使い方
有紗と共に学校を出て、道を歩いていく。
「どこ行く?」
「そうね……」
僕の問いに対し、有紗は地面を見つめ、少し考える。
「久しぶりにゲーセンなんてどう?」
「あ、いいね」
有紗の提案に対し、僕は即答した。
中学生の頃、よく2人でゲーセンに行っていた。
夏はクーラーが効いていて涼しいし、冬は暖房が効いていてあったかい。
そういった電化製品がなかった僕にとっては有難い場所であった。
そこで2人でよくメダルゲームをした。
僕はお金がなかったから、メダルの排出口に残ったメダルがないかの確認をよくしていた。今思えば、めちゃくちゃ意地汚い行為だし、マナー違反だと思うけど……
そんな僕のために有紗はわざと多くメダルを買って、それを僕に使わせてくれていた。
「その前にご飯食べに行く?」
時刻的にはもうすぐ昼ご飯の時間になる頃だった。
「そうね。あ、でもなるべく安いところで……」
財布の中身がピンチなのか、有紗は小さくそう言った。
「今日は僕が奢るよ」
「え!?晶が!?」
周りの人がこちらを振り向いてくるほどの大きな声で有紗は驚いた。
まぁそうなるよね……
この前まで借金まみれだった男がご飯を奢るなんて言い出したら。
「お金さ、少し貰ったんだ。好きに使っていいよってくれてさ」
こういう使い方もありだよね……?
有紗には色々と世話になったし。
でも、そういうのは自分で稼いだお金でやるべきなのかな……
なんか複雑な感じがするけど、今回はいいよね。
「へぇ……一緒に住んでるっていう、親戚の人、良い人なんだね……」
「うん。僕もそう思う」
見ず知らずの他人である僕を拾ってくれて上に借金も返してって普通ありえないもんね……
「ところで親戚の人って女性?」
「え、あ、うん。そうだけど……」
「若い?」
「若いけど……」
なんだろう。気になるのかな。
「美人?」
「美人……だね」
変態だけど……と心の中で付け加えておく。
「そう……まぁ、親戚っていうんだから、大丈夫か……」
「何が大丈夫……?」
「何でもない!!それより、奢ってくれるって言うんだから、どこに行こうかしら」
「あ、あんまり高いところは無理だよ……?」
「わかってるって」
すっかり上機嫌になった有紗は足取りも軽くなり、鼻歌混じりに道を歩いて行った。
奢ってもらうのが、そんなに嬉しいのかな。
いや、財布がピンチだから昼ごはん代が浮いてラッキーってところかな?
まぁ、喜んでくれてるんだし、何でもいいか。
そんな有紗の後ろ姿を見つつ、僕は慌てて隣に並ぶために少しだけ、足の動きを早めるのだった。
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