子供
「それじゃ、おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
深夜の1時過ぎ。
映画を3本観終わって、ようやく眠気が襲ってきたので、僕は寝ることにした。
しかし、結局アクション、ホラー(途中でやめた)、ファンタジーとバラエティに富んでいて面白かったな。
ファンタジーがちょっと長く感じたけど……
まぁ絵里さん曰くの激しいシーンはあんまりなかったから良かったな……
せいぜいキスシーンくらいだった。
当の本人は「ちょっと何やってんのよ!そこでヤっちゃいなさいよ!私もヤルから!」と言っていたけど……
ヤルなよ。これは健全な映画だもん。
そんな絵里さんは、これからお風呂に入ってから寝るそうだ。僕より、先に起きていたのにまだ眠くないなんてやっぱり大人なんだなぁと思ってしまう。
「はぁ……」
ため息を吐きつつ、ベッドの上に横になる。
相変わらず、フカフカだ。
ついさっきもここで寝たのに、また同じようなことを思ってしまう。
それに服だって、今日買ってもらったばかりの新品だ。
破けているところも、色が薄くなっているところもない。とても綺麗だ。
つい、この間までこんな事になるなんて夢にも思ってなかったな。
毎日毎日バイトに明け暮れる毎日。
少しでも時給を上げようと、人が嫌がることも率先して引き受けた。
周りが評価してくれれば、きっと上がると思っていたからだ。
それでも時給が上がることは稀だった。
身分的にはまだ高校生。
大学生やフリーターの人と比べるとスタートラインですら、下の状態。
必死に稼いでも利息で消える毎日。
菓子パン一個ですら、買うのを躊躇う。
お菓子なんてもっての外だ。
とにかくお腹に溜まる物を選んで買うのが当たり前。
それが今じゃ、ハンバーガーやケーキをたらふく食べて、新品の服着て、フカフカのベットで横になってるんだからな。
ほんと……人生どうなるかわかんないよな……
「う……」
途端に涙が止めどなく溢れてくる。
本当……生きててよかったなぁ……
まだ16なのに、人生に絶望すらした。
なんで自分だけ、こんな過酷なんだって思った。
周りを見れば、楽しそうに呑気に友達と遊んでいる同い年くらいの人達がいる。
その人と変わりたかった。
僕だって、遊びたかった。誰かと恋愛したかった。だけど、それが許されない環境だった。
しかし、今、ようやく同じ状況になった。
絵里さんという、救いの神が現れたからだ。
動機はなんにせよ、僕を救ってくれたのは事実。
彼女には一生かけてでも、恩を返さないといけない。
でも、今だけはこの幸せを、噛み締めてもいいよね……
僕は何度も涙を袖で拭いたが、それでも涙が止まることはなかった。
今まで泣きたかった……いや、泣けなかった分を埋めるように。
やがて、泣き疲れた僕は、いつの間にか眠りについてしまったのだった。
「……バカ、まだ子供なんだから、私の前で泣いたって……いいんだから……」
ドアの先でそんな声が聞こえてくるのを感じながら……
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