全開
翌朝。
「ふあーぁ……」
僕はベッドの上で身体を起こしたあと、大きく伸びをした。
泣き疲れて、いつのまにか眠っていたみたいだ……よく寝た……
そしてベッドを降りたあと、カーテンを開け、外の景色を眺める。
外は晴天だった。最も、いつもと違い、太陽がやけに近いような気がして、僕はたまらず、苦笑してしまった。
そのまま部屋を出て、リビングへと向かう。
だが、リビングを開けてもそこに絵里さんはいなかった。
時計の時刻を見ると今は9時半過ぎだった。
まだ寝てるのかな。
まぁ昨日遅くまで起きてたから当たり前か。
僕はとりあえずソファに座った。
何か飲みたいけど、勝手にいじるのも気が引けるし、少し待ってみようかな。そのうち、起きてくるだろう。
そうして、そのまま待つこと5分ほど。
「おはよぉ……」
リビングへのドアが開くと同時に絵里さんの声が聞こえてきた。
「あ、おはようございます……」
僕は身体を絵里さんの方に向けて、挨拶をする。だが、目に飛び込んできた光景にたまらず、瞬時に顔が赤くなっていくのがわかる。
「え、絵里さん!ぼ、ボタン止めて下さいあ、あと下、履いて下さい!」
僕は見ないように顔を背けた。
「え、下?パンツなら履いてるじゃない」
「違います!そうじゃなくて、ズボンとか履いて下さいってことです!」
そう。絵里さんは何故か下はパンツしか身につけていなかったのだ。
おかげでその長くて綺麗な脚が嫌でも目に入ってしまう。おまけにピンクのヒラヒラのパンツ……
ウエストなんて、ありえないくらい細くて、上もボタンが全部開いてるから、胸のラインがモロに見えてしまっている。
それはそれはものすごく大きくて……って、そんな呑気なことを思っている場合ではない。
「あー。いやさ、暑くて、つい脱いじゃったのよ」
はははと絵里さんは恥じらう様子もなく、呑気に笑う。
最も、一緒の風呂に入ろうとする人だから恥じらいなんてあるわけないか……
「でも、別にこのままでも私は気にしないけど?」
「僕が気にするんで、なんとかして下さい!」
「えー、でも別にゆくゆくはお互いの裸だって、見るわけだから、今のうちに慣れておけば……」
「そんな予定はありません!」
「んもー……そういう焦らす感じ……大好きよ♡」
声だけだが、絵里さんは今、確実に喜んでいる……
そして、次いでするすると服を着ていく音が聞こえてくる。
音が止んだ後、僕は恐る恐る顔を元の位置に戻すと、きちんとパジャマを着た絵里さんがいた。
僕はほっと息を一つ吐いた。
なんか勿体ないようなことをした気もするけど、これで良かったんだよね……
「とりあえずコーヒーでも飲みましょうか」
「あ、はい」
まるで何事もなかったかのような感じで言ってくる。
そうして、絵里さんが淹れてくれたコーヒーをお互い、テーブル椅子に向かい合うように座って、飲む。
「あ、そうだ。これ、渡しておくわね」
言って、絵里さんはスマホを一台渡してきた。
「これ使ってね。わかんないことあったら、教えるから」
「あ、はい。ありがとうございます……」
おおお、遂に念願のスマホデビュー……
僕は喜びに打ち震えた。
「ふふふ、さて、パンでも食べましょうか」
言って、絵里さんは立ち上がると、台所の下の棚の中をゴソゴソと漁りだした。
そして、取り出したそれを皿に置いてから、こちらに持ってくる。
「お待たせ。お好みで温めても美味しいわよ。クリームもあるからね」
「あ、ありがとうございます」
テーブルの上に置かれたのは、普通のパンだった。
どう見ても普通の食パンだけど……
僕はそれを手に取って、一口かじってみた。
「!」
そして、口の中に広がる食感にたまらず、目を見開いてしまう。
なんだ、これは……!
柔らかすぎる……
布団だ……僕は今、布団を食べている……
僕はその旨さにどんどんと食べ進めていく。
何もつけなくても、こんなに甘いなんてどんな生地してるんだよ……
そんな僕を微笑ましいと言った様子で、眺めている絵里さんであった。
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