男子校に入学したはずなのに、合宿の後に花火大会な件

 皆さんは、友人と花火大会というものをしたことがあるだろうか。


「見て見てシュガー!打ち上げ花火バズーカ!」


 恥ずかしながら、俺はいままで、こういうのに誘われた時にはたいていそこに女子もいたからずっと来ていなかった。


「おいカヅキ!シオリさんからのプレゼント!大砲型花火だって!」


 だが、来てみると意外と楽しいもんじゃないか。


「超能力式花火光線。」


 なんだか、青春って感じがする。


「カヅキ!見なさいよ!レーザー花火よ!」


 まるで、少し甘酸っぱい思い出かのような。


「カヅキ、見て。超激辛食べる花火ですって!」


「なあ、みんな、俺が思いをはせているところに邪魔しないでくれない?」


 バズーカだの大砲だの、光線だのレーザーだの。しまいには食えって、風情のかけらもないな。


「どうしたんだ、カヅキ?」


 アオイが声をかけてきた。


「疲れているんだ、動きすぎて。」


 そう、今日は合宿最終日。……ということで花火をしようというのはわかったが、それにしてもなぜこのメンツが集まると普通に花火一つできないのだろう。女装している俺もたいがいだけどさ。


「カヅキお姉様ぁ!お疲れかと思って、疲れを吹き飛ばしてくれる特別ゲストをお呼びしていますわぁ!

 いいか、うちは止めたからな。大事なことだから二回は言うぞ。うちは止めたからな。」


 その言葉とともにレイナが指さす方を見ると……!


「ロケット!?」


「いや、飛行機か!?」


「ありゃミサイルでしょ!」


 とにかく、それっぽいものが飛んでくる。当然、近づくにつれ轟音が聞こえてきて、みんなもパニックになる。まっすぐこっちに突っ込んでくるぞ!

 しかし、そのロケットのようなものは、俺たちより少し離れた上空で大爆発した。


「シオリの科学は世界一ぃ!」


 中からは、タンデムでグライダーに乗ってくる、シオリさんと、なぜかアヤカさんの姿が。


 バックでは、爆散したロケットのかけら一つ一つが花火になっている。


「もしかしてゲストって……。」


「はいぃ!シオリ様とアヤカ様ですわぁ!」


 あーもう終わったな、この花火大会。


「うふふふふふふ、最近会ってなかったからおねーさん心配したぞぉ!」


 とアヤカさん。


「実はついてきていたんだけどねぇ!こっそり一回帰って、ロケット花火でお迎えに来たよ!」


 とシオリさん。っていうか、ロケット花火って違くね?


「シオリ先輩!?」


 反応したのはボーイッシュ先輩だ。


「やあやあ元気にしていたかい?」


「おかげさまで……。ご無沙汰しております。」


「いつもみたいにツッコんでくれてもいいんだぞ?」


 もしかして、前々回のお話に出てきた迷惑な先輩って……。


「話がメタい。」


 ユミコに叱られた。


「あなた、もしかしてあの時の!?」


 今度は一ノ瀬先生が反応する。


「?」


 シオリさんに心当たりはないようだが。


「出ていかなくていいんですのぉ?

 いいんだよ。もとはといえばうちが見捨てたんだ。

 うじうじするユウリは気持ち悪いですわぁ。

 仕方ねえなあ、行けばいいんだろ、行けば。」


 なんかレイナとユウリが問答をした後、そちらへ走っていく。なんか、俺の知らないところでも繋がってるとは、世界は狭いな。

 こうして、合宿最終日の夜は更けていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る