これから

「これかな。あ、でも、こっちもいいかも……」


「……」


「いや、でも……って、ん、どうしたの、晶?」


「いやさ……あの、長くない?」


「あー!それは女の子の前では絶対に言っちゃいけないんだからね!」


 有紗は少しお怒りと言った様子で、僕の肩をバシバシと叩いてきた。


 ゲームセンターで一通り遊び終え、満足した僕達は近くのショッピングモールに来た。

 有紗は道中、気に入った服を見つめては店に入り、あれこれと物色しているのだ。

 なので、かれこれ、1時間以上は付き合わされている。男の買い物なんて、もっとサッと終わるのに、なんで女性の買い物ってこんな時間がかかるんだ。さっきから、どれにしようかと迷ってるいるけど、ほとんど同じ服じゃないか。


 そんなことを思いながら、再び服の物色に戻った有紗をよそに、僕は店の外に出て、壁にもたれかけた。

 そして、鏡の前でどの服にするか悩んでいる有紗に目を向けた。


 白のブラウスにミニスカートというコーデ。

 まぁそうは言っても、制服なのだが。

 服選びは退屈だが、正直、彼女の隣を歩けて良かったと思っている。まぁ別に彼氏彼女って間柄ではないけど。


「あ、いたいた。探しちゃったじゃん」


 僕がそんなことを考えていると、有紗が店から出てきた。手には紙袋を持っている。どうやら、気に入った服を購入したようである。学校をサボったというのに、中々の自由っぷりだなと思ってしまう。


「ごめんごめん。あんまり、女の子との服選びとか慣れてなくてさ、つい……」


「長いとか、遅いとか、そういうの女の子の前では禁句だからね?まぁこれから、いっぱい付き合ってもらうから、早く慣れてよね」


「はは、頑張るよ……」


 先を歩く有紗の背中を見ながら、僕は苦笑を浮かべるしかなかった。

 しかし、次の瞬間思う。


 ん……これからってどういう……?


 僕は、その一言が気になったが、まぁ学校にも通えるようになったし、また買い物に行くことくらいあるだろうから、そういう意味で言ったんだなと思い、深くは考えないことにした。

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