男子校に入学したはずなのに、お見舞いに来るのは女子だけな件
「だから俺はあんなにも休みたいって言ったんだ。」
「いや、疲れているとは言っていたが、休みたいとは言ってなかったよな。」
「似たようなもんだしふつう休ませるだろ、どちらにせよ。」
そう、俺は合宿翌日、熱を出して寝込んでいた。
「なあカヅキ、39.6℃もあるぞ、大丈夫か?」
「その数字見て大丈夫かどうかの安否を先に取る、お前の頭が大丈夫か?」
カオリの暴力以外の原因でめまいがするのはいつ以来だろうか。思い出せないのは、俺が滅多に熱を出さないこと以外にも必ず原因があるはずだ。
「シュガー!お見舞いに来たよ!」
こういう時の行動がいち早いのがヒカル先輩。たいてい、ありがた迷惑な何かをしてくれる人でもある。
「いや、今回は本当にやばいんでお見舞いとかいいっす。」
「でも、風邪に効くっていう、ネギ持ってきたよ?」
あーこれあかんヤツ。
「さあカヅキ、尻を出せ!」
「やっぱりそっちだよな……。首に巻くんじゃだめ?」
「尻の方が直接吸引感があって効果ありそうだろ!」
「ここは、持ってきてくれたヒカル先輩に用途を聞こう。」
「一理あるな。」
珍しくカオリが食い下がる……というのも、こう見えてカオリは先輩に弱いのだ。不審者と勘違いしたシオリさんには殴りかかっていたが。
「二人とも、何言ってるの?」
「「えっ?」」
ヒカル先輩がきょとんとこちらを見る。
「ネギって、突っ込むものでしょ?」
「さあカヅキ、尻を……!」
「喉に。」
「「喉に!?」」
さすがに聞いたことない。確かに一撃必殺だとは思うが……。
俺もカオリも呆然とする中、平然とヒカル先輩だけが
「じゃあ、シュガー、ブリッジして!」
とせかしてくる。この目、ガチで純粋な瞳じゃねえか。誰だこの人にそんなとんでもない話吹き込んだの。
「あー、ヒカルちゃん、さすがにストップ。」
トイレ型エレベーターから出てきたシオリさんが待ったをかける。やっぱりあんたか犯人。
「シオリ先輩!」
「実は、カクカクシカジカ……。」
俺の命の問題を8文字で説明しないで欲しい。
「婚約者登場。」
今度はどちら様だよ。いや、知ってるけど。
「最近、風邪を治す能力を身につけた。」
どーせ、わーってなって、ぎゃーってなって、悪化するオチが見えているんだが……。
「助手はユウキ。」
「最近出番少ないから頑張るわよ。」
「メス」
「はい。」
させないよ?
「超能力ってなんだか知ってる?」
「ユウキ、説明。」
「はい、お師匠様。超能力というのは、本来は人間が関与することの出来ない世界への直接干渉を可能とした第二種特殊能力の事で、現在まで能力原因の解明にまで至っておりませんが実際の所は脳から常に発生させている脳波が他の人間に比べ約一万倍ほども強いと言われており、その力は世界超能力連合の第128回総会で……。」
「わかった、もういい、そうじゃなくて。」
やばい、頭がボーッとしてきた。落ち着け、落ち着くんだ。
「超能力での治癒というのはだな……。」
「はい、治った。」
あれ、この、ぼーっとするのって超能力の影響だったの?
「お、おう。ありがとう。」
「副作用で3日ほど熱が出るらしいわ。お大事にね。」
あー、それは治ったとは言わないよね。
ユミコとユウキ、ヒカル先輩が帰り、俺とカオリとシオリさんだけになった頃。
ピンポーン。
「悪い、カオリ、出てくれないか。」
「はいはい。どちら様……マジで?」
その顔を見たカオリがこちらに飛んでくる。
「少々お待ちくださーい。」
あれはよそ行きのカオリだ。ということは……。
「カヅキ、女装しろ。」
何となくそんな気はしてた。
「誰が来たの?一ノ瀬先生?リラ?」
「メイドの人。」
ユリアさん……が来るならユウキが言ってくれるはずだから、アヤカさんかよ。なんでウチ知ってんの。
「フヒュスー、フヒュスー。」
また犯人こいつか。ていうか口で言うもんじゃないですシオリさん。
「具合悪いから帰ってもらって。」
「ノコギリ持ってるけど?」
ということで俺は女装した。
「はーい、じゃあ、お掃除、料理、洗濯やっちゃいますからねー。あれ?男物のパンツ!またシオリさん男装してたんですかぁ?」
「いや、それはカヅもごっ。」
「あー、はいはいそうなんですよ、カヅキの体にも負担にならないように無理せずお早めにー。」
パンツが見つかった時にはヒヤッとしたが、アヤカさんってこの人、今まで出会った人の中でまさかの常識枠?
「それが終わったらお口で熱測りますからねー、もちろんマウストゥーマウス!」
そんなことはなかった。
「じゃあ、今日はありがとうございましたー!」
「こちらこそありがとうございましたー!」
でも、家事は一番この人が上手かった。
「この人の豚汁うめぇな。」
「はい、精進します。」
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