無限大

「あ、これも面白そうね」


見つけたそれをひょいと掴み、迷わずにカートの中に入れる。

ボードゲームにカードゲーム、ラジコンにプラモデル……沢山ありすぎて、目移りしてしまう。

子供からしたら夢のようなラインナップだろう。


おもちゃ屋で僕と絵里さんは気に入ったおもちゃを片っ端からカートに入れていた。

まるでアメリカ映画に出てくるような大きなカートに、ごっそりと積み込んでいる。

既に数万円分は積んでいるだろう。

しかし、絵里さんは資金は無限大だから欲しい分だけ買いなさいと言ってくれた。

何とも頼もしいというか、太っ腹というか。

とにかく、この人には頭が上がらない。

なので、少し遠慮しつつも、色々と物色している状況だ。


「とりあえず、今日はこのくらいにしておく?」


「そうですね」


あらかたお店を回った後、絵里さんはそう言ったので、僕も返事をする。

そして、そのまま会計に進む。

量が多すぎたので、持って帰れる分だけ持って帰ることにし、後は配送して届けてくれることになった。

服屋の時と同じ展開だな……

今日のところはカードゲームとボードゲームだけ持って帰ることにした。


「帰ったら早速遊んでみましょうね」


「はい」


僕は微笑みながら応えた。

ものすごく楽しみだな。

ボードゲームでワクワクする高校生なんて、僕くらいじゃなかろうか。

しかし、今まで遊べなかった分、沢山遊べるのだと思うと、ワクワクも止まらないというものだ。


「どうする?このまま帰っちゃう?」


「そうですね……」


荷物もあるし、特に行くところもないしな……

何より、早く帰りたいというのが本音だった。


「帰りましょうか」


「じゃあ、タクシー呼ぶわね」


絵里さんは手早くスマホを取り出し、タクシーの予約をする。

すると、ものの10分ほどでタクシーが来てくれたのでタクシーに乗り込み、マンションまで送ってもらう。

そして、タクシーから降り、そのままエントランスを抜け、エレベーターに乗り、42階で降り、部屋に向かう。


「なんか疲れちゃったわね」


「そうですね……」


玄関で靴を無造作に脱ぎ、そのまま長い廊下を抜け、リビングへ入ってすぐに絵里さんは息を一つを吐きながら、言った。

僕も手に持っていた荷物を床に置きながら、応えた。


部屋の時計を見ると、夕方の4時過ぎだった。

んん、なんだろう……

外からこの部屋に帰ってくると、やたら眠気が襲ってくるっていうか……

本能的に安心してるのかな……

遊びたい……けど……

睡魔に襲われながら、僕はそのまま、ノロノロとソファに横になってしまった。


「コーヒーでも淹れましょうか……って、あら……」


「……」


僕の意識はあっという間に夢の中へと落ちていった。

そして、すぐに何か温かい布のようなものが身体にかけられる感覚がして、そのまま安心して眠ることができるのだった。

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