いや……その……。」
「それを言ったら健全作品じゃなくなる。」
じゃあ言わせんなよ。
「ほら、話の長さ的にお前の出番そろそろ終わりなんだろ。出てった出てった。」
「急に話がメタい。」
家主を追い払う躊躇……などは一切なく、さっさと出ていってもらった。
ちなみに、ペロペロキャンディは歯を一本犠牲にすべてかみ砕いておいしくいただいた。
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