男子校に入学したはずなのに、男子高校生に会うのに緊張する件
「えっと、どういうこと?」
「だからさ、もう一人の『佐藤カヅキ』の家は、親が過保護だから、男子に会うことができないんだって。」
「男子校に通っているのに?」
「そうそう。」
この会話がなされたのは、なんか少年漫画風に「みんなで会いに行こう」的な雰囲気の黒歴史を作ってから約3日ほど後のことだった。
放課後に話がしたいとカオリが言い出したから、その時点で何となく微妙な予感はしていたが、男子校に通っている女子の親がそんなことを言い出すとは、かなり想定外……。
わざわざ家に帰らずに聞かされたのは、みんなを呼べるほどうちが広くないからだ。
ていうかどうすればいいねん。
「つまり、女子ならあってもいいんだよ!」
すっごく嫌な予感がする。
「ところで、カヅキ君の特技ってなんだっけ?」
「女装……です……。」
「はい、けってーい!」
「うひゅぉっうひゅぉっ、ショタッ子改造のお時間だよぉ!」
「そう、つまり、一時間だけ性転換をしてもらうの。」
なるほど、笑い方的に非常に不安になるが、この人なら大丈夫だろう。
……。
「「待った。」」
「カヅキ、アオイ、どうしたの?」
「いやぁユウキ、少し言いたいことがあって。」
「なんですのぉ?」
「せーので言うぞ、カヅキ。」
「おう。」
「「せーの、何俺では姉シさョんタがじいゃるなのい!!」
「幽霊の耳でも何言ってるのかわからんぞ。」
「俺はショタじゃない。」
「何で姉さんがいるの。」
「私から見れば年下は皆ショタさ!カヅキちゃん性転換係!」
この人の手術とか死んでも嫌すぎる。冗談で改造人間にされかねない。
「ちなみに、少年漫画的なノリだとほかの人にも役割があるけど、みんなは何係なの?」
「いい、幼馴染として忠告するわ。この人たちはでくの坊だぞ。」
「辛辣。」
「だから、はやく私たちと行きましょう。」
「抜け駆け禁止。」
ここら辺から空気がピリつき始めたので、俺はもうあきらめて帰ることにした。
はいはい、無理でしたとさ逃げるなんて。こんなアホみたいな火力の奴から逃げるとか、ルパン三世でも無理だね。
そして今、親友枠からアオイとユウキ、ヤバい奴枠からレイナ、ユウリ、ユミコ、カオリが地下の研究所に集まっている。俺の知り合いヤバいのばっかじゃん。
「いくよー、ポチ、はい完了―。」
雑だな手術!
「できたよ。少しズボンが緩くなっていたら成功だね!これぞほんとの性こ……。あべっ。」
「姉さん、それ以上言ったら18禁になっちゃうだろうが。」
「それでみんな。どこか変わっているか?」
「その、カヅキ……。」
「どうした、なんか言いたいことでもあるのか?」
「何も変わってないぞ。」
女装してたもんね、ですよね知ってた!今までこれでバレなかったし。
「じゃあ、行くぞカヅキ!」
「え、え、か、カオリさん!?」
今日は話の展開が早い気がする。
ぜはぁ、ぜはぁ。
「ここで待ち合わせ。」
ついたのは明らかに普段不良のたまり場の廃工場。しかもぼろいとかそういうのだけでなく、落書きとかおまけつき。それがなにかはわからないけど、非常に触りたくない白い粉とかたばこの吸い殻が落ちている。大丈夫なんだろうな、ここ。
しかも、男子高生と会うとなると、ものすごく緊張する。このドキドキ、恋……!?って、ちがわい!
落ち着け、恐らくシオリさんにやられた性転換手術のせいだ。乙女脳になっているに違いない。
しばらくたつと、奥の方に人の気配がした。
「よく来てくれたね。」
もう夕方遅く、春遅いとはいえ真っ暗な廃工場の中をスポットライトが照らした。そこには、学ランを着た男子が立っていた。恐らく、仲介役のカオリのいとこだ。
「おいカオリ、男子校って制服学ランだっけ。」
「聞こえているぞ!これはコスプレだ!強制されたものだがな!」
ヒュゴバキッ!
暗闇の奥から特大の鉄アレイが飛んできて、カオリのいとこの頭に突き刺さる。
「強制して何が悪いの。」
間違いない。入学式の日に駅でぶつかった人だ。食パンを咥えていたからよくわかんないが、たぶん。
「わ、悪いとは言っていないだろう、落ち着け、カヅキ。」
「その鉄アレイ片付けといて。」
た、タフだなぁ、二人とも。片方は鉄アレイ投げるし、もう片方はそれを食らって生きてるんだから。まぁ、カオリのパンチも同じくらい強いけど。
「それであんたたちが偽物ね。」
偽物ではないけどこの人怖いからそれでいいや。取りあえず深刻そうな顔をしてうなずく。それっぽく見えればいいでしょう。
それにしても、こいつ……さ。中二病なのか?カオリのいとこと同じ学ランの上にマントを羽織り、真っ暗な中のスポットライトの当たる角度もちょうどマントが映えるようになっている。
これ、絶対先にきて調整してある奴だろ。
「女子高で暮らしたいなら好きにしなさい。私は男子校で暮らす。それと、私の生活に迷惑かけたら殺す。」
なるほど、男子校が似合ってそうだね。何なら、陸軍士官学校とかのが似合っているんじゃないかな。
「連絡先はカオルから聞いて。」
どうやら、彼はカオルというらしい。でも彼も、雰囲気的にはカオリと同じくらい強いはずなんだけどな。
「じゃあ、機会があればまた会いましょう。」
そうか、何かおかしいと思ったら、駅でぶつかった時と雰囲気が全然違うのか。すでに人を二人か三人くらいは殺ってそうなさっきだもんなぁ。
「カヅキさん、でいいのか?お前はそれでいいのか?」
自分の名前を呼ぶのは変な気がするが、これしか呼びようがない。
「気安く呼ぶな。お前もこれが欲しいか。」
言っていることは正しいけど、持っているものが鉄アレイなので思わず吹き出すのを咳払いでごまかす。
ヒュゴバキッ!
俺の方に飛んできた鉄アレイを間一髪でかわす。少し掠った肩は、砕けただけなので数日もあれば治るだろう。
「いたっ。初対面の相手に何するんだよ!」
「な、なんでもないっ。」
結局、こいつは何がしたかったんだろうか。
「要するにさ、俺らは今まで通り、学校生活を送っていいんだな?」
「勝手にしろ。」
うわぁ怖い人。
「それじゃあ、生きていたら会おう。」
そう言って、バサッとマントを翻し、偉そうに帰っていった。
「カオル、待て!」
もう一人の佐藤カヅキについていくいとこに、カオリが声をかけた。
「おまえ、どうしてそんな女の後ろについて歩いているんだ?」
「ふっふっふっ。それは。面白いからだよ。」
そう言って彼も闇に消えていった。
「落ち着けカオリ。とりあえずは、今の生活のままでいられるんだから。」
「そ、そうだな。」
「そうと決まればやることは一つだ!」
「そうだな。」
「「パーティーだ!」」
そう、今回はたくさん詰め込む必要があったから、展開が雑なのだ。
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