企み
先に上がって準備をすると言うことなので、お姉さんは先に風呂から上がっていった。
準備って何するんだろ……
まぁ確実にお金の用意だと思うけど、800万なんて大金、そんなすぐに用意できるのかな……
お金は持ってそうだけど、そんな大金だと銀行とかに行かないとないんじゃ……
そんなことを考えながら、ガシガシとタオルで身体を洗っていき、頭もシャンプーを使って、洗うのだが。
めちゃくちゃ良い匂いがする……
すごいフルーティというか……
やっぱり、シャンプーも高級品なのかな。
そして、程なくして僕も浴槽から上がる。
広い脱衣所には真新しい洋服が置いてあった。
しかも、なぜか僕のサイズにびったり。
寝てる間にサイズでも測ったのだろうか……
少しスリルを感じながら、バスタオルで身体を拭き、用意された服を着て、出てから、リビングへと向かう。
リビングへ入ると、そこには、ワンピースに身を包んだお姉さんがいた。
出るところが余すところなく出ていて、正直やばい。街中で見かけたら、確実に二度見してしまう。
ってか、脚、なが……
これが八等身ってやつか……
「あ、きたわね。借金してるのってここよね?」
リビングにやってきた僕に気付き、言って、近づいてからスマホの画面を僕に見せてきた。
「あ、はい。ここです……」
何も言ってないのに、よく分かったな……
まぁ消費者金融だとそんな大金借りれないしな……
それに僕の財布の中にその街金の名刺があったから、それを見たのかもしれない。
ちなみに財布の中はポイントカードとかそういった類のものしかないから、盗られる心配はない。お金はせいぜいで小銭で数百円が入っている程度だ。
まぁお姉さんだから、盗ることはないと思うけど。言ってて悲しくなるな……
「よし。じゃあ、あそこから出して……」
小さく呟いた後、お姉さんはリビングの端にある本棚に向かい、おもむろにそこに置いてある分厚い本を手に取る。
何をするんだろうかと思い、見ていると本をめくり、中から分厚い札束を取り出して見せた。
「え、ちょ、それ……!??」
たまらず、声が出てしまう。
「非常用現金。普段、カードとか電子マネーだけで済ませてるんだけど、念のためにと置いておいたの。どうやら、正解だったみたいね」
言いながら、さらに別の本を手に取り、再び中から札束を取り出していく。
本は中がくり抜かれており、その間のスペースに札束を入れているようだった。
「……」
一体どれだけ出てくるんだよ……
10コあるから、1つ100万として1000万か……
こんな簡単にポンとお金を出せるなんて、まじで何者なんだよ……
「さ、行きましょう」
僕がこの目で殿上人の存在を認識していると、いつのまにか札束をカバンに仕舞い込んだお姉さんが隣に来ていた。
「あ、はい……と言うか、その格好で行くんですか……?」
「ええ、そうだけど、何か問題でも?」
「いや、別にないですけど……」
そんな格好して、外に出たりなんかしたら、周りからの視線の的になるんじゃ……
少し不安を覚えながら、絵里さんの自宅を出る。
「う、おおお……」
外に出た瞬間、入ってきた光景に僕はたまらず、声を上げてしまった。
何階だよ、ここ……!?
周りの建物や人、車がまるでジオラマみたいに見える……
これがいわゆるタワマンってやつなのか……
「どうしたの?行きましょ」
「あ、はい……」
呆気に取られつつ、僕達はエレベーターに乗り込んだ。
今は42階にいるらしい。
42って……
そして、1階に着き、エレベーターを降りるのだが、エントランス部分には常駐のコンシェルジュさんがおり、至れり尽くせりのこの環境にただただ驚くばかりだった。
♦︎
「……」
そして案の定、予想通りだった。
マンションを出て、人混みに出た瞬間、お姉さんは周りの視線を一気に集めた。
そりゃまぁ突然だよね……
男にとっちゃ、眼福以外の何者でもないんだから……
こんな美人の素肌を生で見れて……
たまに隣を歩く僕に殺意に満ちた視線が飛んでくるが、気にしないでおく。
「ふふ……」
すると、隣を歩くお姉さんが何故か急に笑い出した。
「ど、どうしたんですか……?」
「だって……通りすがる男達が私の身体を見ては、興奮しているかと思うと……そして、声をかけたいと思っているけど、それをする勇気がないところを見ているともう……」
身体をくねらせ、お姉さんは悶えた。
変態だな、この人……
どうやら、僕は変態に助けられたらしい。
喜ぶべきか、悲しむべきか。
いや、というかこんな簡単に他人の借金を返すなんて、やっぱりおかしいんじゃないか……?
いくらお金を持ってるからとはいえ、やり過ぎな気がする。
身の回りの世話をして、大金を出すなんて、何か目的があるとしか考えられない……
一体、何を企んでいるんだ?
この人は……
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