男子校に入学したはずなのに、文化祭すらもカオスな件:二日目③
「え、えっと、シオリさん?いくら何でも、そういうワガママは困るんですけど……。」
俺の嫌な予感は、毎回最悪の形でかなえてくれるのが麗しきこの世界である。
「いいじゃんマキちゃん!」
「いや、それはその、規則ですから……。」
そう、シオリさんがたかっているのは、我らがマンボウメンタルな教師、一ノ瀬マキ先生である。
「なんだかんだ言って、いつも願いをかなえてくれる、そんなマキちゃんが好きだぞ?」
「と、というかあなたは仮にも私の後輩なんですから、少しはおとなしくですね……。」
そういえば一ノ瀬先生はこの学校に通っていたころ、部活などには入っていなかったらしいが、シオリさんとはどこで知り合ったんだろう。
「おねがーい、チューしちゃうぞー?」
「や、やめてください!生徒が見てますから!」
さすがに先生がかわいそうになってきたので、止めに入る。
「シ、シオリさん。それぐらいでいいですよ。もう諦めますから!」
「諦めたらそこで試合終了だぞ、ショタ君!」
「ショタ君?」
ちょ、先生が余計なことに気が付いちゃうでしょうが。これ以上俺の秘密を知る人は増やしたくない。
「いや、そんなことより!その、試合が終了でいいって言ってるんですよ!」
「後夜祭が……したいです……!」
「したいですけど、先生やシオリさんに迷惑はかけたくないので!」
やいのやいの言っていると、いつの間にかどこかへと行ってしまっていたユウキとアオイが戻ってきた。
「おい、カヅキ!チケット譲ってくれるって人が現れたぞ!」
「これで一緒に中に入れるわ!」
二人が連れてきたのは……ケータイをいじっているレイナだった。
「お姉様ぁ!チケットの貢ぎ物ですわぁ!」
え、ちょっと待って?これって俺がカツアゲしてるみたいじゃない?
「いや、さすがに、いくらお前が相手でも後夜祭のチケットを奪い取るのは気が引けるんだが。」
なにより、そんなことをしていると、ユミコの言う「ヒモの旦那様ルート」が現実に見えてきて絶賛最悪である。
「大丈夫ですわぁ!ワタクシは何より、お姉さまの幸せが一番ですものぉ!」
違う、そういう問題ではない。
「いや、申し訳ないからいいって。」
俺が断るも、
「何で断るのよ?」
「せっかくだからもらいなって。」
ユウキもアオイも鬼畜のような追い打ちをかけてくる。二人とも、なにもそんなに鬼のようなことを言わなくてもいいんじゃないか?
「お姉様、何か勘違いしていませんことぉ?」
いや、ここで「お姉さまの幸せはワタクシの幸せですわぁ!」とか言われても申し訳ないだけなんだが。
「ワタクシ、チケットは二枚持っていますのよぉ?」
「へっ?」
「どこかのアホな幽霊が、自分も一席ないと……とかいって、チケットを取ってしまいましたのぉ!」
なるほど、ユウリには今回助けられてばかりだな。
「アホな幽霊で悪かったな!」
ユウリはずっとレイナの中で黙っていたのか、声を上げる。なぜか幽霊慣れしている一ノ瀬先生含め、みんな驚かされた。
「じゃ、じゃあ、とにかく一枚もらおうかな。ユウリのおかげで助かったよ。ありがとう。」
何はともあれお礼は言わせてもらおう。
「ちなみに、このチケットには、出場必須の百合カップルコンテストのチケットが強制的についてきますのぉ!」
レイナの追加情報、かなりいらないな。
「ユウリの方についてきているなら、レイナのチケットをくださいな。」
「世の中、そんなに甘くないですわよぉ!」
ですよねぇ。
「ということで、お姉様にはカップルの相手として、女の子を一人、一緒に連れて壇上へ上がってもらいますのぉ!」
「最近、カヅキの煮え切らない態度にもイラついてきたころだしな。」
「それもいいかもしれないわね。」
なぜかアオイとユウキも乗り気だ。
「それって、誰か連れていないとだめなのか?」
「当然ですわぁ!十何年か前、誰も連れずに壇上に上がった人の取り合いで一度体育館がつぶれたらしいですわぁ!
あれはこの世の終わりかと思わさせられたよ、ほんとに。」
レイナの飛んでも情報を、ユウリが証言してくれちゃってる。
「ぎゃ、逆に、お前ら全員をつれていくっていうのはどうなんだ?アオイもユウキもレイナも、ここにはいないけどユミコとかヒカルせんぱ……ヒカルも連れてさ。」
「いいわけないですわぁ!特にヒカル先輩なんてハーレムに加えたら、ファンクラブの方々から命を狙われますわよぉ!」
ラブコメの世界線じゃないんだから、そんな過激なファンクラブがあってたまるか。
「そろそろ後夜祭の開幕時間ですわよぉ!」
「お師匠様を呼んできたわ!」
「こっちも、ピカピカ捕まえたぜ!」
ユウキもアオイも誰かにケータイで連絡していると思ったら、この人たち呼んでたのかよ。なんか大ごとになってきているな……。
「こういう時は、幼馴染に代わりを頼むのが筋ってもんじゃないかね?」
「実は二人にこの話をされたときから、カオリも呼んでおきましたのぉ!こうなることは予測済みですわぁ!」
登場の時にケータイをいじくっていた伏線、こんな微妙なところで回収してきたか……。
「「「さあ、カヅキ?百合カップルコンテスト、誰と出るの!?」」」
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