オムライス

 タクシーに乗り、揺られること15分。


「さ、ついたわね」


「ですね」


 僕達はショッピングモールへとやってきた。

 やっぱり映画を観るなら、ここだよね。

 随分久しぶりに来たな……

 確か中学1年の時にここが出来た以来、来ていない……

 ここに来る用事なんてなかったしね。

 でも、また来れて嬉しいな……


「チケットはもう手配済みだから、先にご飯行きましょうか」


「あ、はい」


 チケットは購入済みってことか。

 さすがだね。

 さて、何の映画を観るんだろう。

 楽しみだけど、不安でもあるな……

 絵里さんは激しいシーンを求めているみたいだから……


 少し不安に駆られつつ、僕達はエレベーターに乗り、レストランがある3階に向かう。


「絵里さんでもこういうところ、来るんですね。少し意外でした」


 エレベーターに乗り込んだところで僕は言った。


「ん?まぁね。用事があったりしたら来ることもあるのよ」


「へぇ……」


 用事ってなんだろうか。

 買い物?

 しかし、こんな金持ちが庶民向けの服屋に行ったりするかな。

 1着何万とするような服しか買わない気がする。

 外食ってのも無さそうだしな。リーズナブルなファミレスが多いし。

 だとすると、デート……とか?

 うーん、誰と来るんだろう。

 まぁ別にそこまで気にすることでもないか。


「さて、何食べる?」


「あ、たまには絵里さんの食べたいものでいいですよ。僕は何でも食べれるので」


「あら、そう?じゃあ、あそこにしようかしら」


 言って、絵里さんは先に道を歩いていくので、

 僕も慌ててそれについていく。

 そして、程なくして絵里さんは立ち止まった。


「ここにしましょう」


「え、ここって……」


 僕は内心かなり驚いた。

 何故なら、やってきたのは普通の洋食屋さんだったからだ。

 至って、庶民向けのレストランだけど……


 驚く僕を横目に絵里さんはクスッと笑った。


「高級だから必ずしも美味しいってわけでもないのよ?それにここのオムライス、絶品なんだから。晶君もきっと気にいるわ」


「は、はい……」


 僕はてっきり、絵里さんはこういうところには来ないんだと思っていた。

 お金持ちはどこぞの高級レストランや、ビルの何十階かにあるレストランにしか行かないと勝手に思っていた。

 でも違うんだな……

 なんか勝手なイメージでレッテルを貼ってて申し訳なかったな……


「さ、入りましょう」


「あ、はい……」


 そうして、レストランの中へと入っていき、ショッピングモールの通路側の席へと案内される。


「じゃあ、オムライスとコーヒー2つでいいかしら?」


「あ、はい、お願いします」


 そして、絵里さんが店員さんを呼び止め、注文をする。


「久々だから、すごく楽しみだわ」


「僕もオムライスなんていつぶりかわからないです」


「ここのオムライスを食べちゃったら、他のところは食べられなくなるわよ?まだできて3年くらいのお店なんだけど、評判高いのよ」


「へー。そんなに美味しいんですね」


 絵里さんをここまで言わせるくらいだ。

 きっと本当に美味しいんだろう。


「お待たせ致しました。


 そんな中、店員さんが出来たてのオムライスを運んできてくれた。


「さ、いただきましょう」


「はい。いただきます」


 手を合わせた後、スプーンを手にとり、サクッと切れ目を入れる。

 そして、すくい、口に入れる。


「……!」


 口に入れた瞬間、卵の柔らかさと甘さに驚く。

 そして、これがまたケチャップとの相性抜群だった。


 美味しい……!

 本当に……

 しかし……なんだろう……

 どこか懐かしい感じがするのは何故なんだろう……?

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