連絡先

 駅前までやってきた僕達は近くのファミレスで昼ご飯を食べることにした。

 案外、リーズナブルなお店を選んでくれて、少しホッとしている。

 中に入ると、昼時ということもあってか、店内はそこそこ混んでいた。

 僕達は店員さんに案内され、窓際の近くのテーブル席に座る。


「2人で外食ってのもこれまた久しぶりだね」


「そうね。にしても、晶、本当に良かったね。こうして、のびのびと外で遊べるようになって」


「うん。本当にね。運が良かったよ」


 僕はそう言った後、ドリンクバーで取ってきたオレンジジュースの入ったコップに口をつける。


「それより、最近の学校はどうなの?」


「んー、別に変わらないわよ?テストが近々あるくらいで、他に変わったことは特に」


「そっか。早く行きたいなぁ」


「それはいいけど勉強、大変だからね?あ、なんだったら、私が教えてあげようか?」


「え、本当に?!それは有難いよ。是非、お願いします」


「うん、任せて!!」


 有紗は何故かガッツポーズを取りながら、言った。

 なんでガッツポーズ?と思ったが、まぁいいか。有紗に教えてもらうなら、2学期からの勉強も大丈夫そうだ。


「あ、後さ、スマホもらったんだ。だから連絡先交換しようよ」


「え、じゃあ、電話してもいいの?!!」


「え、あ、うん……用事があれば、電話しようよ……」


 鬼気迫る勢いの有紗。

 僕はたまらず、少し体を逸らしてしまった。

 な、なんでそんなに食いついてきたんだろう……?


「そっか、ふへへへ……ついに、ついにね……」


 そして、怪しい笑みを浮かべる。

 美少女なのに、その顔はまさしく変態だった。


「と、とりあえず交換しよう……?」


「え、あ、そうね」


 そうして、僕達は互いの連絡先を交換した。

「お待たせしましたー」


 と、そのタイミングで注文した料理が運ばれてきた。


「よし、まずは腹ごしらえだね」


「そうね。なんか晶の奢りだと思ったら、

 無性にお腹空いてきちゃった。何か追加しようかな」


「まぁ食べ終えてからでもいいんじゃない?」


「まぁそれもそっか。じゃあ、いただきます」


 有紗は手を合わせてから、ナイフを手に取り、ハンバーグに切り込みを入れる。


「んー、美味しい!!」


 昼間から、本当にガッツリ食べるんだね……

 しかし、有紗は本当に美味しそうに食べるから、見ているこっちも食欲が刺激されるってもんだ。

 軽く笑みを浮かべつつ、僕も頼んだドリアにスプーンを入れ、すくい、口に運ぶ。

 こうして、僕達は2人きりの久しぶりの外食を楽しむのだった。

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