男友達

 昼ご飯を食べ終え、そのまま近くのゲーセンへと移動する。

 平日の昼間ということもあり、店内はあまり混んでいなかった。


「何からする?」


「んー、そうね……」


 有紗は少し考えた後、カウンターの近くへと進んだ。

 そして、手早く機械を操作すると、排出口からカップと共にメダルが出てくる。


「まずはメダルからでしょ」


 はにかむような笑顔をこちらに向けながら、有紗は言った。

 やっぱりというか……有紗ってめちゃくちゃかわいいんだよね……

 しかも、この無邪気な感じの笑顔がたまらなくやばい。

 中学の頃から、いつも僕の近くにいてくれたけど、なんでそこまでしてくれるのか、未だに分からない。

 しかし、それが嬉しくないわけがない。


「あ、これ、晶の分ね」


 そう言って、別のカップにメダルを移し、渡してくる。


「あ、大丈夫だよ。今日はお金もあるし、自分で買うことにするから」


「あ、そっか。ごめんね。いつもの癖で」


「ううん。ありがとうね」


 有紗の気持ちだけ受け取りつつ、メダル両替機でメダルを200枚(1100円)を購入し、カップを持ち、適当な台を見つけ、有紗と共に並んで座る。

 レールにメダルを流し、ボールが落ちればジャックポット抽選、メダルが落ちればその分のメダルを獲得できるというオーソドックスな台。


「当たるかな」


「頑張って、引き寄せましょ」


 気合を入れたであろう有紗は早速、片側のレールを使って、メダルを流し込んでいく。

 僕もそれに続くようにメダルを流し込んでいく。

 そして、ものの数分で最初の抽選が当たり、早くもメダルが100枚排出されてきた。


「幸先良いわね」


「だね」


 さて、この運が続けばいいんだけど。













 ♦︎













「それじゃあ、ここに手のひらをかざして……」


 店員さんに言われ、預け入れ機の読み取り部分に手をかざす。

 こうすることで静脈を登録するそうだ。


「はい。完了です。メダルには有効期間あるので、気をつけて下さいね」


 店員さんにお礼を言いつつ、メダルコーナーから離れる。

 結局、ジャックポットも当たり、僕のメダルは527枚、有紗のメダルは806枚に増えた。

 さすがにこんなにあると、遊びきれないということで、僕も預け入れ機に登録したのだ。


「あー、久しぶりに大満足したかも」


「良かったよね。また来る楽しみができたよ」


「そうね。次はもっと大物が当たれば良いかも」


 楽しく談笑しながら、僕達は次のゲームコーナーへと向かうのだった。


 次にやってきたのはリズムゲーム。

 落ちてくる的をタイミング良く、手でボタンを叩いて、スコアを伸ばす。


「最近やってなかったから、気合入るわね」


 肩をグルグルと回す有紗。

 まるで闘いに行く様な姿だ。


「それは僕もだけど……有紗は他の友達とこういうところに来たりしなかったの?」


「え、そ、そうね……やっぱり女の子同士だと買い物とかガールズトークとかがメインかな……」


「ふーん……」


 僕が言ったのは、男の友達のことなんだけどな……

 有紗は誰とでも打ち解けるから、男友達も少し入るはずなのに。

 まぁ、別にいいよね。誰と遊ぼうが本人の自由だし。


「そ、それより早くやろうよ?」


「ああ、そうだね」


 有紗に言われ、僕はお金を投入すると、台の前に立った。

 僕が1P、有紗が2Pで対決だ。

 いつも勝負は互角。さて、今回はどうなる……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る