ない

「……」


 今は夜の11時過ぎ。

 僕は自分の部屋でベッドの上で仰向けになり、ずっと天井を眺めていた。


 絵里さんは、あれからまだ帰ってきていない。連絡もない。


 ネットで色々調べてみたが、今の僕の状況は完全なヒモである。絵里さんに養ってもらっている状態だからだ。

 そのヒモが養ってくれている人のお金を他人に使うのは、正直「ない」らしい。

 絵里さんが帰って来ないのは、そのせいだろう。

 あの絵里さんが怒っているのだ。

 いつも変態じみて、僕をからかってくるあの絵里さんが怒った。

 それは全て僕のせいだ。

 僕の考えが甘すぎたせいだ。

 だとしたら、これからどうするのか。


 ずっとお金をもらって生活するのも、申し訳ないし、このままではいられない。

 それに僕の唯一の特技といえば、あれしかない。

 僕は考えがまとまると、携帯を掴み、電話をかけるのだった。














 ♦︎














「んー……はぁ……」


 ベッドの上で大きく伸びをする。

 色々考えていたから、寝るのが少し遅くなってしまった。携帯に目をやると、今は朝の8時過ぎだった。

 絵里さんは帰ってきたのかな……


 少し不安に思いつつ、部屋を出てリビングへと向かう。

 そしてリビングに入ると、大の字で仰向けで服がよれよれのまま、寝ている絵里さんがいた。


「もう飲めないよ、晶君……えへへ……」


 頬をかきつつ、絵里さんは幸せそうに呟いた。


 寝言かな……

 まぁ夢の中だし、本人が幸せそうならそれでいいか……


「あ、ダメ……晶君……そこは、ああ……んんんん……♡」


「本当に寝てるんだよね!?」


 たまらず、ツッコンでしまった。

 というか、夢の中の僕、何やってるんだよ……


 にしても、このまま寝かせるのはまずいかな。せめて、布団をかけないと風邪引きそうだ。


 というわけで、僕は自分が使っていた布団を持ってきて、それを絵里さんにかけた。

 そして布団をかけた瞬間。


「はぁはぁ……」


 何故か呼吸が荒くなった。

 果たして、夢の中で何が起きているのだろうか……

 想像したくないが、少し想像してみたというい気持ちもあり、結局、悶々とする時間を過ごすことになるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る