男子校に入学したはずなのに、先輩に白いのを搾り取られる件
事の発端は、俺が疲れて自分の布団に倒れ込んだところから始まる。
俺が倒れ込んだことにより、少し浴衣がはだけて、普段はユミコに絶対見せない背中を見せてしまったのだ。
最近、ストレス過多なのかニキビが増えており、その侵食は背中にも及んでいた。
「ニキビ発見。」
「ニキビぐらい誰だってあるだろ。2次元に生きるキャラじゃねーんだぞ。」
俺の布団は、もはや落ち着かないぐらいだだっ広い部屋のど真ん中にユミコの布団と密着して敷かれていた。
そのため、まじまじと観察されてしまったのだ。
「毎度恒例、ニキビをかけたじゃんけん大会」
毎度でもねぇしなんだよその大会。
「やることは簡単。ジャンケンに勝つごとに、相手のニキビの周りにこの超強力洗濯バサミを挟める。」
男女問わず思春期の人間にはダブルで痛いペナルティだ。
「……仕方ない。やってやるよ。」
そして、この挑戦を受けたことを、じゃんけんをする直前に後悔した。こいつ、俺が何出すかわかるんじゃん。超能力で。
俺の背中はたちまち洗濯バサミだらけになった。この洗濯バサミ、ニキビ関係なくクソ痛い。
「そろそろ、かな?」
未だにひとつも洗濯バサミがつかないユミコが呟く。
「や、やめろユミコ、それ以上激しくされると、白いのが出ちゃう!」
「やめない。」
「だ、だめだ、それ以上刺激を与えるな!」
「先に出したほうが負け。」
「や、やめ、もう、で、出ちゃう、あーっ!」
ブチャッ……。
「汚い。」
「こんな無理やり……ひどい!」
俺が汚された気分でさめざめと泣いていると、ドアがバーン!カオリがズーン!俺がズドーン!
……この語彙力で説明できてしまういつもの流れだった。
「カヅキ、お前、ユミコが好きなのか?」
「男子一人苦労してないか心配に思って見に来てみたらユミコとシュガーがセックホガモガモガ。」
「ヒカル先輩!そういうこと言わないでください!それとカヅキ!失望したわ!」
「私が告白を断られた理由、なんでしたっけ?」
「ワタクシは妾で構いませんが、それでも愛でて頂きたいですわぁ!」
どうしよう、ニキビ潰されゲームやっていたとか口が裂けても言えない。
「旦那様の初めては貰った!」
ユミコがドヤ顔でニヤァと笑う。笑うでない、笑うでない。
「ふざけるな!それは幼なじみのもんだ!」
「いや、親友のものだね。」
「アオイ、カヅキのことを好きな親友は1人だけではないわよ!」
「私はシュガーが幸せであればなんでもいいと思うけど?」
「その通り。」
「お姉様に愛されれば全てよしですわぁ!」
「ていうかそもそも、高校生でそんなことするな汚らわしい!」
ということで、枕投げで決着を付けることになった。もうなにがなんだか。
ということで、もクソも無いと思うが。
「まずは東軍!カオリ、アオイ、ユウキ、ルナ!」
騒ぎを聞き付けてやってきて、そのまま審判にされたボーイッシュ先輩がそう叫ぶ。
「続いて西軍!カヅキ、ユミコ、レイナ、ヒカル!リザーバーにユウリ!……ユウリって誰?」
「いいから始めろや。」
「!?」
「いまのはユウリのおふざけですわぁ!おきになさらずぅ。」
「そ、そうか。世の中には色んな人がいるからな。」
自分もマイノリティーだからか、レイナのことは多重人格かなにかと勘違いしたらしい。まぁ、ヤンデレって意味ではあながち間違っちゃいないけど。
「とにかく、それでは、両者位置について!始めっ!」
その掛け声の元、枕がとびかう。
ふつう、枕投げといえばワーワーやって楽しむものだ。が、今回は女性陣のやる気が違う。
「はっ!」
超能力でいくつも枕を同時に浮かせては投げまくるユミコ、どこから取り出したのか分からない、懐かしの柳葉包丁で飛んでくる枕を粉々に切り裂くレイナが西軍の主力だ。
「ドゴラブラッシャアァ!」
もはやどっかの部族の言語かのような気合いの声を上げながら、カオリが枕を投げる。羽が詰まっているはずの枕が鉄筋コンクリートに突き刺さる原理を教えて欲しい。
「せいっ!」
ルナはレーザー使って枕を打ち出している。もしかして、カオリやらルナやらより、枕がいちばん強いのではないだろうか?
「ぴぎゃっ!」
最初にK.O.したのは、カオリからの流れ弾に当たったレイナだ。
「私にかまわず進んでくださいですわぁ!
よっしゃ、レイナがオチたからウチの出番だぜ!」
すぐにユウリが受け継いだが、そこにルナのレーザー枕が当たり、確実に仕留められた。
「お、お師匠さぶふっ!」
ユミコの複数枕同時攻撃によって、運動はあまり得意でないユウキが、
「ひどいよブルー!」
逆に、珍しく普通の枕投げが成立していたアオイVSヒカル先輩はアオイが勝利したようだ。
しかし残りは超人大戦の様相を呈しているため、アオイはその場でリタイア。俺もリタイアしていい?
「ウォール・ユミコ。」
「壁、だとっ!?」
ユミコが枕で壁を作り、カオリが投げた枕を包み込むようにして受け止めるようになった。
受け止めた枕は壁として使われるので、あっという間に弾切れになったカオリは、それらすべてを使ったユミコの同時攻撃によって枕に封印された。
「超能力切れ。」
お母さんと違って、まだまだ超能力をたくさんは使えないらしいユミコが、カオリを封印してバタリと倒れる。
「まさか最後にあんたが立ちふさがるとはね。」
「因縁の対決ってやつか。」
最後に残ったのは、俺とルナだ。
「まだあってからそんなに月日が経ってないけどね。」
「そんなことはどうでもいい。これが最後の勝負。よもや、異論はないな。」
「ええ。これで決着よ。」
「はあああああああ!」
「やあああああああ!」
俺らが口上を交わし、最後の戦いが始まる、その時だった。
スパン、スパン!
俺の頭、いや、顎に、的確な威力、的確な速度で枕が当てられる。
ルナも俺と同じく、目を見開いて吹き飛んでいる。
枕が飛んできた方は……。
「ボーイッシュ先輩……。」
「……それだよ。私は、君にいつまでも名前を覚えてもらえなかった。まるで、作者が名前を考えていなかったキャラのように。
それに私は枕投げのワールドチャンピオンなんだ。君らの枕投げは美しくない。
これでお別れだ。」
そんな……。バカ……な……。
去っていくボーイッシュ先輩の後姿を見送りつつ、視界はどんどん暗くなっていく。
そして誰もいなくなった。
ところで、いつまでこのバトル漫画調を続けるべきなのだろうか。
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