勇者光臨!

「……よ」

呼び声が聞こえる。暖かさと威厳を感じさせる、少し年老いた男の声だ。

「者よ……!」

その声は次第に大きさを増し、同時にアサヒの意識もはっきりと目覚めてゆく。

「若者よ!」

そして三度目の声で、彼はっ、と目を覚ます。


「……ここは?」

それが、彼の第一声だった。

辺りを見回す。

どこもかしこも真っ白な空間に、彼はいた。


「ようやく目覚めたようだな……ソラノ・アサヒ君」

声のしたほうへ向き直るアサヒ。そこには――


「光?」

金色の光の粒子――そうとしか言いようのない「何か」がいた。


「あんたか?俺を呼んでたのは……って、なんで俺の名前を!?それにここは――」

「落ち着きなさい。順を追って、説明する」


光はゴホン、と咳払いのような声を出した後、話を始めた。


「私の名は『ソル』。超進化生命体エヴォリュートと呼ばれる存在の一人だ」

「そしてここは、私の力で作り出した特殊空間だ」

超進化エヴォ、生命体リュート?」

聞いたことのない単語に、首をかしげるアサヒ。

「うむ。様々な異能力を操る、生命の進化系の一つの果て……それが我々だ」

「そんなのが、何で俺の所に」

「その腕輪さ」

彼がそう言うと、アサヒの手になぜか握られていた腕輪が、赤い光を放つ。

「私はその腕輪に自らを憑依させていたのだ……」

「じゃあ、俺の名前を知ってたのも?」

「そうだ。腕輪の中から、君を見ていた」

「そう、なのか……」

父親から送られてきた腕輪をじっと見つめ、アサヒは思う。

(親父……何で、これを俺に?)


「さて、ここからが本題だ」

そこまで話し終わると突如、ソルが語調を強めた。

「一つ問う」


「君に、戦いの覚悟はあるか?」

「……え?どういうことだよ」

突然の質問に動揺を隠せないアサヒ。


「私とともに、奴ら――次元奴隷商と戦う覚悟はあるか。そう言っている」

「戦う、覚悟……」


彼は目を閉じ、考えを巡らせる――


『アサヒ!』


頭の中に響くのは、カグヤの声。

(そうだ、迷ってなんかいられねぇ!)


彼は目を見開き、言い放った。


「俺は戦う!アイツを……そして他の人たちを!奴隷になんかさせてたまるか!」

「その言葉、確かだな?」

問いかけに、深くうなづく。


「よし、ならばその腕輪を着けるんだ」

「こう、か?」

言われるままに、左腕を輪に通す。すると――


「うおっ!」

一瞬腕輪が光り輝いたかと思うと、そのサイズは彼の腕にピッタリの大きさに変わっていた。


「よし、ならば私の名を呼べ!」

「ああ、わかった!」


彼は左腕を天高く突き上げ、その名を叫んだ!


「ソル―――ッ!」


瞬間。黄金の光と、彼の体は溶け合い――ひとつになった。


「ハアァ―ッ、タァ!」


赤きボディに、銀の鎧。そして天突く四本の角。額に太陽の紋章を携えたヒーローが今、ここに誕生した――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る