第四話 再会の海 ~プロローグ~
「すっげぇ……!」
よく晴れた日の船上。アサヒは見渡す限りの青い海に興奮を抑えきれず、その目を輝かせ叫んでいた。
「随分大げさに言うんですね。そんなに珍しいものじゃないですよ?」
半ば呆れた、といった口調で問いかけるミズキ。
「いやいや俺、こんなきれいな海見んの初めてだ!」
「へぇ……そうなんですか」
彼女はそう言って聞き流す。子供っぽい人――そう思いつつ。
しかし、アサヒがこのような感想を持つのは決して間違いとは言い切れなかった。どこを見ても高い透明度が続く海など、日本ではお目にかかることのできない光景なのだから。
「……ユウキさん」
ミズキは少し離れたところにいるユウキをつかまえ、ひそひそと話す。
「はい?」
「あの人、ほんとにあの戦士なんですかね」
「というと?」
「随分子供っぽいというか……なんだか印象が違いすぎて」
「僕もそう思いますけど……でも別にいいんじゃないですか?」
「まぁ、そうなんですけどね……」
「ミズキさん!ユウキ!見ろよ、あっちででっけぇ魚跳ねてるぜ!」
自分たちに手を振りながら無邪気にはしゃぐアサヒ。彼女は手を振り返しつつ、ユウキにつぶやいた。
「まぁ、少なくとも悪い人ではなさそうですね」
《……》
一方、ソルはずっと何かに悩むように黙り込んでいた。
《ルナ……》
ぽつりと、友の名をつぶやく。
彼の悩みの原因は、昨夜の出来事にあった――
第四話
再会の海
大魔鳥ウィンザード
登場
※
(何すんだよこの野郎!)
突然斬り付けられた困惑と怒り。そんな感情を込めてアサヒは叫んだ。
「やはり弱くなったな。お前はこんな攻撃を喰らう男じゃなかった」
胸を押さえて片膝をつくソルに、ルナは憐れむような声色で吐き捨てる。
(お前、何言って……!)
言葉の意味がまるで理解できないアサヒは立ち上がって詰め寄ろうとする。
しかし近寄るな、と言わんばかりに突き付けられた光剣を目にし、立ち上がるだけに止まった。
「俺はお前を認めない……人間などに肩入れし、その強さを無くしたお前を……」
彼はくるりと振り返ると数歩歩いたのち、睨みつけるような目線をソルに向ける。
「後悔しないうちに、その男と手を切ることだな」
そんな一言を残して、彼は月夜に消えていった――
(おい待て!)
ソルが手を伸ばすが、もうすでに彼の姿はない。
「何なんだよアイツ……わけわかんねぇ」
変身を解いたアサヒは、空を見つめながらつぶやく。
※
「おーい」
《……む》
呼びかけるアサヒの声に、ソルは意識を現在に戻す。
「大丈夫かよ?ずっと黙ってるけどさ」
《少し、考え事をな》
「アイツのことか?」
《……ああ》
「俺にもよくわかんねぇけどさ。今はできること、やるしかねぇだろ」
「ま、今度会ったら、とっ捕まえて聞いちまおうぜ」
《ふふ……》
明るい彼の励ましに、思わず笑みがこぼれるソル。
《そうだな。今考えても仕方ない、か。ありがとうアサヒ》
「気にすんなって!それより見ろよあれ!イルカみたいなのいるぜ!」
そんな時だった。
「……ん?何だあれ」
《どうした?》
自身が指さしていた方向に、何かを見つけたアサヒ。彼が目を凝らしてみると、そこには。
「……竜巻?」
よく晴れたこの空に似つかわしくない黒い竜巻が、こちらに向けて迫りつつあった――!
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