男子校に入学したはずなのに、謎の集まりに招待された件

 さて、読まずに捨てようとした招待状だが、そのままゴミ箱に入れるのには本能が何か警告したので、ゆっくりと封筒を開けてみる。


 中には、普通の手紙と一緒に、大量の白い粉が入っていた。レイナは、俺を傷つけることは絶対にしないので、危ない薬ではないはずだ。


「シオリおねーちゃん、なめてみてー。」


 それでも怖い物は怖いので、おねーちゃん呼びするとなんでもやってくれるシオリさんにお願いしよう。レイナのことだから、媚薬ぐらいは入れそうだし。


「お姉ちゃんと呼ばれたからには張り切っちゃうぞー、うひょーっ!ぺろぺろーっ!」


「ふんっ!」


 舌から最初に突っ込んできたシオリさんをかわし、口に一応手紙を抜いた封筒を力技で叩き込む。


「あまーい!」


 シオリさんの顔が淫らに崩れる。この人美形のはずなのに、笑顔とかを見ていると無性に逃げるか殴るかしたくなるのは、日ごろの行いのせいなのだろうか。


「『カヅキお姉様へ。最初に、このお手紙が捨てられたときに、皆さんが取り出すよう、砂糖を仕込んだのをお許しください。たくさんの虫が出てきたら、取り出すしかないと考えましたわ。』」


 フウリさんが俺の持っていたレイナからの手紙を読み上げる。


 あいつ……ブッ〇してやる。あくまでも借家なんだからな、ここは。


「本題はなんだ?フウリ、読んでくれ。」


 カオリが続きを促す。


「『最近、お姉様には大変お世話になっており、そのお礼にいつぞやの遊園地みたいに一人一人の時間を作ることにいたしました。もちろん、カオリお姉様、フウリ様にもご用意してございます。』」


「レ、レイナちゅわぁん!?私は!?」


「『なお、シオリお姉様には金星の方々がワープゲートによるランダムな宇宙の旅をご用意したそうです。』」


「なあんだ、ならいっか!」


 それ、人類が生きていける環境なんだろうか。


 まあ、シオリさんは9割以上人類やめてるからいいか。


「『さて、この手紙を見て、カヅキお姉さまはゲェって顔をなさっているでしょう。』」


 大当たりだよ。分かってるならやるなっつうの。


「『しかし、このままだと、偏っていて出演のないヒロインが好きな読者様が離れていってしまう、あるいは、誰がフラグが立っているのかわからなくなってしまうという事態が起きます。』」


 急に話がゴリゴリにメタくなった……。


「『ということでここいらで一度、女子としての直接対決をしたいなと考えています。よろしくお願いします。


 追伸。当然のごとくカヅキお姉様はいらっしゃらないと思うので、その際は、カオリお姉様、よろしくお願いします。』とのことです。」


 なんだ。なら、カオリに行かせりゃいいじゃん。


「じゃあ俺行かねーわ。カオリよろしく。」


 俺が言うと、


「承知つかまつった!シオリさん!」


「ホイサ!」


「どっこいしょっと!」


 見事な息の合い方で、俺のことをコンマ数秒で縛り上げた。


 ……ん?


「いや、何してるの?」


「拉致監禁の準備だけど。」


 シオリさんが部屋の奥から寝袋とハンカチを持ってくる。


「はーい、じゃあショタ君、逝きますよぉ!吸ってー、吐いてー。また吸ってー。ほらほら、もっと吸ってー!」


 う、ヤバい、ハンカチをかがされたとたん、眠気が……。





 思い出の、眠らせてからの、拉致監禁。

 もちろん犯罪、もみ消されるかな。


 あちこちで字を余らせつつ、目を覚ました俺は辞世の句を詠んだ。いや、そういうもんじゃないけどさ。辞世の句って。


「もーにん。」


 やっぱりユミコか。この手口。


「手口とは失礼。まるで犯罪者。」


「いや、これはどこからどう見ても犯罪だろ。」


「前科ないから問題ない。」


 やっぱりもみ消されるのか。


「それで、フラグ整理の会はお前が最初か?」


「私は今は司会。」


 本当に、こいつらのこういうところの統率力は恐ろしいものがある。


「拉致されたのは久しぶりだから聞いておきたいんだけど、ここどこ?」


「私の家。」


 なるほど、広くて、人がすくなく、声が外に出ない。拉致に絶好のポイントだな。


 当然と言えば当然だが、拉致されると怖い。だが、今は何より西園寺グループが怖い。


「饅頭怖い?」


「違う、そうじゃない。」


 それで、最初は誰のところに連れていかれるのだろう。比較的、労力の少なくて済むやつのがいいか……?いや、そういうやつは途中途中に挟んでくれた方が俺の体力も持つだろうか。明日部活だし。


「ちなみに、諸事情により、女装で参加のこと。」


 今気が付いたが、いつの間にか着替えさせられている。もはや着慣れた制服だ。


「……ん?もしかしてこれ、シオリさんに着替えさせたのか?」


 体に悪寒が走る。あと虫唾も。俺の貞操、無事だよな?


「当然無事。恥ずかしくないように、妹さんを呼んだ。」


 何してくれちゃってるの!?


 ユイからしたら、知らないお姉さんにいきなり呼ばれて、寝ている兄を女装させられたわけだろ?あれはあれでよく動いたな……。


「それでは、本日のプログラム。」


 毎日一話更新なので、決して本日では終わらないが、そうじゃないプログラムを渡された。


「なになに……。

『1,カオリとカヅキ、思い出の回想

 2,ユウキからの重大発表

 3,アオイの最近の不満

 4,レイナによるペロペロマッサージ

 5,ユミコと書道と茶道

 6,ユウリの憑依体験

 7,ヒカルと勉強会

 8,ルナとの異文化交流

 9,セレスの魔法講座

 10,アヤカと百合のお時間

 11,マキの進路相談

 12,フウリと歴史のお勉強』」


 ……どこからツッコもうか。


「どこからでもどうぞ。」


「じゃあとりあえず……やる期間長すぎだろアホ作者!」


 こんなことやっていたら、まるで……俺が……女たらしみたいじゃないか!


「間違ってない。」


「いいや、俺は女嫌い系主人公を目指してるんだ!これじゃハーレムだぞ!」


「チートがなくてどんまい。」


 そういう問題じゃないし、チートとかいらない!いややっぱほしい!現実逃避のチートとか!


「それに、この期間は作者に一日に二回投稿させる。」


 鬼か。


「間に合わなかったらセメントに詰めてマリアナ海溝。」


 せめて東京湾にしてやれよ。どう考えてもオーバーキルだろ。今回の話メタすぎるし、このままじゃいろいろヤバいだろ。


「まあ、ガンバ。」


 がんばるのは俺じゃないけどな。

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